朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)1月7日(木)放送。第14週「新春、恋心のゆくえ」第82話より。
原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:新田真三
降る雪が染みる、ふゆの恋 「あさが来た」82話
イラスト/小西りえこ

82話はこんな話


亀助(三宅弘城)に頼まれ、新次郎(玉木宏)はふゆ(清原果耶)と思い出づくりに外出する。その帰り、ふゆは長いこと抑えこんでいた思いを溢れさせてしまう。

鈍感なあさ


占い、女子トーク、恋 と女の子らしい要素満載だった82話。

あさ(波瑠)は親の決めたひと(新次郎)と結婚したため、「誰かを思って身を焦がすような思い」を経験したことがないと言う。なんだすて! 新次郎にお姫様抱っこされた時とか、妾をもらわないでほしいと願った時とか、そういう時の感情を、いったいあさはどう捉えているのか!
かなりのにぶにぶちゃんのあさの言動に、新次郎は微妙に傷ついているようす。
「(そういう体験したことは)そらあるわ」と答えたその相手が自分だと、あさは気づかない。
外出した新次郎を心配する気持ちも、誰かを思って身を焦がすような思いのひとつであることがわからないあさに代わって、ふゆがキュンキュンする恋の場面を任される。

憧れの相手とのひとときのデート、告白、そして玉砕、涙。
この場面で降るのは、雪。本来、悲しい涙の場面はそれを増幅するために雨を降らすことは常套だが、「あさが来た」ではそれを封印し、新次郎のジンクス(嬉しい時に雨が降る)に替えている。
ふゆとの場面が雨でなく雪であることで、この片思いは悲恋であることがいっそう強調される。お正月の話だしぴったりでもある。
それにしても、新次郎がひたすら男をあげる。
ふゆの渾身の告白にも「こないなことしたら自分を傷つけるだけだす。それからな、うちなんかいう口癖ももうやめなはれ。金輪際自分を卑下したらあかん。もっと自分に誇りもってな」と毅然とした態度を貫いた。そして亀助にえりまきを渡してふゆの元へ行かせる。
とはいえ、実は、82話で白眉なのはこの後の亀助だ。

亀助は泣くふゆの首にえりまきを巻いてあげながら、「気持ち伝えられてよかった」「よう勇気だしましたなあ」と言うだけで、自分の本心を言えない。「ははは、ははは」と無理した笑いに、彼の痛みがこもっている。三宅弘城が、宮藤官九郎のバンド・グループ魂で「石鹸」なんていう面白い名前で活動しているとは思えない(これはこれですごく魅力的なんだが)ほどのしんみりいい芝居。ここで続くになってもいいくらいだと思いきや、もう少しハデな場面が。視聴者をがっちり掴んで離しません。
(木俣冬)
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