連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第24週「見果てぬ夢」第134回 3月12日(月)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太
「わろてんか」134話。もしかして「わろてんか」も検閲されているのか
イラスト/まつもとりえこ

134話はこんな話


慰問や寄付が認められて、てん(葵わかな)は国から勲章をもらった。

てんが勲章を


月曜の朝、最初に、リリコの歌(いつもの「アラビヤの唄」)が流れたので、ちょっと明るい気分になったが、
すぐに、戦争で娯楽への検閲が厳しくなって・・・という暗い話題に。

北村笑店は、外国だけでなく国内にも慰問に行くようになる。

社内の芸人の香盤表に寄席だけでなく「わろてんか隊」の欄ができていた。
もうずいぶん老人であろう、亀井(内場勝則)が内地慰問団の団長として働かないとならないほど、
手が足りないらしい。

そんななか、てんが国から勲章をもらうことになった。慰問団や寄付がお国に貢献したと認められたのだ。
新聞には「女太閤」と書かれ、てんは喜びながらも「女だてらに」と言われている気がすると、少し気にする。
「わろてんか」のてんは、大志を抱くことなく、あくまでも亡き夫の夢を叶えるために行動しているように描かれている。
女が生きづらい社会を変革しようというような考えはまったくもってない、とてもニュートラルな人物なのだ。そんな細腕の彼女を、風太(濱田岳)や栞(高橋一生)たちが支えている。
着物のご婦人だからと、代わりに風太が胴上げされたのは、影で支える風太へのねぎらいのようで、良かった。

栞は検閲を


てんから勲章の報告を受けた栞(高橋一生)は、
「ぼくのつくる映画は国から目をつけられて困っているからねえ」と苦笑い。

栞(高橋一生)の部屋に、「キースのあきれた恋道中」というポスターが飾ってあり、
キース(大野拓朗)が映画主演と北村笑店でも盛り上がっていたこともあって、検閲対策に、たわいないお笑い映画をつくったのかと思って視ていたら、なんと、この映画が厳しく検閲される対象に。
社会風刺や男女の劣情を催す表現が引っ掛かって、上映中止になってしまった。


内務省の検閲官(伊藤正之)は、接吻が連想されるだけでも「カットしておきました」と言う。
「観た者が自由恋愛を謳歌したいと思ってしまう可能性があります。
 西洋風の軟弱で退廃的な恋愛は命を惜しまず闘うべき若者に悪影響を及ぼしかねません」
と、キース、渾身のシーンばかりが切られてしまう。

次々、検閲にひっかかり、栞の会社は経営が苦しくなっていく。

その頃、東京の新世紀キネマの社員・工藤(栗原英雄)が、北村笑店に提携の話を持ちかけてきた。
風太(濱田岳)たちはうちでも映画をやりたいと盛り上がっていたものの、てんは、伊能フィルムと
提携しているからと断る。

てんが伊能フィルムに電話をかけると、栞は会社を辞めていて・・・で、次回に引っ張る。

工藤役の栗原英雄と検閲官役の伊藤正之、さらに、山下役の玉置孝匡も、大河ドラマ「真田丸」に出ていたことから、三谷幸喜といえば、戦中の検閲を題材にした傑作「笑の大学」がある。映画にもなっているが、舞台が有名。
でも、もとはNHKのラジオドラマだった。

さて、134話を視て思ったのは、
「わろてんか」のダイジェスト感(話と話の間が抜けているところをナレーションで繋いでいく)が強いのは、もしかして、検閲のうえ、カットされているのだろうかということだった(冗談です)。

今週は、団真編で腕をふるった、「真田丸」にも参加していた保坂慶太演出回。
栗原英雄や伊藤正之の表情がやたら迫真であった。検閲されることなく、渾身の演出を見せてほしい。
保坂回のレビューわろてんか56話はこちら
(木俣冬)