連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第24週「見果てぬ夢」第136回 3月14日(水)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太
「わろてんか」136話。ラブストーリー推しになったことを正当化しようとしてないか
イラスト/まつもとりえこ

136話はこんな話


伊能栞(高橋一生)を北村笑店・映画部の顧問にして、てん(葵わかな)は恋を盛り込んだ映画を作ることに。

伊能、風太の家に世話になる


てん、伊能、風太(濱田岳)、トキ(徳永エリ)、飛鳥(岸田結光)が、にぎやかに食卓を囲んでいるところからはじまった。
伊能は一晩考えて、北村笑店で映画をつくることにする。

さらに、風太の家にしばらく住むことに。

そして、北村笑店・映画部が発足。
道具部屋を映画部部室(道具だらけでまるで演劇部部室みたいな)で打ち合わせ。
検閲を出し抜く作品を作ろうと考える。

まずは、キース(大野拓朗)と楓(岡本玲)とアサリ(前野朋哉)との出し抜きコントがはじまる。
136話の葵わかな(てん)は、司会者のようになっていた。

伊能、料理男子になる


風太の家に居候する代わりに、料理をつくる伊能。
「うち、大きくなったら伊能さんのお嫁さんになりたい」と飛鳥もすっかり伊能に夢中。
映画「嘘を愛する女」で長澤まさみ演じるヒロインが、高橋一生演じる謎の男を家に住まわせ、家事をやってもらっていた。高橋一生は、なぜだか、こういう感じが似合う。「生茶」のCMでも手際よく料理をつくっている。
この日は、劇中劇の時代劇の扮装(堀部安兵衛役)もしていて、いろいろ大活躍だった。
ドラマの主軸は、“すべての娯楽が検閲されてもおかしくない世の中だ。
検閲を出し抜く方法に駆けてみたい。”という伊能の熱い心なのだが、それだけだと説教ぽくてしんどいので、主義主張に興味のない視聴者にも見やすいものにする工夫なのだろうか。

妻たちの忠臣蔵


それにしても、今週の「わろてんか」は、まるで、このドラマを恋愛中心のドラマにしたことを、正当化しようとしているように見えて、それが可笑しい。

国の目をかすめるために、忠義の話を借りて、分かる人には分かる恋の話にしようと考えた映画部一同。
「忠臣蔵」を題材に「北村笑店総出演のお笑い忠臣蔵」をやろうとてんが思いつく。
NHKが過去に集めた(であろう)「忠臣蔵」の資料をカメラがなめていく。

「妻たちの忠臣蔵」というと、橋田壽賀子先生の「女たちの忠臣蔵〜いのち燃ゆる時〜」(79年)を思い出す人は少なくないだろう。こちら、目下、大河ドラマを視聴率的に脅かす存在のTBS の日曜劇場(当時は東芝日曜劇場)で放送されたスペシャルドラマだった。文字通り、女性側から描いたドラマだ。忠義のために命を賭ける男たちを見守り、そして残されていく女たちの物語だ。

NHKだと、大河ドラマ「峠の群像」(82年)は、庶民目線の大河として、赤穂浪士たちを企業戦士として捉えて描いたものだが、「不破さま〜」と樋口可南子が、小林薫演じる不破数右衛門を慕う姿とか、堀部安兵衛の妻の献身とか女性視点が手厚く描かれていた。若手俳優もたくさん起用され(いまや文学の香りのする女優となった小泉今日子なんて、未だベタベタなアイドル演技だった)、青春群像的なところも多く、大河ドラマはお年寄りのドラマと思って興味のなかった私が子ども心にハマった大河である。いま思えば、当時も、こんな大河なんて・・・と眉をひそめる人はいたんじゃないだろうか。
実際、NHK好き、大河好きの祖父はあまり好んでいなかった。ものづくりとは、こうして、都度都度、何か新しいことに挑み、何かを切り捨てていくものなのだと思う。
で、「峠の群像」の脚本を書いた冨川元文は、その2年後、朝ドラで、戦中、戦後の大阪の漫才の世界を描いた「心はいつもラムネ色」を書くのだ。何か、不思議なつながりを感じたり感じなかったり。

いよいよ通天閣


てんが雑誌を見ていたら、自分の「過去の悪行」について書かれていて、びっくり。誰にも見せずにこっそり確認しようとする。いつもは、誰かが記事を見つけてくるのに、こんなときだけ・・・。
そして、通天閣が売りに出されるという情報が風太からもたらされる。
モチーフになった吉本せいが通天閣を買った伝説は有名で、いよいよそれが描かれるらしいが、女社長の悪行と通天閣買収にまつわる実際のお話は、真実はよくわからないながら、なかなか香ばしいようで、ドラマではそれをどのように描くのか。ここは脚本のお仕事。吉田智子先生の冴えに期待する。
(木俣冬)
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