根本カホコ(高畑充希)と麦野ハジメ(竹内涼真)の結婚から1年。

2時間ドラマにしては問題多すぎるよ!
超・過保護に育てられてきたカホコは両親のもとから離れ、新たな生活をはじめたものの、家事がダメダメで家の中がメチャクチャに。
それでも、「みんなを幸せにするような仕事をしたい」という夢を実現するためにはじめた、子どもたちのための施設「カホコハウス」で奮闘していた。
ザ・世間知らずだった頃から比べると、それなりに成長をしているように見える。
……が、その他の親族たちは、ぜーんぜん成長していない! 相変わらず問題出まくりなのだ。
従兄弟のイトちゃん(久保田紗友)は、ケガのため夢だったチェロ奏者への道を断たれたが、新たに指揮者になりたいという夢を見つけていた。
しかし、そのために留学したいと考えており、例のごとく両親から大反対を受け、家族仲がメチャクチャ険悪な状態に。
盗癖のあった叔母・環(中島ひろ子)は子どもが欲しいと考え、代理母出産を検討していたが、そのことで夫である衛(佐藤二朗)と意見が分かれてもめているようだ。
そして父親・正高(時任三郎)は、社内でリストラ担当にされてしまったことを期に会社を辞め「館山でロッジでも買ってゆっくりと余生を過ごしたい」なんて眠たいことを言い出していた。
カホコがいなくなった家庭では、妻・泉(黒木瞳)との会話もなくなってしまい、離婚寸前の状態に。
「カホコハウス」の方も、近所に認可保育園ができたことで子どもたちが激減。経営がかなりヤバくなっており、カホコと一緒に経営をしていた叔母・教子(濱田マリ)は完全にやる気をなくし、ビルを売り払っちゃおうと考えている。
そして、やはり一番の問題児は夫・ハジメだ。
結婚したっつーのに(美大は卒業したのかな?)相変わらず「ピカソを超える」なんていう夢見がちなことをぬかしているのだが、コンクールには一回も入選していないという、本当に才能あんのかよ状態だ。
一応、バイトはしているものの、家事はカホコに任せっぱなし。それでいてカホコが家事に失敗するとツッコミを入れるというクソ野郎なのだ。
さらに、「カホコハウス」に出入りしている子ども・タモツくんの家庭の問題も勃発。
タモツは、児童養護施設に預けられているものの、完全に親から捨てられていたわけではなく、母親(映美くらら)に男ができるとタモツを置いて出ていき、男に捨てられると戻ってくる……というのを繰り返していたのだ。
過保護とは正反対の育児放棄親だ。
こんな数々の問題を解決するため、例のごとくカホコががんばる……のだが、2時間ドラマでは明らかに時間が足りない! 問題が多すぎるよ!
「愛と夢」は両立できるのか!?
問題解決の糸口として、カホコは父・正高の「せめて孫でも出来ればなぁ〜」という言葉を真に受けて、子どもを作れば両親の離婚を回避できるのではないかと考える。
しかしハジメの方は、子どもを持つ覚悟ができていないのか、
「子どもはな、仲直りの道具じゃねえんだよ」
とかなんとか、もっともらしいことを言って子作りから逃げる。挙げ句、
「オレが就職する。そうすればママ(泉)からも文句言われないし、お前も安心して家族や子どもたちの面倒を見れるだろう」
なんて言い出した。
見ているこっちからすると、「おう、就職しろしろ! ちゃんと働け!」ってなもんなのだが、カホコはハジメの才能を信じており、画家になるという夢を捨てることには大反対なのだ。
自分から苦労を背負い込む子だねぇ、カホコ。
今だってバイトしながら絵を描いているんだから、就職して働きながら絵を描くのでもいいと思うけどな……。
今回のスペシャルドラマ版は「ラブ&ドリーム」というサブタイトルの通り、「愛と夢は両立できるのか」ということがテーマとなっているようだ。
イトちゃんの指揮者になりたいという夢、環の子どもが欲しいという夢、正高のロッジでのんびりしたいという夢、ハジメの画家になりたいという夢……。
夢を追うのは素晴らしいが、実現するためには様々な壁が立ちふさがる。
「愛」というと抽象的なので、「家庭と夢は両立できるのか?」と言い換えた方が分かりやすいかも知れない。
いきなり夫が「館山でロッジをやりたい」とか言い出しても、同意する妻はそうそういないだろう。
そんな色々とアレな夢でも、カホコはいい形で実現してもらいたいと願っている。それがカホコ自身の夢ということなのだ。
「みんなの夢を実現してもらいたい」という夢を実現するために、カホコはピュアネスのみを武器に突っ走っていくが、どれも一筋縄ではいかない複雑な問題ばかりで、追い詰められてしまう。
そこにあらわれたのが、亡くなった祖母・初代(三田佳子)の霊。
「過保護に育てられたおかげで後悔したこともないし、愛と夢を100%信じられるようになったのよ。そういうカホコがいるからみんなも元気が出てがんばろうって思うんだから」
過保護を全肯定する発言。今の三田佳子の口から言われると若干モヤッとしてしまうが、この初代の登場以降、問題は一気に解決していく。
問題が多すぎて、解決方法がアッサリしすぎ
相変わらずカホコは問題に向かってウワーッと突進してアワアワしているだけなのだが、あとは周りにいる人たちが勝手になんとかして(カホコの心動かされたということか?)問題が嘘のようにサクサク解決していってしまう。
ドラマ全体の構成としては、前半に問題がボッコボコ噴出し、初代の出現を境に一転、後半はドドドッと解決していきまくり。
あれだけこじれていた問題が、チョロッと気持ちを伝え合うだけで解決してしまったりして、見ていてテンポはいいのだが、解決に至るまでのプロセスがスッポリ省かれていて「いやいや、そんなに都合よくいかないだろう〜」と思ってしまう。
コレ、遊川さん的にはもともと連ドラとして構想していた内容だったんじゃないだろうか?
その要素をムリヤリ2時間に詰め込んでしまった感がハンパない。
連ドラ版と同じ人数のキャラたちがみーんな問題を抱えているのを2時間で解決するというのは明らかにムリ。
……とはいえ、問題を抱えた人たちがワチャワチャやっているというのが本作の魅力のひとつとも言えるわけで、そういう意味では連ドラで、それぞれの問題をじっくりと深く掘り下げて見たかったところだ。
『過保護のカホコ2019』もあるのかな?
嵐のようにドドーッと問題が起こり、再び嵐のようにドドーッと解決していく展開の速さで、若干ポカーンとさせられてしまった本作。
しかし、カホコの顔芸が凄みをましていて、あっちゃこっちゃ行ってドタバタ大騒ぎしているのを見ているだけでニヤニヤしてしまった。
ストーリーはボンヤリしているのに、見ていてなんとなーくほっこりできるというのはカホコという絶妙なキャラクターゆえだろう。
タイトルに「2018」とついているのも、「2019もやるぞ!」という意志のあわられなのではないだろうか。
「なんなら連ドラでやるぞ」という遊川さんお意気込みがビンビン伝わってくる。
最後の、カホコ夫婦に双子が誕生! 名前は「愛」と「夢」! というオチも、興味の対象が娘から孫たちへとうつっていった両親による「過保護の双子」への布石ともいえるだろう。
また、この家族がワチャワチャやっているのを見せてもらいたい!
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
・Hulu
『過保護のカホコ2018ラブ&ドリーム』(日本テレビ系列)
脚本:遊川和彦
演出:日暮謙
主題歌:星野源「Family Song」(スピードスターレコーズ)
音楽・平井真美子
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:大平太、田上リサ
制作協力:5年D組
製作著作:日本テレビ