早速読んでみたのだが、本書では「猫の抜け毛で作ったフェルト」は「猫毛フェルト」と命名され(ねこけ、と読むそう)、指人形の作り方はもちろんのこと、土台の布に猫毛をフェルティングニードルで刺しつける手法を使った、より少ない毛で作れる雑貨のレシピも紹介されている。ブックカバーや手袋など、小物のアクセントに「猫毛でつけた猫模様」が、なんとも愛らしい。
そしてこの本で注目すべきは、ハンドクラフト本でありながらペット本でもあるということ。抜け毛を提供した猫たちは愛情たっぷりに紹介されているし、ブラッシングで抜ける毛量の月別変化や毛質のこと、猫アレルギーのある人に作品を見せる時の心得などなど、コラムも充実。巻末にはブラッシング用品の紹介まで掲載されている。著者の猫への愛を感じる1冊だ。
著者の蔦谷香理さんは、物心ついた頃から猫が傍らにいて、猫にまつわる文章、写真、ハンドクラフトなどの作品を制作、発表するようになったのだそう。最近は猫毛のワークショップも開催しているとのことで、話を聞いてみた。
「私が猫毛フェルトを作りはじめたきっかけは、飼い猫のブラッシングをしていてあまりにも毛が取れるからだったのですが、ワークショップにお越しいただいた方も、やはり猫が好きで、ご自分も飼っておいでの方が大半でした。ですので、こちらでも材料の猫毛を用意していたのですが、ご自分の愛猫さんの毛をお持ちになって使われた方が多かったです。30代を中心に、20代から40代、最年長で70代の方にも楽しんでいただきました」
猫好きな人が集まって、自分の愛猫の毛で雑貨を作るなんて想像しただけでも楽しそうだ。
「今後は、ご依頼があれば出張ワークショップもしたいと思っています。
とのこと。ブログ『猫毛フェルトの部屋』を通じて、猫毛フェルト愛好者と交流するための企画も進行中だとか。
ところで私が猫毛フェルトを素晴らしいと思うのには、3つの理由がある。まず「かわいがっている猫の毛で雑貨を作るのが純粋に楽しいから」という理由、そして「捨てるのがもったいないと思っていた猫の抜け毛を活用できるから」という理由、最後に「たとえその猫がいなくなってもその一部が残るから」という理由。
以前、私はかわいがっていた猫の毛を利用してこの指人形を作った。その猫は野良猫だったが、ひょんなことから我が家に通ってくるようになり、毎日長い時間を私の膝の上で過ごしていた。しかし、ある日突然姿を消してしまった。いろいろなケースを考え、あちこちに問い合わせをしたが見つからず、同じく彼女を愛していた近所の人たちと、「特別に性格のいい猫だったから、いい人に拾われて行ったに違いない、そう信じよう」ということにした。そして私の手元に残ったのが、写真と想い出、そしてこの「猫毛フェルトの指人形」なのである。
考え方は人それぞれだが、私は指人形を作っておいてよかったと心から思っているので、思わず愛猫家には猫毛フェルトづくりをおすすめしたくなってしまう。
(磯谷佳江/studio woofoo)