「恋しさと せつなさと 心強さと」をなぜ歌わない?
第5話の冒頭、カラオケに興じる智子(篠原)、新人議員仲間の未亜(前田敦子)、園田(斎藤司)、市長秘書の望月(細田善彦)。すでにあちこちで書かれているが、篠原の大ヒット曲「恋しさと せつなさと 心強さと」のイントロが流れるのだが、篠原は歌わない。なぜ歌わない? 歌えないのか? 歌いたくないのか? 歌う度胸もないのか? 『オトナ女子』の打ち上げでは歌ったらしいのに!
ここで篠原に歌わせることができれば、話題を盛り上げることもできるし、30~40代視聴者のハートも掴んでドラマに引きずりこむことができたと思うのだが……。どこか“ボタンの掛け違い”のようでもあり、ストレスを感じさせるオープニングだった。
だが、ひょっとして、このオープニングはその後に続くストーリー全体の違和感を表した意図的な演出だったのかもしれない……と思ってしまったのだが、いくらなんでも深読みだろう。

市長の汚職発覚! そのとき、新人議員たちは……
ある日、智子のもとに謎の男から告発文が届く。市議会に汚職議員がいるというのだ。最初は警戒するも、徐々に盛り上がっていく新人議員たち。電話を取るときの高橋一生のバックハグ(未遂)がズルい。
その後、智子たちの元へ、児童会館の建設業者選定に関する資料が届く。二通の資料に記載されている数字が異なっていた。受注した建設業者の社長は、河原田市長(余貴美子)の後援会長だった。
“二通の数字の異なる契約書”は学校法人「森友学園」をめぐる問題にも登場した。このときは学園側が国と大阪府にそれぞれ金額の違う契約書を送り、補助金を多く得ようとしていた疑いがある。また、首相夫人が学園の理事長(当時)夫妻と親しかったこともあり、国有地の売却に関して便宜が図られたのではないかという疑いも持たれている。今回のエピソードは、そのあたりの現実の問題を反映したものだろう。
動揺する市長派の岡本(千葉雄大)。藤堂(高橋一生)は慎重な姿勢を崩さない。ところが、智子は始めたばかりのツイッターで「汚職というのは、児童会館建設みたいです」とカジュアルに投稿。受注業者を見れば、誰だって市長が汚職に関与していることがわかる。すぐにツイートを削除したものの、ネットは大騒ぎとなり、市長のもとへマスコミが殺到する。
当然ながら潔白を主張する市長。記者に建設会社社長との交友関係を問われると「でも、私たちは仕事の話をしたことは一切ございません」とかわす。
市長と対立する犬崎派のドン、犬崎(古田新太)は百条委員会を開くことを決める。これは地方議会版・証人喚問(国会調査権)のこと。最近では豊洲市場の移転問題を調査するために東京都議会で行われた。
市長の秘書が自殺! そして市長選!
「河原田さんのためになら、この身を捧げてもいい!」とにこやかに語っていた市長の私設秘書の望月(細田善彦)は窮地に陥っていた。恋人の市役所福祉課職員、小野佑樹(猪塚健太)が5000万円の振込依頼書のコピーを持っていたのだ。依頼人は小野、受取人は望月である。この5000万円は市長の政治資金となった。
百条委員会が開催される中、望月は自殺してしまう。えーっ! 安藤玉恵に続いて、細田善彦も無駄使いするなんて……。望月は、汚職はすべて自分の独断であり、すべての責任を負って自殺するという動画を残していた。汚職事件などの金銭に関する問題が発覚した際、政治家の秘書が自殺した例は複数ある。
河原田市長は記者会見を開き、自身の潔白を主張するとともに、市長の辞任を表明。選挙に再出馬することで信任を問うことを明らかにする。これは先頃行われた衆院総選挙が「モリカケ隠し」と言われていたことを連想させる。さまざまな疑惑がある中、政権側は政権運営の「信任」を問う形で選挙戦を進めて圧勝した。河原田市長も選挙に勝てば、(捜査の手が及ばない限り)「市民のみなさんが信任してくれた」ということでオールOKということになる。
選挙だと意気上がる犬崎派の人々。それに対して怒りをぶちまける智子だが、自分自身の軽率なツイートが事態を大きくしたことに対する葛藤が一切ないことに違和感を覚える。それだけバカということなのか……?
そして犬崎が智子に市長選への出馬を要請! 唐突! 告発が智子のところへ届くところから、犬崎が描いた画であることはだいたい想像がつくのだが……。なお、荒唐無稽に感じる人もいるかもしれないが、“都政のドン”と呼ばれる大物都議会議員が今年行われた都議選で自分の後継者として20代の新人女性候補を擁立したケースもあるので、それほどメチャクチャな話ではない。なお、その候補は敗北している。
それにしても、篠原涼子が「恋しさと せつなさと 心強さと」を歌わない違和感、汚職の責任を被って秘書が自殺する違和感、選挙に勝てば許されるという政治に対する違和感、自分の影響力に無自覚な政治家(智子のこと)への違和感……。
さらに混沌としたストーリーが続くであろう第6話は今夜9時から。
(大山くまお)