知晶「この物語は、初めて組織のどん底に落ちた兄と、もともと家族のどん底にいる弟が、副院長を目指し、病院組織と権力に立ち向かう兄弟の絆の物語である」

『もみ冬』、そんなお話でしたっけ。
2月24日(土)放送のドラマもみ消して冬~ わが家の問題なかったことに~(日本テレビ系列)第7話。

「母さん、今年の冬は○○になりそうです」という、いつもの秀作(山田涼介)のモノローグがなかった。代わりに、姉・知晶(波瑠)の真面目で大仰なモノローグ。波瑠の醸す他人事感が良い。
「もみ消して冬」7話。伏線をバキューム回収、設定ひっくり返しに来たか? 山田涼介の顔芸もなしとか!
イラスト/まつもとりえこ

第7話 あらすじ



同僚でライバルの善財一郎(竹森千人)が倒れているのを発見した北沢家の長男・博文(小澤征悦)。第一発見者で犯行動機もあることから、善財を襲った疑いをかけられてしまう。
善財を襲った犯人は、実は窃盗団の一味。しかし、それが判明しても病院内での博文の評判は落ちたまま。自分の人望のなさを痛感し落ち込む博文を元気づけようと、知晶は秀作に励まし役を命じた。

秀作のとけ込み感。顔芸なしのメリハリ


つらいことがあったとき、寒空の下、庭の芝生に転がるのは秀作の専売特許だ。
意中の池江里子(恒松祐里)にフラれた秀作が、いつものように芝生でジタバタしている。すると、勤め先の病院での人望のなさにショックを受けた博文が、先に寝転がっていた。

6話のラストで、善財が倒れているところを発見した博文。
善財と婚約していた女性は、実は窃盗団の一味だった。善財に怪我をさせ、家のものを盗んで逃げたのだ。
これこそ解決すべき事件じゃないのか。でも、問題は博文の人望のなさと副院長争いという超個人的な話に集約されていく。
副院長の座を善財に奪われると心配する博文を、知晶と秀作が励ます。

知晶「最高のオペをしてくれたら、人望なんて関係ないよっ」
博文「その慰め方は違うだろお~」
秀作「もう、姉さん、余計なこと言わないでよ。兄さん、人望あるよ。思っているより人望あるから」
知晶「それ嘘じゃん……」

秀作は、ずっと兄と姉の会話に遠慮して「言いたいことがあるならはっきり言え」と言われていた。
でも、7話まで来てこの兄弟3人の滑らかなつっこみ、つっこまれの会話。知晶に「余計なこと言わないでよ」と制止までしている。秀作が成長している! 家族の会話にとけ込んでいる!

副院長を決めるため、浜野谷院長(柴俊夫)は博文と善財にポイントをつけていた。
結婚すれば200ポイント。
手術の成功には患者のクラスでランクがあり、社長や議員は10ポイント、部長クラスは5ポイント、その他3ポイントほど。海外VIPや有名芸能人、総理大臣で30ポイント。
その他にも、手土産や感謝の言葉など、とにかく「院長の意に沿えば」ポイントがもらえるということらしい。

その情報を仕入れてきたクリーニング屋・手毛綱(児嶋一哉)に、秀作がたずねる。

秀作「あれ? ジョンが懐いたほうを副院長にするって話は……」
手毛綱「そんなことあるわけないじゃないですか」

あんなに苦労した第2話の愛犬・ジョン捜索(2話レビュー)。そのまるまる1話分の労力が無に帰すような手毛綱の一言。脚本の思い切りがすごい。
『もみ冬』はここまで表情押しで来たのに、「そんなことあるわけないじゃないですか」のあとに秀作の顔を映さなかったのも良かった。見ているこちらのほうが、秀作ばりに「ええーっ!」と言いたくなった。言ってしまった。

すさまじい勢いで過去のエピソードを拾った



ジョンの件はともかく、7話は、これまでの『もみ冬』のあれこれを拾っていく怒涛の展開だった。

落ち込んだ勢いで、里子を奪おうとした件について秀作に謝る博文。


博文「実はな、お前に協力する気なんかなかったんだ。もっと良い女が現れたから、お前に(里子を)押しつけた……」

しかし、その“もっと良い女”は善財の差し金で、博文を騙していた。それを聞いて、秀作も「実はさ、その差し金を善財さんに頼んだの、僕なんだあ!」と告白し、謝る。ハグして和解。
些細なことでも、家族のわだかまりとして残りそうなことを、きちんと清算していく姿勢が気持ち良い。

それから、知晶に恋してしまった秀作の後輩・尾関(小瀧望)。7話の最後に、知晶に突然キスしてビンタされる。
「突然のキス」は、4話で知晶が執事の楠木(千葉雄大)に対してしてしまったこと。(4話レビュー)逆の立場になった知晶はどうするのか。

尾関「これは何ポイントですか?」
キス、そしてビンタ。
知晶「なにすんのよ! マイナス100ポイント」
再びキス。
尾関「いまのは何ポイントですか?」
知晶「……200ポイント」
尾関「これでちょうど100ポイント。
おやすみなさい」
楠木「永川のようなストレートじゃ……」

永川というのは、広島カープの投手・永川勝浩のこと(これも4話の会話からの流れ)。
以前、知晶が秀作に、女は強引な男にときめくと助言したことがあった。それは、自分のことだったのか。
過去に知晶がしてしまった「突然のキス」を用いて、尾関との関係を進展させ、それを見ている楠木という構図。勢いで見落としてしまいそうになるが、過去のひとつひとつのエピソードが効いている。

最後に、これまた以前のエピソードとして、博文が里子を家まで送ったという話が出てくる。
でも、博文がそのエピソードを披露したのは秀作のため。そのときに知った里子の家まで秀作を送り(車を運転していたのは秀作だが)、もう一度、里子にアプローチして来いと促す。
「秀作のために何かするなんて」と言っていた博文。自分のために尽力してくれた秀作を認めたのだ。良い話だな……。

突然家に来た秀作のために、里子は玄関のカギを開けた。

部屋に入ると、なぜか寝ている里子。秀作がその寝姿、色っぽく少しだけ開いた唇を認識した。その瞬間、『火曜サスペンス劇場』のCM入りアイキャッチ音楽が流れる。衝撃と動揺の基準がサスペンス。
勢いが失速しないまま突き抜けて終わった7話。この勢いを、8話がどう受け止めるのか楽しみだ。

第8話は、3月3日(土)よる10時から放送予定。

(むらたえりか)

日テレオンデマンドHuluにて配信中

ドラマもみ消して冬~わが家の問題なかったことに~
出演:山田涼介、波瑠、小澤征悦、中村梅雀、小瀧望(ジャニーズWEST)、恒松祐里、ほか
脚本:金子茂樹 
主題歌:Hey! Say! JUMP「マエヲムケ」(ジェイ・ストーム)
オープニングテーマ:もみ消して冬~24のカプリスfeat.高嶋ちさ子 (作曲ニコロ・パガニーニ)
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:櫨山裕子、秋元孝之
演出:中島悟
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
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