第4週「夢見たい!」第20回4月24日(火)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土井祥平
20話はこんな話
ぎふサンバランドも、鈴愛(永野芽郁)の恋も頓挫し、夏休みが近づいて来た。
律(佐藤健)やブッチャー(矢本悠馬)は受験に勤しみ、仲良し4人組で最後の夏を遊ぶことができない。
そして、9月。鈴愛は、就職試験を受けることになる。
ドラマに合わせてこんなニュースも
「半分、青い。」の前に放送されるニュース番組「おはよう日本 関東版」で、4月24日、「耳で聴かない音楽会」のニュースがあった。
振動や視覚で音楽を楽しむ装置が開発されていて、抱くと振動したり光ったりする装置や、着ると全身に音を感じる服など、いろんなものが紹介された。実際、音を体験したこどもたちが、たちまち顔を輝かせたのが印象的。振動や光で音楽を楽しむ発明、素敵だなあ。
音の振動を出すため、学生時代に合唱で活躍したらしい高瀬アナが歌ってみる。
「おはようにっぽんだよー♪」
あとでわかったのは、これは星野源の「アイデア」の替え歌だったそう。みんな気づかず、はじらう高瀬アナ。
「半分、青い。」20話はこのあと、はじまった。
サトエリの困り顔
ぎふサンバランドの建設は中止に。
バブルのおわりがはじまっていた。
上司と同僚は帰ってしまい、中途入社で、ホテルのランクも低いところに泊まらせられこき使われていた瞳(佐藤江梨子)だけが手土産をもって、商店街に挨拶にくる。
彼女の誠意に免じて、仙吉(中村雅俊)は五平餅をふるまう。
佐藤江梨子は、困り顔が似合う。彼女が起用された決め手は、ボディコンが似合うスタイルの良さ及び、この困り顔じゃないだろうか。
こばやんに拷問したか?
永野芽郁も困り顔が似合いそう。彼女演じる鈴愛は、こばやんこと小林(森優作)(ナレーションまで「こばやん」呼びに)に通学路を変えられていた。
あとから描かれる、お母さん晴(松雪泰子)だけが、恋の終わりに気づいてなかったことが可笑しいような切ないような。
恋の終わりを引きずって、鈴愛が授業中に筆談をしていると、先生(尾関伸次 岐阜ことば指導も)に見つかってしまう。
先生が手紙の内容をかいつまんで「こばやんに拷問したか?」は傑作。
授業はシェイクスピアの「ハムレット」。有名な、to be or not to be,that is the question の台詞を「悩んで悩んで悩みまくって憂鬱っていうのがこの戯曲の・・・」とものすごくざっくり教えている先生。「こばやんに拷問」「悩みまくって憂鬱」と、基本、ざっくり省略する、まるでネットの見出し職人のような人だ。
高校3年生にとっては、進学か、就職か、それが問題だ で
律とブッチャーは進学、菜生(奈緒)も専門学校へ、鈴愛だけ就職。
仲良したちが離れていく・・・。
少女漫画チックな表現
鈴愛の笛の音を「いつになくかみしめるように聞きました」とナレーション(風吹ジュン)された律は、
成績が芳しくなく、東大を目指して受験勉強に集中しないとならず、夏休み、鈴愛とあまり遊べなくなりそう。
そこで、少女漫画「いつもポケットにショパン」を鈴愛に貸す。
これまで父・宇太郎(滝藤賢一)の影響で、少年漫画ばかり読んでいた鈴愛が、はじめて少女漫画に触れて、その繊細な感情描写に影響を受け始める。
「(漫画を)貸して返してを続ける限りは ほんの5分でも私と律が会えるから?」
「秋風羽織チックに言えば 私が寂しくならないように だと思う」
などにはじまって、20話の後半は、少女漫画ふうモノローグで彩られていく。
「私がこどもでいられる最後の夏なのに」
「私のなかに大人がなだれこんでくる」などなど・・・。
だが、まったく詩的でない“「うちの子はやればできる」は世界中のお母さんが信じている神話”も印象的だった。
秋風羽織とくらもちふさこ
12話、こども時代のすてきなシーンの舞台となった川べりで、鈴愛は秋風羽織を読む。
花火、浴衣、線香花火が落ちて、散る
学校で、菜生と走っていくところは 半分影で、半分光。
叙情的な夏休みがあっという間に終わって、9月、
農協に面接にいくも、面接官の前で転ぶ。「早速 やってまった」
このドジっ子描写も少女漫画チック。

幼馴染の麻子と季晋。ふたりがいったん離れ離れになって、再会したとき、季晋は変わってしまっていた。
たくさんの女子を夢中にさせた傑作少女漫画。
くらもちふさこは、感情が音楽のように流れていくさまを言葉と絵にする天才作家だ。
「いつもポケットにショパン」は実在する少女漫画だ。
少女漫画界のレジェンドのひとり・くらもちふさこの名作のひとつ。
それを「半分、青い。」では秋風羽織(豊川悦司)が描いているという設定にしている。
クレジットでは、劇中漫画原作(秋風)となっていて、これはある意味、名匠・くらもちふさこが、秋風羽織の影武者になっているということ。
「半分、青い。」の世界は、半分、ほんと。で 半分、作り事。そこが楽しい。
(木俣冬)

くらもちふさこは 北川悦吏子のヒットドラマのノベライズの表紙の絵も描いていた。