脚本:渡辺千穂 演出:新田新三

131話はこんな話
さくら(井頭愛海)が赤ちゃんを出産。“あい”と名付けられた。
ことごとく
反対を押し切り、ライセンスビジネスを早急に進めようと逸る健太郎(古川雄輝)。
あきらかにKADOSHO の古門(西岡徳馬)の影響だ。
意外と主体性がなく、言葉の強い人の言うなりになりやすい健太郎のことが、余計なお世話だが心配になる。
とはいえ本店は右肩上がり。今年中に去年の売上を2倍にしようと張り切る健太郎。
一方、オライオンは、路面店の候補地をことごとく、エイスに契約されてしまっていた。
飛ぶ鳥を落とす勢いの栄輔のことが、潔(高良健吾)は逆に心配になり、わざわざ東京を訪れると、
「ふくらみ続けた風船はいつか爆発する。いまのやり方を続けたらおまえは爆発するぞ」と警告する。
いいひとだな、潔。
じつのところエイスの売上は年々落ちていた。
それを古門にばらしたのは玉井(土平ドンペイ)。
根本(団時朗)が「お金のあるところにいる」と彼の小ずるさを揶揄してたのは、このことを予言したかのようだった。
ここだけ「嘘の戦争」(火曜9時フジテレビ)を見てるような気分に。
古門の「流行が本物になることはなかったか・・・」はずしっと来た。西岡徳馬さん、さすがです。
あら、全員集合
赤ちゃんが生まれる! とみんなが坂東家に直行。
ひとり家にいたすみれは、ずいぶん、おおらかで、↑この台詞。
一回しか出産を経験してないのにすごい余裕である。
そして、女の子誕生。女系家族だ、坂東家。
ともかく「べっぴんさん」に出てくる赤ちゃんは、みんなかわいい。
どうしてきっぱり断ってくれないのよ
孫が出来たから、そろそろ村田家に、と言う君枝(土村芳)に「おいおい」と返した健太郎だったが、
次にカットが切り替わると、さくらのこわい目つきと声(しかも、カメラがちょい寄りして表情を強調)で↑この台詞。
さらに「その場をおさめるために調子のいいこと言わないでよ」とまで。そのあとも延々、容赦なく健太郎を攻め続ける。
これは鬼嫁ではないか!
健太郎が「まわりの人に安らぎを与える優しい女の子になってほしい」と娘に願う気持ちが痛いほどわかる。
饒舌なさくらに比べて、しゃべらないすみれと明美
栄輔がラジオでしゃべっているのを聞きながら、良子(百田夏菜子)が感心していると、明美(谷村美月)のアップになるが、彼女は何もしゃべらない。でも意味深に長くアップのまま。
坂東家でも、お茶しながら紀夫が「すごいな栄輔くんは」と言っても、すみれは何も語らない。
沈黙が効果的なこともあるから、これはこれで良い。
ただ、近年のドラマは、こういうところに気の利いた台詞を入れて、印象を強めることが多い。例えば、坂元裕二や三谷幸喜、宮藤官九郎、前田司郎などはそこを支持されてきた。
「べっぴんさん」はそこに背を向けるかのようだ。良子と勝二(田中要次)、食後の珈琲が早い、というやりとりや、君枝と良子が「何食べようかなあ」「ボルシチかな」「おいしいなあ」と会話しているところなどは、脚本に、歩いているふたりとしか書いてないのを現場で台詞を足したのではないかと思う。
こういうとき、時間があれば脚本家に足してもらうことや、それが無理なら監督や助監督などが面白い台詞を作ったり、俳優たちにアドリブを任せたりと対処方法はいろいろだ。「べっぴんさん」では現実では皆、人気脚本家が考えるような洒落た面白い台詞を吐かないというリアリズムなのか、ことさら台詞を盛ることをしないように感じる。そのためみんながおっとりと状況説明しているだけ(きゅうり食べる、食後の珈琲は早い、ボルシチかな、美味しいなあ など)になる中、さくらだけが饒舌でキツイからよけいに悪目立ちしてしまうのだ。わざと際立たせているのかもしれないけれど。
渡辺千穂の脚本は、ときどき、ちょっと不安定な面が出て狙いが視聴者にわかり辛くなるところが、「べっぴんさん」以降の課題だろう。
今日の、龍ちゃん
龍ちゃん(森永悠希)が「やっぱかっこいいなあ」と栄輔のことを尊敬しているふうだが、彼はもうエイスの服を着ていない。
さくらの赤ちゃんが生まれる! と聞いて、料理の最中に道路に飛び出しそのまま坂東家に向かう(このときの森永はいい動きをしてる)が、火の始末絶対にしてないだろ〜とハラハラした。
(木俣冬)