秀作「僕は姉さんたちから見れば決して出来の良い弟ではなかった。悔しいけど、楠木を可愛がる気持ちも何となくわかる。
だからといって、このまま楠木に負けるわけにはいかない。だって僕は家族だから、血のつながった弟だから」

Hey! Say! JUMP 山田涼介主演のドラマ『もみ消して冬~ わが家の問題なかったことに~』(日本テレビ系列)。
天才医師、敏腕弁護士、エリート警察官の三兄弟が、知恵を出し合いながら家族に起こったトラブルを解決していくドラマ。そう書くと聞こえが良いが、実際におこなう解決策は犯罪行為ばかり。
法を犯すか? ピンチの家族を見捨てるか? 家族の中で居場所のなさを感じている末っ子・北沢秀作(山田涼介)が、毎話決断を迫られる。
山田涼介「もみ消して冬」2話。ジャニーズドラマが描くイマドキの若者の「誰かに認められたい気持ち」
イラスト/まつもとりえこ

第2話 あらすじ


勤めている病院で出世争いをしている長男・博文(小沢征悦)は、院長の愛犬・ジョンを誤って逃がしてしまう。72時間以内にジョンを見つけなければクビだと言い渡され、知晶(波瑠)、秀作に助けを求める。

ジョン捜索のために提案された犯罪行為をしたくない秀作をよそに、新人執事の楠木松也(千葉雄大)が知晶を上手くサポート。家族の中での自分の存在感がさらに薄くなってしまうと、秀作は焦る。

いじらしく可愛い末っ子、でもそれは犯罪


いなくなった院長の愛犬・ジョンが見つからない。
知晶は、影武者として兄弟犬を院長の家に放し、庭の外に出ていなかったことにすればいいと提案する。

博文「そんなこと本当にできるのか?」
知晶「松也に協力してもらえば?」
博文「誰だ松也って」
知晶「楠木よ、楠木松也」
秀作(嘘だろ、嘘だろ姉さん。今週まだ一度も「秀作」と呼んでくれていないのに、あいつのことをもう「松也」と呼ぶんですか!?)

兄弟犬を探すとき、ジョンの兄弟の飼い主に「目をウルウルさせながら粘って」譲ってくれることをお願いした楠木。それが功を奏し、兄弟を譲ってもらえることに。
その実績を評価し、知晶は楠木を信頼するようになってしまう。
「このまま楠木に負けるわけにはいかない。だって僕は家族だから、血のつながった弟だから」という思いで、秀作はまた罪を犯す。
そこまで強く「血のつながった」を押されると、本当は血がつながっていないんだろうかという想像もしてしまうが、どうだろう。1話で父・泰蔵(中村梅雀)が「血のつながった息子と思ったことは一度もない」という冗談を言っていたことも思い出される。

知晶たちに認めてほしくて、作戦に協力するためにいろいろと自分に言い訳をする秀作がいじらしい。


最近の自分→偽造私文書公使、住居侵入、窃盗=犯罪
自分の変化→危険な香り→色気が増す

という自作の方程式をノートに書いては、「確実に僕の体から危険な香りが出始めている。罪を犯したことで、色気が生成されはじめているんだ……!」と自信をつける。
姉の言葉を借りて、「たとえ反社会的なことであっても、人としてこれは正しいという信念があれば、行動すべきだと」と言い、実行犯に手を挙げる。

秀作が承認のために罪を犯している姿を見ると、SNSやYouTubeで「いいね!」がほしくてしてはいけないことをし、炎上してしまう人のことも思い出される。だけど、家族からの承認となると切実な問題に思えいじらしく見えてしまうのは、自分の偏見かもしれない。
アハハと笑って見ていられるドラマではあるけれど、ふと、そのあたりの危うさも気になってきた。


ジャニーズ俳優が演じる「認めてもらえない系男子」


TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)の著者・成馬零一は、本書の中で、
〈ジャニーズアイドルたちの姿には、いまを生きる男の子たちの苦悩と希望が同時にある。
ジャニーズには、男の子の現在がある。〉
(p.221)
と書いている。
『もみ消して冬』の脚本家・金子茂樹の近年の作品だけで見ると、『世界一難しい恋』(日本テレビ系列・2016年)では仕事はできても恋愛が上手くいかない男性を、『ボク、運命の人です。』(日本テレビ系列・2017年)では運命の恋を夢見るピュアな男性を描いてきた。では、『もみ消して冬』の秀作はどうだろうか。


今作で秀作が抱えているのは、「さみしさ、受け入れてもらえない感覚」だ。

秀作「食卓を囲みながら、いつも不安だった。家族の目に僕は映っているんだろうか。僕の存在に意味なんてあるんだろうか」

第1話での活躍によって家庭内ヒエラルキーが変わり、唯一の女性・知晶の地位が上がった。でも、罪を犯してまで父親の危機を救った秀作の地位は変わらない。自分の意見を聞いてもらえたり褒めてもらえたりという、わかりやすい承認が得られない。


でも、家族が秀作をまったく認めていないわけではない。
1話では、父親がいままで身につけることのなかった秀作からのプレゼントを身につけてくれるようになった。2話では、秀作の「ジョンと離れたくない」という思いを家族が汲み取り、ジョンを家で飼うことにしてくれた。

秀作「20年前の自分に教えてやりたいことがもう1つ増えた。優しさにはいろんな形がある。わかりやすい形もあれば、わかりにくい形もある。心配するな、見ていないようで、家族はちゃんと見てくれている」

家を建てたり車を買ったりすれば褒められるような、わかりやすい時代ではなくなってしまった。わかりやすい「男らしさ」がわかりやすく称賛されない中で、認めてもらえない系男子はもがきサバイブしていかなければいけない。その生きる苦悩が、『もみ消して冬』が描く「いまの男の子像」なのかもしれない。

第3話は、1月27日よる10時放送予定。
ベテラン執事の小岩井(浅野和之)と、愛ハムスター・プラトンの失踪。心の拠り所だった2人を、秀作が取り戻しに行く。

(むらたえりか)

日テレオンデマンドHuluにて配信中

ドラマ『もみ消して冬~わが家の問題なかったことに~
出演:山田涼介、波瑠、小澤征悦、中村梅雀、小瀧望(ジャニーズWEST)、恒松祐里、ほか
脚本:金子茂樹 
主題歌:Hey! Say! JUMP「マエヲムケ」(ジェイ・ストーム)
オープニングテーマ:もみ消して冬~24のカプリスfeat.高嶋ちさ子 (作曲ニコロ・パガニーニ)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
演出:中島悟
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ