なにやらtwitterで妙な企画がはじまり、ネットで各地で密かな話題になっております。
Twitter / @hp_club: 半額弁当をゲットしたら、写真つけてリプライくださいね ...
「半額弁当をゲットしたら、写真つけてリプライくださいね!リツイートしていきますよ~」
 
な、なんじゃこりゃ?!
実はこれTVアニメ「ベン・トー」の公式twitterの企画。

「@hp_club」に半額弁当の写真を取ってリプライで送ると、リツイートしていくという、「みんなで半額弁当買おう!」キャンペーンです。
説明しておいてなんですが、これだと全く意味わからないですね。
 
「ベン・トー」は、アサウラ原作のライトノベルをアニメ化したもの。「ベン・ハー」みたいだなあと思ったら、そのとおり。原作執筆時に「似てるよねー」ということで名付けられたと作者自ら言っています。
と言ってもそんな壮大な話ではなく、内容は極めてシンプル。

スーパーの半額弁当を、若者たちが殴りあい、奪い合う物語です。
この殴りあうってのは、文字通りです。素手で殴る。足で蹴る。相手をぶん投げる。当然怪我もします。
流血シーンもあります。
一応理由としては、主人公の佐藤洋なんかは貧乏で食費に困っているから、ではあるんですが、そんなのは大義名分。
言うなれば、半額弁当を奪い合うために、奪い合うのです。
手段が目的化してますね。

普通に買えよって? うん、そうですね。大人はみんなそう言うんだ。

でもねえ違うんですよ。半額弁当を若者たちが本気で奪い合うことに誇りをかけているから、楽しいんですよ。
出てくるキャラクターには二つ名が付けられています。
学校の先輩は「氷結の魔女」と呼ばれます。ある少女は「湖の麗人」と呼ばれます。とある少年は「魔導師(ウィザード)」と呼ばれます。

やったあ、中二病っぽーい!
ちなみにこれらの二つ名、ちゃんと理由があるんですが、きっとそれはおいおい出てくるはず。今はそういうキャラがいるとだけ思っていればいいと思います。

つうか半額弁当の奪い合いに「ウィザード」とかおかしいだろ!
ウィザードの弁当奪うテクや攻撃力は半端じゃなく、アニメではスタイリッシュすぎる華麗なアクションで描かれているんです。そのスキルなんで半額弁当につかうの、もっと別のことに使えよ、ってものすごい勢いでツッコミをいれたくなります。
半額弁当を狙う少年少女は、多数います。彼ら・彼女らは「狼」と呼ばれ、暗黙のルールの中で戦いを繰り広げます。

そのルールとは。
・半額神(半額シールを貼る店員さん)が売り場から消えるまで手を出すなかれ。
・その夜に己が食す以上に狩るなかれ
つまり、半額シールを貼り終わって店員がバックヤードに消えるのを合図に一斉に飛び出し、食欲のままに殴り合い、奪い合い、一人ひとつゲットする。
……あれ? なんだかスポーツっぽいですね。

当然のようにこのルールを破る「狼」ではない人間達も現れるのですが、それらは「豚」「アラシ」などと呼ばれます。縄張り内では、狼たちがルールを保つべく日夜戦っているのです。
あ、違う。晩だけ戦っているのです。
主人公はそもそもこの半額弁当バトルのことなんて知らなかったのですが、気づいたら氷結の魔女こと槍水仙先輩の「ハーフプライサー同好会」に入るはめになります。

アニメの半額弁当奪い合いのアクションシーンは圧巻。本気で殴りあってるもんだから、痛そうでならんですよ。ボッコボコですよ。大怪我ですよ。
まだ戦い慣れていない人間は「犬」と呼ばれるんですが、犬なんて狼の群れに入ったら踏み潰されるか、パンチで吹っ飛ばされるか程度。まさに弱肉強食の世界です。
で、負けた後の空腹感ときたら! やりきれなさが尋常ではありません。
と、ここまで来たらわかりますよね。この半額弁当バトルで勝った場合、弁当を手に入れることができるのです。勝者です! 勝ち組です!
普通に買って食べるのと、戦いの末半額弁当を手に入れるのでは、弁当の味は格段に違うんですよ。1話ではやられっぱなしの主人公も、二話目では果敢に戦いに挑み、ゲットできます。
この瞬間、主人公の中に「戦って勝ち得た食」の喜びが生まれます。
弁当を作ったもの、値を半分にしてくれたもの、食材となった命、敗者たちへの敬意と感謝をこめて、こういうよ。
「いたただきます」と。

全くもって出落ちな作品なんですが、これが見ていると不思議と燃えてくる。やはりルールがあるのと、「食欲」という欲望そのものをみながむき出しにして全力で戦うのが楽しいんですよ。
特にアニメ版は徹底してバトルシーンに重点を置いて描いています。
普通のスーパーマーケットに張り詰めた緊迫感たるや。手に汗握ります、スーパーの光景一つで。

さて、本作の一つのテーマがこの弁当奪い合いバトルの「剥き出しの食欲」なんですが、もう一つ重要なテーマがあります。
それは「性欲」です。
殴り合いに参加しているのは男だけではありません、女の子も平等に殴りあうんです。
基本主人公の一人称視点なんですが、こうなってくるとどこに目が行きますか?
そうですね。脚ですよね。
槍水仙の黒ストッキングとブーツの表現のまあフェティッシュなこと。彼女はこの脚で蹴り飛ばしてくるんですが、蹴られたくなる脚とでもいいましょうか。執拗なまでにアニメでも、バトルシーンと同じくらい丁寧にその脚を描きます。白梅梅の白ニーソもすばらしいですね。
あとはおっぱいですよね。
押し合いへし合いになったらどこ見るかって言ったら、そりゃおっぱいですよ。柔らかそうにたゆたゆと揺れるおっぱいは戦いの中の花ですよ。
もっとも主人公の視点常軌を逸しており、現時点でもすでに会話している時おっぱいばっかりしか見ていません。胸のふくらみズームアップです。
ナチュラルボーンおっぱい好きなようです。男の子だししかたないね。

血で血を洗う、食欲の意地と誇りをかけた半額弁当の奪い合い。
ほとばしる男子高校生の性欲が見つめる女の子の肢体。
人間の根源とも言える欲求がどストレートに詰め込まれたこのアニメ、一話があっという間です。本能的な話なので深いこと考えなくても楽しめるのが素晴らしい。
今後主人公達の半額弁当を巡る戦いはさらに激化していくことでしょう。
最初は笑いながら見ていられますが、次第にスーパーに弁当を買いに行くたびに、ゴクリと息を飲んで緊張してくること間違いなし。
多分もうしばらくしたら「今日はウィザードが現れる……」と中二病バリバリなセリフを心の中で唱えるようになりそうです。それってちょっと楽しくない?
ニコニコ動画でも公開されていますので、この奇想天外すぎる楽しい青春、ご覧になってみてください。

このアニメ自体は大満足の出来なんですが、エキレビライターの杉村啓さんとも話していた要望を勝手に1つだけ書いてみます。
原作では入手した半額弁当をものっすごく美味しそうに文章で描いています。エロティックなほどに。
アニメでも確かに半額弁当美味しそうに描写されていますし、二話のどん兵衛食べるシーンも妙にエロティックでしたが、ぜひとも主人公の一人称視点で、熱く弁当の味について語っていただきたい、モノローグなどで!
激戦の末せっかく手に入れた弁当ですもの、ぜひこれでもかってくらいに愛をこめて語っていただきたいのです。
さあて、ぼくも戦いに行こうか、半額弁当を買いに……。おれは……北国の狼……。
(たまごまご)