連続テレビ小説「半分、青い。」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第1週「生まれたい!」第4回4月6日(金)放送より。 
脚本:北川悦吏子 演出:田中健二
「半分、青い。」5話「川挟んで、名前大声で呼び合うとか、愛やないの?」
連続テレビ小説 半分、青い。 Part1 (NHKドラマ・ガイド) NHK出版

5話はこんな話


楡野鈴愛(矢崎由紗)は大きな川(三途の川)をわたる糸電話を成功させようと、律(高村佳偉人)に協力を求め、律は鈴愛の天敵・ブッチャー(大竹悠義)に声をかける。
鈴愛はもうひとり、衣料品店の娘・菜生(西澤愛菜)も誘う。


ひとは見かけによらない


鈴愛、律、ブッチャー、菜生 これで梟町の仲良し4人が揃った。

ブッチャーこと西園寺龍之介は、渡し船に乗るお金を調達するための「金づる」だった。
西園寺家は萩尾家以上のお金持ちらしく、お母さん富子(広岡由里子)は大きな外車に乗り、高価そうな犬を飼っている。
俺は友達が少ない。あいつくらいしか思い浮かばない・・・って、さみしい律くん。
でも、そんな彼に、英会話教室さぼってつきあってくれるブッチャーは、4話の初登場では感じ悪かったが、意外にいいやつのようで。
4話で、つくし食堂で注文を間違えてニラレバ炒めにされたお客さんが「ひとを見かけで判断しちゃいかん」と言っていた台詞が、そのままブッチャーに生きてきそうだ。

「ふぎょぎょ」は流行るか


朝ドラでたまに出てくる、決め台詞。
ドラマの舞台である地方独特の言葉や、作家の創意工夫による造語などが、頻繁に使用される。
「じぇじぇじぇ」(あまちゃん)「びっくりぽん」(あさが来た)はわりと浸透し、「なんかなんかな〜」(べっぴんさん)はネガティブなことを言いたいときに使えた。「どうしたもんじゃろのう」(とと姉ちゃん)はああ、そんなのあったっけって印象(あくまで個人的ですが)。狙うと滑るので、取扱い注意事項だ。
「半分、青い。」は、「ふぎょぎょ」と「やってまった」を多用しはじめたが、果たして馴染むだろうか。

流行りといえば、
鈴愛と菜生が、松田聖子の「青い珊瑚礁」を歌い、「ザ・ベストテン」「黒柳徹子」などのワードを語り、
80年代のなつかし感を煽った。

盛り込まれる情報は当時の風俗的なことだけでなく、鈴愛の成績の悪いこと、でもテストの裏に描いた母の似顔絵がうまいこと、仙吉(中村雅俊)は廉子(風吹ジュン)がなくなってさみしいこと、昔、ギターを弾いていたことなど、個人情報も会話のなかに描き込んで、ドラマの世界観が急速に立体化していく。
ただ細々ネタを仕込んでいるわけでもなく、廉子(風吹ジュン)が亡くなったことで起こる家族の変化と、それをなんとかしたい主人公の奮闘。友達を「ベストテンごっこより楽しい」と喜ばせる大胆な発想は、のちの主人公の、アイデアで勝負していく生き方につながるのだろうと思えわせる、みごとな導入部になっている。

なんといっても、真骨頂なのは、糸電話が通じる場面だ。

愛の告白?


こっち側に律とブッチャー、あっち側に鈴愛と菜生。100メートルの向こう岸(数字のディテールがあるのとないのとでは受ける印象が違う、もっともドラマなんだから見れば距離がすごいあることがわかるんだけれど)まで糸電話を渡すことに成功して、声が聞こえるか試すとき、「律〜!」「鈴愛〜!」と名前を呼ぶ。
しかも、この場面、離れたところから川面すれすれを通ってぎゅーんと距離が縮まる気持ちよさをカメラの動きで見せてくれた。
「愛の告白?」
「川挟んで、名前大声で呼び合うとか、愛やないの? 違うの?」とブッチャー。
律にはとんでもない話のようだが、同じ日に同じ病院で生まれ、母の顔の次に認識した相手であるふたりの
繋がりをこれでもかと見せる場面になっていた。
言いたいことはただひとつ、これ、なんだろうなあと思う。

でも、きれいにまとめ過ぎず、締めはわざわざCGを使っての、カエルのウインクだった。
(木俣冬)
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