土曜ナイトドラマ「オトナ高校」(テレビ朝日 土 よる23時5分〜)
脚本:橋本裕志 
演出:瑠東東一郎 山本大輔  
出演:三浦春馬 高橋克実 竜星涼 松井愛莉 山田真歩 夕輝壽太 杉本哲太 正名僕蔵 黒木メイサ

最終回 12月9日(土)放送 
「オトナ高校」最終回 道化に徹した三浦春馬にスタオベしたい、ありがとう!
「オトナ高校」テレビ朝日

逆転があった


7話のレビューで、逆転ものが流行りのなか、まったく逆転がないと書いたが、最終回は逆転の嵐だった。

最後にくるっと不意をついて驚かせるために、7話まで愚直なまでに(よくいえばひたむき)登場人物たちをひとつの目標(体験するということ)に向かわせていたのだろう。
途中、サショー(高橋克実)がスペア(黒木メイサ)にはっ倒されてクルッと回転する。
物語はまさに、そんな感じに鮮やかに技がかかった。

最後なので、概要を改めてまとめておく。
東大でのトップバンカー(しかもイケメン、高身長)であることを鼻にかけるいけすかない男・英人(三浦春馬)には唯一の弱点があった。それは30歳過ぎても、未体験であること。おりしも、国家が少子化を阻止するために、英人のような者たちを集めて教育を施すことにした。英人は、そこに入学させられ、チェリートとあだ名をつけられる。

このドラマは、その第二の義務教育の現場・オトナ高校で、第二の恋と青春を送る者たちの物語であった。

最終回は、いよいよ卒業式。


お世話になったペガサス先生(竜星涼)が、成果があがらない(体験者がなかなか出ない)ためクビになると聞き、なんとか全員で卒業しようとチェリートが立ち上がる。
盛大なお見合いパーティーを企画し、うまくいきそうだったが、台風で中止に。
それと同時に、意外とうまくいきはじめていたさくら先生(松井愛莉)ともスペアとも、結局どっちもうまくいかないチェリート。
だが、彼はそれなりに変わりはじめていて、一番の良い変化は、友だち思いになっていたことだった。

誰かのために何かすることが一度もなかった彼が、トップバンカーの地位も失いながら、でも、クラスメイトや先生のために奔走していることこそ、最大の変化だったという、いい話に。
チェリートは、卒業式の代表スピーチを、泣きながら行うのだった。
「オトナ高校」最終回 道化に徹した三浦春馬にスタオベしたい、ありがとう!
「オトナ高校」テレビ朝日

卒業式のサプライズ


途中、スペアじゃなくて、やっぱりさくら先生という流れになったとき、このドラマ、英人がさくらにこっぴどく振られるところからはじまっていたので、え、まさか、英人とさくらが紆余曲折を経て結ばれるまでを描く、ボーイミーツガールストーリーだったのか? と動揺したが、その予想は覆され、ホッ。さくらの女・床ドンからの、キスしてしまったチェリートだったが、それだけ(もらい事故)に終わるのだった。

このレビューはドラマを見ている人を主に対象にしているとはいえ、見てない人のことも考えて、詳細は伏せておくが、スペアはサショーと、なんだかんだで結ばれてしまう。
ヒミコ(山田真歩)もヤルデンテ(夕輝壽太)もみんな卒業。気がつけば、チェリート以外はみんな卒業できてしまう(だから、スピーチをやることになったんですね)。

うすうすそんな感じの展開か、と予想はしながらも、それが明らかになる瞬間が鮮やかで、フィギュアスケートの演技を鑑賞するような面持ちに。もし、見てない人がいたら、ぜひ、オンデマンドで、フィニッシュに至る流れの手際のよさを見てみてほしい。

道化に徹した三浦春馬のすばらしさ


「オトナ高校」の見どころであった凝った画も、最終回では全開だった。
三木孝浩監督の恋愛映画か!というようなでっかい照明を使って明るく明るくして白く飛ばしてしまうことで恋愛のファンタジー感を出すようなテクニックやら、やたらスローモーションにしてかけがえのない時間を切り取るテクニックやら、常套手段をこれでもかと使って、素敵に見せた。土砂降りの雨のなかの告白とか、走って走って、ライトアップされた観覧車を背景に再会とか、恋愛ドラマの王道までてんこもり。

だが、私が最も笑ったのが、偶然の産物の部分であった。

いなくなったさくらを探すチェリートがスペアと話をしている場面で、背景の川の水量がいやに多く、タップタップしていたのだ。
おそらく雨が降ったあとだったのではないかと思うが(勝手な想像です)、その川面のタプタプ具合が、溜まりに溜まった、チェリートのあれこれのように見えてしまって、なんだか笑えてしまった。

そんな偶然も味方にして(あくまで妄想です)三浦春馬は、とにかく最後までずーっと道化であり続けた。
連ドラとしては短いとはいえ、1話から8話まで、ずーっとキレッキレのコメディ演技はさぞや体力がいったことだろう。最後に、走りに走る走るところも、へんな走り方をし続け、「蝶になったら君の花の蜜を吸いにとんでいってもいいかな」などという珍台詞も決めた。
ただひとつ惜しかったのは、「オトナ高校」の前、10時台に日テレで放送されている学園ドラマ「先に生まれただけの僕」で、この日、櫻井翔がものすごく華麗に踊っていたので、三浦春馬にも、タイトルバック以外で、もっと踊ってほしかったということくらいだ。

「オトナ高校」最終回 道化に徹した三浦春馬にスタオベしたい、ありがとう!
「オトナ高校」テレビ朝日

振り返ってみると、このドラマ、小ネタと台詞を猛スピードでたたみかけながら、体力勝負する昔(80〜90年代)の小劇場みたいだったといえるだろう。その軌跡は妙に清々しい。これぞ青春。ありがとう、チェリート! ありがとう、テレビ朝日!
(木俣冬)