未解決の女・警視庁文書捜査官』(テレビ朝日・木曜21:00〜)第5話。

今回の事件は、医療ミスをきっかけにはじまる殺人事件ということで、テレ朝が得意としている刑事ドラマ+医療ドラマの最強コンボ!

演出の田村直己はテレ朝のドル箱シリーズ『Doctor-X 外科医・大門未知子』も担当しているということで、手術シーンにも力が入っていた。

「未解決の女」「ブラック・ペアン」への対抗心か?ペアン鉗子体内置き忘れ事件発生!5話
イラストと文/北村ヂン

『ブラック・ペアン』つぶしか!?


5年前、松河総合病院の放射線技師が刺殺された。自分の血で書いた「も」というダイイング・メッセージが残されていたが、いつもの通り何だかんだで未解決事件に。

これが再捜査となったきっかけは、厚生労働省の官僚・須賀勇蔵がゴルフの最中に腹部大動脈瘤破裂で死亡した事件。

司法解剖した結果、5年前に松河総合病院で大腸がんの手術を受けた際、モスキートペアンと呼ばれる小型鉗子が体内に残されたままだったことが原因だと判明する。

松河総合病院では手術後、体内に異物が残存していないかチェックをするため、レントゲン撮影をする決まりがあるのだが、須賀の手術の際、担当したのが中尾だったのだ。しかも刺殺されたのは須賀の手術から1週間後なのだ。

ペアン鉗子の体内置き忘れ事件がテーマということで、現在放送中のTBS『ブラック・ペアン』に思いっきりかぶせてきたなぁーという印象。


「TBSが医療ドラマやってるらしいけどな、ワシら(テレ朝)は負けへんでぇ〜!」という声が聞こえてくるようだ!?

よく分からないけど、何となくハートフルな話


今回も「事件の構造はややこしいわりにトリックは大したことない、そして最後は人情で解決」という本作お馴染みのパターン。

本当に話がややこしかったので、1回見ただけではよく分からなかった。ちょっとまとめてみよう。

・須賀の手術の執刀医であった松河総合病院の院長・松河正一(植草克秀)は右手が震えるというイップスにかかっており、実は弟の森次(宮迫博之)が途中から執刀していた。

・ペアン鉗子は、須賀を恨んでいた中国人医師(上野なつひ)がわざと体内に残したもの。

・森次はペアン鉗子に気付いていたが「コレで兄が失脚したら自分が院長になれるかも……」と思い、見て見ぬ振りをした。

・手術後のレントゲン撮影で鉗子の置き忘れに気付いた中尾が、執刀医だった院長の松河正一(植草克秀)を脅すが、弟をかばうために中尾を刺殺。


・ダイイング・メッセージは、当時、中尾が借金をしていた闇金業者・茂木に犯行を押しつけるため、正一が書いたものだった。

・「も」の文字は、筆跡から考えるに左手で書かれたもの。しかし正一は右利き……と思いきや、イップスにかかっていたため左手で書いていたのだ。

すべてのスタートとなったペアン鉗子の体内置き忘れ事件からして、特に隠蔽工作するなどのトリックもないまま、ただただコッソリと鉗子を入れた……という大ざっぱな犯行。

中尾の刺殺に関しても、その場の勢いで刺しちゃっただけで、犯行を隠すためにやったことといえば、茂木に疑いの目を向けさせるために「も」って書いたことくらい。……それなのに、なんで5年前の警察は事件を解決できなかったのだ!?

本来の執刀医である兄を失脚させるため、鉗子の置き忘れを見て見ぬ振りをしていた森次にしたって、ちょっと調べれば森次が代わりに執刀していたことは分かりそうなもの。


そうなったら自分の立場の方がマズイのに、進んで捜査に協力したり、のん気に矢代を食事にさそったり……。ちょっと脇が甘すぎないだろうか。

……などなど、例のごとくツッコミどころがいっぱいあったが、「本当は全部弟のことを思ってやったことだ」という植草くん(老けたねぇ)のいい話と、平井堅のいい歌声でごまかされてしまった。

このドラマに関しては、細かい謎解きに目くじらを立てるより、何となくハートフルな話だったな……と感じるというのが正しい見方だろう。「Don't think feel!」だ。


謎解きの強引さはいつものことなので置いておくとして、今回は矢代朋(波瑠)や鳴海理沙(鈴木京香)たちに関する情報がチョイ出しされており、そっちの方が気になってしまった。


まず、捜査中の大ケガが原因で文書解読係に異動してきた矢代だが、追いかけていた犯人から銃で撃たれたケガだったということが判明。

初回、『SPEC』の当麻紗綾のように片腕を三角巾で吊して登場していたので、「萌えを演出するアイテムなのかな?」と思っていたのだが、結構ヘヴィーなケガだったのね。

そして、そんな矢代に恋心を抱いているらしい岡部守(工藤阿須加)に向かって鳴海が言った、

「まったく脈がないってことはないかも。マジメくん(岡部)の前だけよ、あの子が自分を『自分』と呼ばず、わざわざ『私』と言っているのは」

という見立てには、どんな事件の謎解きよりも「アーッ!」と思わされた。確かに録画を見返したら、第1話から「私」って言ってる! かわいいとこあるじゃないの、矢代ちゃん。

岡部はツンデレ気質なのか、ヒドイ態度ばっかりとっているので、いまひとつ応援したいという気持ちは湧かないのだが、ふたりの恋の進展にも注目だ。


また、どうも鳴海に好意がありそうな草加慎司(遠藤憲一)の過去も明かされていた。妻子に逃げられており(バツイチなんだ!)、さびしさのあまり中国語講座に通っているんだとか。

鳴海も、イヤだイヤだと言いつつもド直球でぶつかってくる矢代に心を開いてきたのか、「あたなに教えてあげてもいいわ。私がなぜ警察官になったのか」なんて唐突に言い出した。……というところで次回につづく。

事件よりもこっちの方がよっぽど気になるよ!

次回は『警視庁・捜査一課長』からのゲストとして小山田大介(金田明夫)も出るみたいだぞ。

(イラストと文/北村ヂン)