
特集には、田中の“ムダに良い体”が堪能できるグラビアページも用意されている。
なにしろ注文が殺到し過ぎ、発売日を迎える前から増刷が決定していたとのこと。発売前の予約だけでミリオンセラーが確定していたビートルズの『Let It Be』のようである。
田中圭がデビューを果たしたのは2000年の任天堂「マリオパーティ3」CMで、注目を集めたのはドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系)に出演した2003年。本人の中に浮き沈みはあったかもしれないが、傍から見ていると絶え間なく露出し続け、確実に結果を残す堅実な役者というイメージがある。
加えて、端正なルックス。巷では「2枚目過ぎない」と評されることもあるようだ。しかし、私は「どこがだよ!」と異を唱えたくなってしまう。そういえば筆者、多くの人と同様に田中と向井理の見分けがつかず混乱した経験がある。この事実からして、2枚目過ぎないわけがない。しかも、あの異常な愛くるしさ。黒澤武蔵の言葉を借りると、存在が罪だ。
主役歴のほとんどない田中圭にとって『おっさんずラブ』とは
容姿を売りにしていくか、演技力を売りにしていくか。前者の戦略で火が点けば、確かに爆発力が期待できるだろう。
でも、今年でキャリア18年。もう、“溜め”は十分だ。世に再発見されるべき地力はすでに蓄えている。
特集のタイトルは、「いまこそ、田中圭」。早過ぎず、遅過ぎず、役者としてのレンジが備わる33歳で鮮やかなブレイクを果たした田中。「主役を演じさせていただけることなんてほとんどない」「これまでいただいてきた役のほとんどが2番手、3番手」と語る彼の大爆発だからこそ、こんなタイトルになった。
今回、ゆかりのある周辺人物が田中圭についてコメントしている。
「才能のある子だから、いつか必ず世間が彼の良さに気づくと思っていたけど、それが想定より早かったのは喜ばしいことです」(鈴木おさむ)
「私が言っていたのは、『圭には実力があるから30歳を超えてからが勝負じゃない?』ということでした」(白井晃)
友人のko-dai(Sonar Pocket)の残した証言は、以下だ。
「『おっさんずラブ』が始まる少し前に会ったときに、“次の作品はすごいものになる”“代表作になるかもしれない”というようなことを彼にしてはめずらしく言っていたのが印象的で」
撮影期間中、牧凌太役の林遣都に「この内容が届かなかったら、俺役者辞める」と田中が告げていたことは有名。
――これまでのインタビューで「(観る人によって違うと思うので)代表作はない」とおっしゃっていましたが、『おっさんずラブ』はどうですか?
田中 今までそうは言ってきましたけど、まあ……できちゃいましたね。『おっさんずラブ』は、さすがに田中圭の代表作になったんじゃないですかね。
視聴者という立場にいながら、田中に共感している。こんなにハマった連続ドラマは、いまだかつてなかったからだ。特集に寄稿したライターの横川良明氏は、『おっさんずラブ』放送期間を“奇跡の7週間”と表現、以下のように振り返った。
「今でも何だか夢を見ていたみたいだ。どうしてあんなに熱狂していたのか自分でもよくわからない。画面の中のふたりにドキドキして、どうかふたりに幸せになってほしいと絵馬まで書いて、最終回が終わった直後は世界中の人たちと今すぐハイタッチしたいくらいだった」
「春田役で好きになってくれた人にガッカリされちゃうかもしれない」
発売前に特集号の増刷が決定し、2年前に発表された写真集『R』と『KNOWS』は重版した。まさに、確変中の田中圭。だからこそ、注目は今後。それは本人も自覚していた。
「この先、春田役で好きになってくれたみなさんの期待する人物像と違うキャラクターを演じることもあると思うんです。それを観て、びっくりしたり、あるいはガッカリされちゃうこともあるかもしれませんが、それは役者を続けていく上では避けられないのかな、と」
街で「田中圭だ!」と言われるより「春田だ!」と言われる方がうれしいと田中は語るが、両者は別物である。役者としては、今後が正念場だ。
「正直、ロス状態です。本当にいい現場だったので。でも、今日この後に打ち上げがあって、明後日からは次の現場に入るので、ここで一区切りです」
『おっさんずラブ』最終回レビューのコメント欄で、読者の方がこんな感想を書き込んでくれた。
「このドラマの俳優さんたちの演技と思わせない自然体な表情や立ち振る舞い。本当に春田の日常を切り取っているような錯覚に陥りました」
『おっさんずラブ』を追い続けた人全員が同じ気持ちだと思う。できる役者、できるスタッフ、できる脚本家によって作り上げられたこのドラマ。だから、田中圭という役者を応援している。
最後に、未練たらしいことを言わせてほしい。軽はずみなことを言ってるかもしれない。
(寺西ジャジューカ)