アンドラという国をご存知ですか? フランスとスペインの国境を貫くピレネー山脈の中にある、人口約7万5千人の小国だ。主な産業は観光業ということで、アンドラの楽しみ方を現地の観光協会に聞いてきた。


「主なレジャーはトレッキングやスキーです。マドリウ・ペラフィタ・クラロ渓谷は世界遺産にも登録されています。街中にはプールなどが整った大きなスパ施設もあります。ショッピング目的で隣国のフランスやスペインからブランド品や香水、タバコなどを買いに訪れる人も多いですよ」

アンドラ国内を歩いていたら、面白いことに気がついた。街中にはフランスとスペインの、二種類の郵政公社によるポストが設置されているのだ。調べてみると、その歴史と統治形態も面白い。


外務省の基礎データによれば、10世紀以来、宗主のウルヘル司教と司教から領地としてアンドラを与えられていたフォア伯爵との間で、統治権をめぐる争いが発生したそうだ。その結果、両者は対等の宗主契約を結び、以後アンドラは両者を領主とすることになった。共同領主の地位は、司教側で現在に至るまで代々ウルヘル司教に引き継がれているが、フォア伯爵側は後にフランス王として即位した。よってフランス国王にその地位は引き継がれ、その後王制が倒され共和国となった際に、フランス大統領に継承された。1993年2月には新憲法が国会で可決・承認されアンドラは国家として独立した。フランスとスペインは1993年6月1日に、アンドラ公国を主権国家として承認したが、国家元首は引続きフランス大統領とウルヘル司教が共同元首になっているという。


現地では国会も見学してきたのだが、小国らしくとても小さく可愛らしいもの。外観は石造りだが内部は木が多く使われており、落ち着いた雰囲気。議席数も28のみで一院制だ。案内係の人いわく「アンドラは小国ですので、議員や選挙といっても皆顔なじみです」とのこと。山々に囲まれて、何もかもゆっくりと流れる国アンドラ。日本からは少々行きづらいけれど、フランスかスペインを旅行する機会があれば、少し足をのばして、ぜひ小国の空気を体験してみよう。

(加藤亨延)