「劇場版TIGER & BUNNY -The Rising-」がとうとう明日2月8日公開!
2011年に放映されたアニメ「TIGER & BUNNY」(以下、タイバニ)。総集編+新作映像の劇場版第1作「The Beginning」(2012年公開)もファンサービス全開の映画だったが、完全新作の第2作「The Rising」も期待を裏切らない。

多くのファンを惹きつけるタイバニの魅力はどこにあるんだろう? 公開直前、3つの観点から考えてみた。

その前に、ここで軽く設定&ストーリーをおさらいしよう。

「NEXT」と呼ばれる超能力者が存在する近未来、大都市シュテルンビルトでは、民間企業と契約してヒーロー活動を行うNEXTたちが活躍していた。ヒーローの活躍のようすは「HERO TV」という番組で実況中継され、ヒーロー同士で活躍や人気を競い合っている。ヒーローは街の人々に尊敬され、親しまれる存在だ。
物語は、崖っぷちの中年ヒーロー・ワイルドタイガー(鏑木・T・虎徹)が、生意気で真面目なニューヒーロー、バーナビー・ブルックス・Jrとコンビを組むところから始まる。
馬鹿正直に正義を掲げる虎徹と、両親を殺された復讐のためにヒーローになったバーナビー。性格も価値観も異なる二人は衝突してばかりだったが、徐々に絆が深まっていく……。
シュテルンビルトで起こる事件、他のヒーローたちの背景や葛藤、そしてバーナビーの復讐の結末などが描かれたテレビシリーズと劇場版1作目。ヒーロースーツのプレイスメント広告(ヒーロースーツにドミノピザやペプシといった実際の企業のロゴが載る)も話題になった。
キャラの体に17社のスポンサー! サンライズ宮河恭夫が語る「TIGER & BUNNY」ヒットの裏話(エキレビたまごまごの記事)
「The Rising」はテレビシリーズ後のヒーローたちの話だ。

■好きな人が見ているから好きになる

テレビシリーズ放送前、タイバニがここまでヒットする予想なんてほとんど見なかった。
ヒットの理由の1つはTwitterにある。
社会学者の金田淳子は、「ミステリマガジン3月号」(早川書房)のタイバニ特集の中で、視聴を決めたきっかけは「(漫画家やBL作家、オタク友達をフォローしたタイムラインで)『タイバニ』という単語が目につき始めた」ことだと言っている(この感覚、私も覚えがある)。
タイバニは、テレビの本放送と同時にUSTREAMで放送していた。USTはTwitterと連携をしてコメントをつけたり実況をすることができる。当時、アニメでUSTを利用する作品はほぼなかったし、本放送と同時というのも初の取り組みだった。タイムラインには関連ワードと放送中の動画URLが並び、興味を持ったらすぐに見られるお膳立てがされていたのである。
地域差がないのも大きかった。
Twitterで実況する人の中には、プロの漫画家や小説家もいた。「この人がハマってるんだったら面白いかも」と思って作品に入っていく。タイムラインにはさらにタイバニ関連のワードが増え、ファンがどんどん増えていく……。
USTの再生数は、初回は2955人。10話目では5万人を越え、最終話では約30倍の9万3490人までに増えた。


■イベントとコラボで常に「新しい」タイバニ

「情報の多さ」も魅力の1つ。テレビシリーズ放送中は松井千夏プロデューサーが中心になり、公式Twitterで放送情報や商品展開情報をさかんに呟いていた。他の作品と大きく違うのは、放送終了後もそれが続いていたことだ。テレビシリーズ終了と劇場版第一作のあいだ、第1作と第2作のあいだも、途切れずに呟かれている。
呟きの内容は、イベント告知とレポ、コラボ情報、書籍関連の告知、UST再放送などなど。目立つのはイベントとコラボ関連だ。

タイバニは定期的にイベントが行われている。舞台「THE LIVE」、「SUPER PRELUDE」、ヒーロースーツ握手会……どれもファンサービスに手が抜かれていないから、終わったあとにファンが感想を大量に呟く。離れていたファンがまた戻ってくることもある。
また、企業とのコラボも活発だ。ヒーローたちのスポンサーになっている企業とコラボして、イベントや商品展開を行っている。ここ数日ではすき家とのコラボ(タイバニミニどんぶり)が話題になった。

どんなに人気のあった作品でも、新しい情報が入ってこなくなると、注目度は低くなっていく。しかしタイバニは、イベントやコラボで常に「新しさ」を失わない。

■アメコミヒーローと日本のヒーローのいいとこどり

アメコミ翻訳家の堺三保は「タイバニはアメコミ(アメリカン・コミックス)のスーパーヒーローものと、日本のヒーローもののいいとこどり」と指摘している(「ミステリマガジン3月号」)。堺のエッセイ「タイバニとアメコミヒーロー」に書かれている東西ヒーローの特徴をまとめてみよう。
アメコミのヒーロー→戦う相手はさまざま(善良な人々に危害を加えるあらゆる存在)。一つの敵を倒しても、脅威が続くかぎり話は終わらない。
日本のヒーロー→巨大な「敵」と戦う。その敵を倒すのを目的としているため、倒すことで物語が終わる。主人公サイドのキャラクターと敵とのあいだに個人的な因縁があることも多い。
タイバニのキャラクターたちは、基本はアメコミヒーローのように戦っている。しかしそれだけでなく、日本のヒーロー的な要素もある(8話の折紙サイクロンや、復讐をめざすバーナビー、屈折したルナティックなど)。慣れ親しんだおもしろさと新鮮なおもしろさが同居しているのだ。
新鮮さといえば、ヒーローたちの設定の多様さも珍しい。たとえばネイサンはオカマ(ニューハーフ?)で、LGBT(レズ・ゲイ・バイ・トランスセクシャルなどの性的マイノリティ)的な意識がある。人種も、アングロサクソン系のバーナビー、アジア系の虎徹、ラテン系のアントニオ、アフリカ系のネイサンとさまざま。ちなみに「The Rising」ではとあるヒーローの設定に大きく踏み込んだ展開があり、「ここまでしっかりやるのか!」と息を呑みましたぞ。

『The Rising』、気分はライジング! 試写で一足先に見ましたが、あまりのサービス満点さにテンションが上がりすぎ具合が悪くなりました(実話)。エキレビでは初日舞台挨拶のレポも予定しています。いきますよ、みなさん!
(青柳美帆子)