秀作「母さん、お元気ですか? 姉さんが恋をしている模様です。相手の背中に鯉の模様です。
ラップみたいですみません。今年の冬は、恋の季節になりそうです。Yeah……」

毎週土曜よる10時から放送のドラマもみ消して冬~ わが家の問題なかったことに~(日本テレビ系列)。エリート三兄弟の末っ子・北沢秀作(山田涼介(Hey! Say! JUMP))が、家族の幸せのため、そして家族の一員として認めてもらうために、北沢家に起こる問題をもみ消していく。
2月3日(土)に放送された第4話では、長女で弁護士の北沢知晶(波瑠)が見習い執事・楠木松也(千葉雄大)にキスをしてしまうという事件が起こる。
「もみ消して冬」4話「キスぐらい誰とだってするから!」初対面のおじさんにキスをせがむ波瑠が愛おしい
イラスト/まつもとりえこ

『もみ冬』の倫理ラインと誇り


第3話のラストで明かされた、楠木の背中にある大きな2匹の鯉の刺青。
すわ、楠木は北沢一家を乗っ取る刺客か? と思いきや、その疑惑は早々に解決する。

楠木「若気の至りでございます。昔、ヤンチャをしておりまして」(拳を頭にコツンとぶつけるポーズ)
秀作「え? その一言で済ませるつもり?」
楠木「弁解するわけではございませんが、法に触れるようなことには手を出しておりません」
秀作「なにそれ、おれへの当てつけのつもり?」
楠木「なにか法に触れるようなことをされたんですか?」

山形にある実家の温泉旅館を継ぎたくないがために、背中に刺青を入れた楠木。泰蔵(中村梅雀)やベテラン執事の小岩井(浅野和之)は、それを知っていて楠木を採用していた。経歴を調べても、怪しいところはない。
むしろ、1話から立て続けに法を犯し続けてきたのは秀作のほうだ。

1話では、父を救うために他人のスマートフォンのパスワードを解除し、盗んで捨ててしまう。

2話では、兄を助けるために他人の車を勝手に運転し、家に侵入する。
3話では、小岩井を家に連れ戻すためにラーメン店に侵入し、スープを捨ててカレーを作る。

では、4話で秀作が助けるのは姉の知晶かというと、そうではなかった。
父・泰蔵に頼まれて、知晶にお見合い相手と恋愛をさせようとする。知晶の出した領収書などから行動パターンを把握。知晶が定期的に通うバーへお見合い相手の角居(駿河太郎)を向かわせ、偶然の出会いを演出した。
しかし、作戦は失敗。バーで出会って良い雰囲気になりチェスを楽しんだ角居と知晶だったが、会話の内容は知晶の惚気話だった。惚気の相手は、執事の楠木だ。秀作は、知晶との恋愛を角居に断られてしまった。

今回、初めて秀作は罪を犯さなかった(バーのマスターに袖の下を渡していたが、公務員の職務のためではないので罪に問えるかどうかは微妙だ)。
「家族のため」という大義のためにどんどん罪を重ねてきた秀作。
でも、ここで『もみ消して冬』の倫理ラインが提示された。本当の意味で家族のためにならない問題解決の場合、秀作は犯罪行為をしないのだ。

角居との結婚は、北沢家の夢を叶えるためには必要だったが、知晶のためになることではなかった。
オープニング映像に大きく映し出される「KITAZAWA’S PRIDE」の文字。北沢家の誇りとは、家を守ることではなく、誰かが困っているときに助け合える家族であること。罪を犯さないことで、それを改めて示した第4話だった。

波瑠の可愛さ愛おしさに開眼


『逃げ恥』(TBS系列)で、新垣結衣が最高に可愛く見えるようになった。
『カルテット』(TBS系列)で、吉岡里帆が堪らなく可愛く見えるようになった。
『もみ冬』で、波瑠をこんなに愛おしく、可愛らしく思えるようになるとは思っていなかった。
「もみ消して冬」4話「キスぐらい誰とだってするから!」初対面のおじさんにキスをせがむ波瑠が愛おしい
波瑠が表紙の『anan (アンアン) 』2016/10/26号

「お風呂あがったら、1回だけチェス、付き合ってくれない?」と首をかしげて楠木に笑いかける知晶。計算してあざとく首をかしげたのではなく、嬉しさがにじみ出てしまったピュアな感じ。
チェス盤の前で楠木を待っているときの、かすかなため息。
その息に色をつけたら薄ピンクなのではないかと思う甘さがあった。
楠木が現れたときの安堵と喜びの表情は、個人的にはいままでに見た波瑠の笑顔で一番可愛く感じた。
家族にキスを咎められたときの「それがなによ! 酔っぱらったら、キスぐらい誰とだってするから!」という虚勢すら、いっぱいいっぱいで愛おしい。

兄の博文(小澤征悦)が楠木に、知晶をどう思っているのかと問う。

博文「好きか嫌いかタイプかタイプじゃないか、男らしくはっきり答えろ。これは命令だ」
楠木「……全然タイプではございません」

こんなに可愛い知晶なのに、楠木に失恋してしまう。
後日おこなわれたパーティで、知晶は自分が「キスぐらい誰とだってする」と言ったことを受け、キス魔を演じる。いじらしい。

秀作「このときようやく気が付いた! 姉さんはいままさに演じているのだ、『酔っぱらったら誰にでもキスする女』を。楠木に思わずしてしまったキスをもみ消すために。そして僕たち家族に、楠木への恋心なんて最初からなかったと嘘の証明をするために」

秀作「そんな不器用な姉さんが大好きだ。好きな相手に直球のキスができず、挙句の果てに初対面のあんなおじさんにキスをせがむことになってしまった姉さんが、僕には愛おしくてたまらない」

普段は「言いたいことがあるならはっきり言え」と、博文と知晶に叱られている秀作。
でも、心の中ではたくさんしゃべっていて、口にはしないが家族の様子をよく見ている。
知晶は「昔から頭が良すぎて損をしてきた人」だ。それでも、近くに1人でも知晶をわかってくれている人がいると思うと、視聴者としては救われる。

知晶の問題は良い形で解決できなかったが、これで秀作以外は自分の恥ずかしいところを家族に晒した。次回は、好意を抱く池江里子(恒松祐里)のために秀作が自分をさらけ出す。
第5話は、2月10日(土)よる10時から放送予定だ。

(むらたえりか)

日テレオンデマンドHuluにて配信中

ドラマもみ消して冬~わが家の問題なかったことに~
出演:山田涼介、波瑠、小澤征悦、中村梅雀、小瀧望(ジャニーズWEST)、恒松祐里、ほか
脚本:金子茂樹 
主題歌:Hey! Say! JUMP「マエヲムケ」(ジェイ・ストーム)
オープニングテーマ:もみ消して冬~24のカプリスfeat.高嶋ちさ子 (作曲ニコロ・パガニーニ)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
演出:中島悟
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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