第9週「女のかんにん袋」第49回 11月27日(月)放送より。
脚本:吉田智子 演出:川野秀昭

49話はこんな話
隼也が生まれて1年。大正4年。
隼也役の子役が気になる
鈴木京香様演じるごりょんさんが、てん(葵わかな)に“ごりょんさん”の座を譲って、渡米してしまった。
残されたてんと藤吉に息子・隼也が生まれて、あっという間に1年が経過。
1歳のいたずら盛りのボン(隼也)は人気者で、みんながかわいがる。
亀井(内場勝則)は「招きボン」と呼ぶ。
朝ドラに出てくる赤ちゃんはかわいい子ぞろいだが、この隼也役の子、なかなかに芸達者で、ときどき、すごいいい表情をする。
なんといっても、49話では、てんが芸人の給料を計算しているところ、ほかの用事で席を立ち、ひとり部屋に残されたときの顔をしかめた表情が忘れられない。ハードボイルドなおじさんみたい。てんとトキ(徳永えり)がウロウロしているのに合わせてキョロキョロと頭を動かす様子をじっくり追ったうえ、この一瞬を押さえたカメラマンさんに拍手したい。世界のネコを辛抱強く追い続ける岩合光昭のような気持ちだったのではないだろうか。
さらに、そこから、ひとりでどこかへはいはいして行ってしまい、風太(濱田岳)に発見されて抱っこされて部屋に戻ってきたとき、風太に頭をもたせかけた表情も、いかにも風太が気に入っているふう。濱田岳の子供の扱いがうまいのかもしれないが。
ほかに、新キャラとして、気になったのは、風鳥亭の従業員・イチ役の鈴木康平。大阪の若手俳優だが、声や表情に明るいトーンが出せる人。
なぜかしらねど、関西の人はどこかワントーン、テンションが高い。
そのなかで、葵わかなと松坂桃李は明るくふるまっても、どうしてもおとなしく見えてしまう。だが、それによって、ふたりが主役で、弱いけど手に手を取って健気にがんばるという印象づけがされるのだろう。
がんばる藤吉、見送るてん
大阪一、安い寄席として人気となって、順風満帆らしき風鳥亭ではあったが、いまだに、寺ギン(兵藤大樹)に頼っていて、取り分も、寺ギンのほうが多く、5分5分にもしてもらいたいのが心情。
伊能はん(高橋一生)の活動写真も順調で、活動写真業界が小屋を増やしていると聞き、藤吉は寄席を増やすと言い出す。
芸人も増えないのに、小屋を増やすって・・・と言いたいところだが、てんがえらいのは、藤吉のことをひとっつも否定しないで、へい、へい、と笑顔で聞いていること。
子育てもしないといけないのに、寄席の仕事もやっていて。でも少しも愚痴を言わずに、当たり前のようにやっている。仕事で何かアイデアを出す場合も、決して出しゃばらず、淡々と。
そして、いつでも穏やかに夫を送り出す姿に、これぞ貞淑な妻というものかと、モーレツに感動。
こんな妻は現代では絶滅危惧種ではないだろうか。
朝ドラのヒロインは“明るく元気でさわやか”が基本らしいが、度が過ぎると我が強くてうるさく感じる場合もある。てんの場合、「能ある鷹は爪を隠す」というふうで、うるさい気分に決してならないのがいい。
そんなてんに、新京極の寄席に呼ばれていった万丈目吉蔵(藤井隆)の奥さん・歌子(枝元萌)は「仕事がおもろいと男は調子に乗ってはしゃぎまわる」「もうひとりの子供」と思わないと・・・と助言する。
たしかに、藤吉も「男は兜や」とはしゃいでいた。
9週は、はしゃぐ藤吉に、さすがのてんもキレるという流れらしい。さて、どうなる?
(木俣冬)