六つ子と「カラダにいいもの大賞」の字面の合わなさが面白すぎる。
お前らアニメ界隈で、もっともカラダに悪い生活してるだろ!

哀しみのトド松・おそ松
7話Cパートは、おそ松とトド松回。
のびのび自由人なおそ松。少しでも飾ろうとするトド松。真逆な二人だ。
会話上手なトド松に対し、おそ松はいざ女の子を目の前にすると、緊張しすぎてしゃべれない。
ところがおそ松が開き直り、いつもの自分のシモネタペースで暴走したところ、泥酔した女の子たちと意気投合。悪口言い合ってわいわい盛り上がる中、全く会話に混じれなくなったトド松は一人帰る羽目に。
女の子と仲良くなれたと思っていたおそ松。別の日に話しかけたところ手のひらを返され、心が折れてエンド。
人間関係の失敗を、救いなしオチなしで描いてきた。
誰にも言えないトド松
トッティことトド松はドライモンスターとして描かれ続けている。
実際、5人兄弟全員に対して、優しさを示している回はほぼない。
実は彼が兄たちをひそかに大事にしているのは、1期22話「希望の星、トド松」で描かれている。
合コンに誘うメンツを一人だけ選ばなければいけなくなった時、トド松は5人の兄を絶対連れて行かないと冷淡に言い放つ。
実はこれ、5人の中から選ぶことなんてできない、みんなを傷つけたくない、という彼の苦しみゆえの行動だった。トド松は、一人こっそり号泣。
今回彼がおそ松の暴挙に折れたのは、この一言だった。
おそ松「おれ、お前ともめることの方がイヤ」
おそ松は、クズ野郎だけど、ウソはつかない。
飾らないおそ松のメンタルは、タフだ。
「兄弟で合コンに来ちゃうキモイやつ!」
「ブース! 顔30点だよ、雰囲気でごまかしてるけどー」
「思われてたー! そこは言い返せないー」
この楽しそうな会話に、トド松は一言も口を挟めない。
トド松は、ずっと外面を繕い、他人に自分の内面を見せる行動を取れない。
だから、人と表面上仲良くなるのはうまくても、素がぶつかり合う空間では、何もできないのだ。
自己評価の低いトド松
1期22話で本人も言っているようにトド松は、自分たち兄弟はあらゆる人に対して下の下、相手にされていない、というコンプレックスがとても強い。
この自己評価の低さを隠すために、「愛嬌のある末っ子」と言うキャラ付けの鎧を着ているようだ。
だから、必死に「おもてなし」しなきゃと立ち回る。女性たちの嘘に腹を立てるという発想にならない。
ここがおそ松との決定的な違いだ。
和辻哲郎は1914年に『自己の肯定と否定と』で、自己肯定の悩みについて書いている。
「自分が我を以て打ち勝とうとしまた打ち克ったつもりでいた事は、皆嘘であった。表面では自分が勝ったようになっていても、相手の我はむしろ自分を憎悪し嫌厭していた。明らかに自分の方が強く優れている場合でも決して尊敬はされていなかった。特に相手が、嘘をつくことの平気な、媚を以て男に対しようとする女の場合に、その事実は明らかであった。」
トド松は合コンに際し、おそ松のように「嫌われてもいいじゃん」という気持ちを持てなかった。
自分がいかに「いい人間」を繕ったところで、本音は「嫌厭」され「尊敬はされていなかった」。「キモいやつ」でしかなかった。
彼は女性たちに向き合った時から、自分自身に負けていたのだ。
トド松は一人の時、自分で自分を励ますことが何度かあった。
「今日のトッティ、頑張ったよね。うん、頑張った。いい子、トッティは、トッティが大好きだよ」
自分で自分を褒めるのは、脆い心を守る手法の一つ。
トド松は自己肯定ができていないのを自覚しており、いつも必死に保とうとしている。
虚心な態度で交われる人
和辻哲郎は、続けてこんなことを書いている。
「これに反して自分が最も我の少ない虚心な態度で交わっている人には、本当の自分が最も明らかに活らき掛けていた。」
素で接することのできる相手の前では、自分らしさが出る。
家族以外だと、一人だけこれに当てはまる女性がいる。
トト子ちゃんだ。
夏の海を爆破し、クリスマスのホテル街をぶち壊す。一切、自分を隠さない。
格好をつけないで接することのできる彼女の前では、トド松も素でいられる。
彼らが本当に大切にできる女の子とは、トト子のようなまっすぐな子か、十四松の彼女のように双方で真剣に向き合える子なのだろう。
トド松もいずれ、素の自分を出せる子と(合コン以外で)出会えると思う。その時は、おそ松は空気が読める兄だ、いつもみたいに邪魔しないと思うよ。
(たまごまご)
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