脚本:渡辺千穂 演出:鈴木航

家族は共に過ごす時間がその土台になっています。
なにごとも土台が脆ければ簡単に崩れてしまうのです。(語り/菅野美穂)
69話はこんな話
ゆり(蓮佛美沙子)が身重なのに家出(近江へ)してしまい、潔(高良健吾)は途方に暮れる。
人はなんのために生きるのか
はじまりに例の不穏なピアノの劇伴がかかる。すみれ(芳根京子)の家庭は順調のようだが、そこに血相変えて潔が入ってくる。ゆりが家出してしまったのだ。不穏なピアノ曲はこっちにかかっていた。
「女は難しいわ」と相談に来た潔に麻田(市村正親)が名言を。
「おまえは見誤っとる。ひとは自分の幸せのために生きるんや」
一方、すみれは、「もろうた人が嬉しい思うてくれるような、思いを伝えられるような、そういう“べっぴん”を作る人になりたい」と思っている。
ひとの幸せが自分の幸せと思えたら幸せ。その点、潔は何が幸せなのかわかってない。ただただ他人に尽くすことを運命だと思って生きているだけなので、ゆりの気持ちもさっぱりわからないのだ。
さくら(粟野咲莉)の友達が、顔のない両親の絵を描いているという、ずしりと重いエピソードも登場し、11週から12週にかけて「人の気持を考える」ことをいろいろな角度からずっと描いている。
家族の手仕事シーンがすてき過ぎる
すみれは、さくらのために、つんつるてんになったセーターをリメイクする。
紀夫は、さくらのクリスマスプレゼントにと、缶に色を塗ってかわいい容器をつくる。それを見てすみれが「なんか、なんかなあ・・・」と庭の千両(実が上についてるから、下についてるのは万両)の実と葉っぱをとってきたり、財布から鈴を出してきたりして、工作がレベルアップする。
夫婦の共同作業でかわいらしいキャンディ缶の完成だ。
「誰かのためにべっぴんをつくる、そんなときのすみれの輝きを改めて感じた」紀夫。
キャンディーをひとつ頬張るすみれ。紀夫もそれに続く。その甘さでゆるむ目と口には嘘がない。
ふたりでものをつくっているときの楽しげな顔も、じつに自然だ。「べっぴんさん」の演出は、笑顔の引き出し方が抜群に冴えている。
紀夫は、いまなら、さくらに「お母さんのどこが好き?」と聞かれたら「誰かのためにべっぴんをつくっているときのすみれ」とすぐに答えられるに違いない。
(木俣冬)