
30話は、こんな話
あさ(波瑠)は正吉(近藤正臣)を伴って、五代(ディーン・フジオカ)を訪ね、会社を作るのに参加したいと申し出た。
さらにあさは、九州の炭坑を買ってビジネスするため、現地に視察に行こうと考える。
その頃、はつ(宮崎あおい/崎の大は立)が妊娠。ところが、惣兵衛(柄本佑)が姿を消してしまう。
旦那さまの憂い
「白蛇はん」が「黒蛇はん」になったのは、健康的に日に焼けて・・・ではなく、「心の奥に潜む闇の存在」にかかっていたのか! とびっくりぽん。
はつに優しくもなっていた惣兵衛が行方をくらましてしまうとは。
それも、はつが、守る家がなくなった今、旦那さまが一番大事とあさに言ったばかりで、さらに子供ができたときというのが皮肉。
惣兵衛はいったいどんな闇を抱えているのだろうか。
その一方、新次郎(玉木宏)も、心に何か抱えはじめているようで。
ビジネスに一生懸命のあさが、五代とビジネスや新しい世界に関して意気投合しているところが気になる様子。あさの行動を咎めてみたり、あさの様子を物陰からうかがって複雑な顔をしてみたり。
強くて頑張りやのあさとはつに対して、旦那さまふたりは少々、従来の男らしさのないコンプレックスを刺激されているのだろうか。家の仕事と自分が合わないものを感じていたであろうふたりが、働き者の妻に対しても引け目を感じてしまう。
この逃れられない疎外感が第5週の通奏低音になっていた。
救いは、はつがあさに「旦那さまのご意見だけはちゃんと聞く」ように進言すること。遊んでいるようで、お稽古ごとは、大きな商いをするひとたちが集まって重要な情報を得られ、あさが興味をもった石炭の話もそのひとつであることを、噛んで含めるように語るはつはまったくできたひと。
旦那さまふたりがこういう状況からどう脱出できるかもこのドラマの興味深い部分だ。
びっくりぽんが動作つきに
新次郎は24話で、五代の差し出した手を握り返さなかったが、お父さんの正吉はしっかり握り返す。これでさらに新次郎の疎外感は、知らないうちに高まってしまう。
五代の言う「ビッグカンパニー」に参加しようと思ったあさと正吉。
「びっくりなかっぱ」なんてアホな聞き間違いをしてしまうふたりが、まじめに手の動作をつけて、「びっくりぽんなかっぱ」「びっくりぽん」とやる様は滑稽そのものだが、憎めない。
「瞳」「カーネーション」「ごちそうさん」と朝ドラ常連の近藤正臣が硬軟取り混ぜた芝居で、波瑠といい義父と嫁コンビを演じている。
波瑠のそばには、正吉、雁助(山内圭哉)、亀助(三宅弘城)、梅(友近)とじつに頼もしい相方たちが集まっている。
それにしても、「びっくりぽん」をこんな動作つきでさらに浸透させようと涙ぐましい努力。そんなに必要なのか、これは。
(木俣冬)
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