連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第18週「女興行師てん」第99回 1月30日(火)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:本木一博
「わろてんか」99話。桂文枝はドラマ出演する前になぜ不倫報道されるのか
イラスト/まつもとりえこ

連続朝ドラレビュー 「わろてんか」99話はこんな話


昭和9年。藤吉(松坂桃李)が亡くなってから4年が経ち、てん(葵わかな)は女社長として、次の一手を探す。


芸のためなら


NHK大阪制作「わろてんか」の〈北村笑店〉のモデルは、吉本興業。
主役のてんは、その創始者・吉本せいをモチーフにして描かれている。
てんも夫の藤吉も北村笑店もかなりオリジナル色が濃いが、それでも、これまで、内場勝則、藤井隆などの吉本芸人が参加して、花を添えてきた。
この度、いよいよ重鎮が登場。
桂文枝師匠が、自身で命名した柳々亭燕団治役で、4回ほどゲスト出演する。
小鳥の根付、風鳥亭、隼也、飛鳥と、何かと鳥の名前が出てくる「わろてんか」に、「燕」と鳥の名前を入れているところが洒落ている。

北村笑店のスタアのひとりとして柳々亭燕団治は、迷えるてんに、
「(てんは)いっつも目をさらのようにしてわてらの芸を見てくれてます」
「意外なところに輝く星はあるもんでっせ」などと言って、元気づける。


昨年末、不倫報道された文枝だが、なんや目つきが色っぽい。やっぱり女遊びは芸の肥やしなんやろか。

16年、「真田丸」に千利休役で出演したときも、不倫が発覚していた。お盛んであります。
今回も、不倫ニュースのあとのドラマ出演ということは、初代・桂春団治のように、芸者との醜聞は名を売るためということなのかもしれない。

桂文枝師匠の不倫が実際、宣伝のためであるかは知らないが、昔から、醜聞と宣伝はペアであることは暗黙の了解なところがあった。
ところが、昨今は、不倫報道にも厳しい目が注がれている。不倫の是非及び報道の是非が問われるこの機会に、不倫を宣伝に使う茶番的な手法こそ見直してほしい。

お飾りの女社長


「わろてんか」の主人公てんは、「二夫にまみえず」(たぶん)の清い清い女性だ。
夫が亡くなって4年、ひとり息子・隼也(成田凌)は、大学中退して、アメリカに留学中。
夫が遺した北村商店は大繁盛。
女社長てんを、栞(高橋一生)は取締役、亀井(内場勝則)は席主代表となって支えている。
なかでも、一番、息巻いているのは風太(濱田岳)。

先代社長の頃からバリバリやってきた意地があり、新しいことを提案する栞と対立する。

栞「社長はどうお考えかな?」
てん「それは・・・(しばらく考えて)わかりました。よう考えてみまひょ」

カクッとなるパターン。
4年経っても、おっとりとしているてん。そこは夫と似ているような気がする。藤吉もてんも、商売人のギラギラした馬力と才覚をまったく感じさせない。
そこが、見ていて楽だと思う人もいそうではあるが。
このドラマの社長は、周囲の優秀な人が支えていると考えるしかない。

「女社長と持ち上げられているけどまだまだお飾りや」と気にするてんに、栞が、
 新しいことを生み出せば飾りと思われないから「新しいスタアを発掘するんだ」「女興行師でしかできないことが何かあるんじゃないかな」と助言する。

葵わかなは、てんの“お飾り感”を忠実に演じているから、ちょっと損している気がする。真面目なひとなんだろう。そこも、夫役の松坂桃李と似ている気がする。


今日の、わろ点


風太(てんは隼也が社長になるまでの「つなぎみたいなもんや」
トキ「おてんさんは山芋ちゃうで」

これは直球ストライク。ど真ん中。

おなごの時代


おトキも眉を薄くして少しふけ感出した。それでも目がくりっくりしていて若さが弾けるトキは、
風太がてんを「つなぎ」扱いすることに怒り、職場復帰を決意する。
おなごがおなごに憧れる・・・そんなスタアを作ろうと考えるてんとトキ。
「しゃべくりが巧くて華のある女芸人」はそんな簡単にみつからないと思っていると、
うまいこと、リリコ(広瀬アリス)がやって来た。

前作「ひよっこ」でも、女が憧れる女として、時子(佐久間由衣)が70年代のスターになったが、
昭和初期のスターとしてリリコが立ち上がりそう。

何かと、朝ドラ名物をぶっこんでくる「わろてんか」なので、雑誌の裏表紙の広告「鈴急百貨店」は「大急」(「べっぴんさん」)にしてほしかった。

おトキの話に「少女歌劇」の話が出て来たが、この頃、宝塚歌劇団が人気だった。栞のモデルのひとりが、宝塚歌劇団の創始者の小林一三(阪急百貨店の創始者でもある)なので、本来なら、もっと宝塚がフィーチャーされてもいいところだが、そちらは、昼の帯ドラマ劇場「越路吹雪物語」(テレビ朝日)に譲ったらしい。
(木俣冬)