「忠さんは厳しさや暴力的なエネルギーで生きてきた人ですが、一雄はそれがイヤだから、「優しさ」で行動しています。だけど忠さんも一雄も、表立ってではなく、こっそりと先回りしようとする人で、その方法が独善的だったり、ちゃんと相手と向き合わなかったりと、行動する原理は違うんですけれど、結果的には親子でものすごく似てしまっています」TBS「流星ワゴン」公式サイト・西島秀俊インタビュー

1月18日(日)にスタートしたドラマ「流星ワゴン」(原作・重松清)。
第1話では、人生に絶望していた主人公・一雄(西島秀俊)は、幽霊だと名乗る謎の親子(吉岡秀隆、高木星来)が運転するワゴン車に誘われるままに乗り込む。この車は、人生で大事な瞬間にタイムスリップするという設定。さらに、故郷の病院で死の床にあるはずの父親・忠雄(香川照之)がなぜか、同い年の姿で現れ、「やり直しの旅」の一員に加わる。

「チュウさんと呼べ。同じ年の男に父さんと呼ばれるのは父さんと呼ばれるのはどうも気色悪い。ワシとお前は朋輩(ほうばい)じゃあ」と、あくまでマイペースに振る舞う忠雄。
一雄を一人前の男であり、家族同然の大事な親友−−“朋輩(ほうばい)”として扱おうとする。一方、一雄は幼い頃から続く父親に対する反発心が噴出。「父さんの会社も、父さんのこともだいっきらいだったから!」「僕は父さんみたいになりたくなかったから!」と、ここぞとばかりに本音をぶつける。

その姿は中学受験に失敗し、引きこもった挙げ句「全部あんたのせいだ! 俺がこうなったのも、かあさんが出てったのも全部!!」と一雄を罵り、暴れる息子・広樹(横山幸汰)と重なる。いい年をして、親のせいだとごねる様子は幼く、じれったい。しかし、その幼さが同い年という設定の男二人の「父親らしさ」「息子らしさ」の醸成に一役かっていた。


タイムスリップ先で一雄の妻・美代子(井川遙)の浮気らしき場面に遭遇し、チュウさんは「相手の男は知っとるんか。人の嫁に手を出すとはなめくさっとるガキじゃ」といきり立つ。しかし、一雄は「自分から男についていったんだよ……わかるんだよ」と、どうも不甲斐ない。窮地に立たされる息子に「ぶっさいくじゃのう。そんなじゃけ、嫁にも逃げられる」と言い放つチュウさんは無神経そのもの。ただ、たしかにチュウさんは妻(倍賞美津子)に逃げられていない。
一雄に向かって老いた母親が「お父さん、あのときね……」と語られるエピソードは温かく、家族の愛情に満ちている。一雄の記憶にある父親の姿とはだいぶ異なる。家族という近しい間柄だからこそ生じる誤解、わかりあえないことはたくさんある。こうしたズレを丹念に拾い上げていく。

原作では、美代子のお相手は《腹の出た体型も、肩の線がくずれた背広も、地味なネクタイも、人妻と不倫をするような男のイメージからはほど遠かった》という、中年のサラリーマン。ドラマではいかにも人妻を喰いものにしそうなイケメンが現れる。


原作にでてくる「あれ」とはまた違う美代子の事情が描かれるのだろうか。もし、原作の「あれ」が忠実に描かれるとすれば、ここはむしろ、くたびれた中年男が出てきたほうがリアル。ただ、家族みんなで見ているときに美代子が唐突に「あれ」を打ち明けるシーンが出てくると、相当気まずいことになりそうだ。やはり、違う展開になるのか、今後が気になる。

第1話見逃しちゃったという人も大丈夫。本日14時から初回2時間SPが再放送されるほか、第2話の放送が始まる1分前まで、TBSオンデマンドで第1話を無料配信中だ(便利!)。
似たもの親子の旅は始まったばかり。つぎはどんな真実に直面するのか。今夜9時から!
(島影真奈美)