Twitterフォロワー20万人超のラブホスタッフ上野さんによる「空想恋愛読本」。本連載では、マンガ・ドラマ・アニメ等の登場人物が現実にいたらモテるのか分析。
そこから女性にモテるためのアドバイスを導き出します。
『ヒカルの碁』人気投票でダントツ1位だった伊角慎一郎はモテるのか【ラブホの上野さんの空想恋愛読本】
画像出典:Amazon.co.jpヒカルの碁 16

マンガファンの楽しみの一つに「人気投票」というものが御座います。
好きなキャラクターに投票を行い、得票数のランキングを発表するというものですが、たいていの場合、1位は主人公かそのライバルであり、脇役が人気ランキングのトップに来ることはほぼありません。

そんな人気投票においてダントツのトップを取った脇役、それが今回のテーマになる「ヒカルの碁」の伊角慎一郎で御座います。

囲碁のプロ棋士を目指す主人公の進藤ヒカルが院生(プロの入門のようなところ)だったころ、兄貴分として登場した伊角ですが、精神面の弱さからプロになれずに燻っておりました。その後ヒカルに反則負けをしてから中国に渡り、弱さを克服し、無事プロ試験に合格した伊角ですが、そんな彼は現実にいたら果たしてモテるのでしょうか?

囲碁に関しては「超わがまま」な伊角


まず彼がモテるかどうかを考える上で最も外せない要素として、彼が「天才」であるということを考えなくてはなりません。

作中で急成長をみせるヒカルや、ヒカルのライバルで圧倒的な才能を誇る塔矢アキラと比較してしまうと、いまいちパッとしない場面が多い彼ですが、そもそも「囲碁のプロを目指せる立場にいる」というだけで彼の天才性は分かるものでしょう。
そして、一般人とはまったく違う思考をしています。

例えば中国に行った彼は「一週間建物の外に出ないで囲碁を打ち続け」たり、部屋に囲碁盤があると「これで夜も囲碁の勉強が出来る!」と喜んでいます。なかなかぶっ飛んだ価値観の持ち主です。

マンガで彼を見ている分には「ストイックで素敵!」と思うかもしれません。実際、伊角が人気投票で1位になったのは「ストイックな彼を応援したい!」というところがあったことでしょう。
ですが、もし現実に存在して彼と付き合った場合、そのストイックさが健在だと「12月24日? あぁその日は試合があるんだ!」と嬉々とした顔で言いかねない性格ではないかと推測されます。


そもそも親善試合で二泊三日の日程だったはずの中国遠征を「もう一度打ちたい」という理由だけで1人勝手に日程を延長したかと思えば、そのまま2カ月も中国に滞在してしまう彼なのです。喋り方や態度こそ穏やかなものの、囲碁に関しては「超わがまま」であると言わざるを得ません。もちろん勝ち負けが全ての世界でプロになろうとする男としてはその態度は正しいのですが、もしそんな彼と付き合うためには相当の自己犠牲が強いられることでしょう。


伊角の問題点「子どものような真面目さ」


ヒカルの兄貴分として登場する伊角ですが、実は作中では彼が「兄貴分」っぽいことをしている場面はほとんどなく、伊角の3つ下の和谷義高の方が兄貴分なところが多く見受けられます。
強いて言えば、寿司を奢っているくらいでしょうか。ヒカルの面倒を見ることもあまりありませんし、先輩として何かを教えようとすることもあまり御座いません。

そんな彼の最大の問題点は「子どものような真面目さ」です。

彼のメンタルが弱いのもその点によるものであることが多いのですが、彼の子どもっぽさが最も現れているのは中国での楽平(レェピン)との一戦の直前。
伊角に目をかけていた楊海(ヤンハイ)が楽平に対して盤外戦術(対局において「対局以外の場面で」心理的に攻撃すること)をしかけたときに如実に表れます。伊角は自分を勝たせようとして楊海が盤外戦術を行ったことを知り、激しく怒りました。

簡単に対局の背景を説明すると以下のようなものでした。
・伊角は楽平に前の試合で敗れた
・そのため、伊角は楽平と再戦しようとしている
・楊海は、諸事情により伊角に勝ってもらわなくてはいけなかった

確かに楊海が行った盤外戦術は卑怯と言われることが多く、褒められたものでは御座いません。ですので伊角がそのことに対して怒ったということ自体は非常に真っ当な怒りであると言えるでしょう。


私が伊角の性格的な問題として挙げたいのは、伊角が「なぜ楊海が盤外戦術を行ったのか」ということを考えなかったということで御座います。
楊海は、伊角にどうしても勝って貰わなくてはいけなかったのですから、楽平に対して盤外戦術を行った是非はともかくとして理解はできます。
ここで重要なのは、伊角が「楊海の事情を考えて怒ったのかどうか」という点。仮に楊海の事情を知らなくとも、理由を問いただす怒り方であるのであれば、それはそれで問題ないでしょう。
しかし伊角は「こんなことを二度としないでください!」と楊海の事情を何も考えずに怒っているのです。対局に勝った後も「楊海が対局前にあんなことをするからうろたえたじゃないですか」と楊海の事情を考えているようには思えない発言をしております。

ここが彼の悪い意味での子どもっぽさではないでしょうか。

例えばテレビのニュースで「殺人事件」という言葉が流れれば、普通の大人であれば、それこそ条件反射的に「なぜ人殺しをしたんだ!?」と犯人の事情を考えることでしょう。もちろん事情を知り、そのうえで悪であればそれは怒るべき事情であるべきなのですが、伊角の場合、「殺人事件」と聞いたら反射的に「死刑だ!」と言っているようなものなのです。確かに殺人は悪であるものの、その前に犯人の事情を聞く時間すら持たない、犯人の事情を聞こうとしないで悪と断言する。これは非常に子どもっぽい正義感で御座います。

そんな独善的な彼が現実においてモテるかと言えば、やや疑問が残ります。



伊角の一番はいつだって「囲碁」


以上のことから残念ながら伊角は現実においてはあまりモテない可能性が高いと推測されます。
もちろん、ストイックに囲碁に向き合う彼を見て「私が支えてあげるんだ!」と献身的になる女性もいることでしょうが、それは稀な存在であると言わざるを得ません。恐らく友達も家族も、そしてそんな彼を好きになった女性すら、彼の一番には決してなれないのです。彼の一番にはいつだって「囲碁」がある。はた目から見ている分には憧れる存在でも、実際に好きになったら辛いだけです。

まず「なぜ」と考えてから行動を


そんな伊角から我々が学ぶべき点は何といっても、「反応する前に『なぜ』と考えることの重要性」でしょう。

今回のアドバイスは「どうやって付き合うのか」ということよりも「付き合った後にどうやって関係を発展させるか」というところで役立つ考え方であることでしょう。

例えば彼女が浮気をしたとしましょう。
そんなときであっても、怒る前にまず「なぜ」ということを考えなければならないのです。「浮気=悪」と事情を考えずに言及するのは子どもがやることで御座います。もちろん事情を考えたうえでそれでも怒るのであれば、それは構わないのですが、同じ怒るにしても「事情を考えて怒る」のと「事情を考えずに短絡的に怒る」のでは意味が全く異なります。

これは恋愛に限った話では無く、対人コミュニケーションにおいては常に付きまとう問題で御座います。
どうしても我々人間は、何か悪いことをした人間がいると反射的に怒ってしまいますが、その前に「なぜ」ということを考える時間を持たなければ、それはただの機械のようなもの。怒るにせよ見逃すにせよ褒めるにせよ、その前に「なぜ」と考え行わなければ決して相手のことを理解することは出来ません。

総括
常に相手の行動に対して「なぜ」を考えても、最初のうちは「その理由」が分からないことでしょう。
それでも「考えた上で分からない」のと「考えない」のは全く意味が異なります。
その「分からない」の積み重ねは成長になりますが、「考えない」の積み重ねは全く成長にならないことをどうかお忘れなく。
(上野)