先週放送された第3話の視聴率は少し下がって15.9%。それでもすごい数字だ。「ヤメ検」こと大鷹弁護士(勝村政信)が実質主人公だった地味さも視聴率に影響していたかもしれない。

浮気、DV、保険金殺人「女の敵」を弁護せよ
第3話で小鳥遊翔子(米倉涼子)率いる京極法律事務所が弁護を引き受けたのは、多額の生命保険がかかっていた妻を殺害し、愛人の存在も発覚して「女の敵」と世間からバッシングされていた浅野(桐山漣)という男。なりゆきで不利な弁護を押し付けられたのは大鷹であり、翔子は京極法律事務所の宣伝と引き換えに彼への協力を買って出たというわけ。
浅野は、犯行時刻には新宿にいたと無罪を主張していた。アリバイを証明するものは何もなく、逆に愛人からはDVも証言されてしまう。そんな中、浅野は偶然、高校の美術教師だった蟹江(岡本信人)とその妻とすれ違っていたことを思い出す。
さっそく大鷹と翔子は浜松にある蟹江の自宅に出向くが、蟹江は学校の裏山で絵を描いていたと主張。蟹江の妻の光代(原日出子)も夫が新宿の歌舞伎町に出向くわけがないと言う。
妻の存在がやたら強調されているこの時点で、「あ、この男は浮気していてすっとぼけているんだな」ということに気がついた視聴者も少なくないだろう。なお、蟹江宅の軒先から見事な富士山が見えたが、浜松から富士山はあんなに大きく見えない。
勝村政信大活躍! 米倉涼子は?
法廷は検事の片山(矢島健一)と彼と結託する裁判長の榎本(大河内浩)のペースで進み、大鷹はオロオロするだけ。ところが、そこへ元ストーカーのパラリーガル・馬場(荒川良々)からの報告が入る。
その後、浅野が殺害現場の近くにいる写真を投稿していた真壁(村上航)という男が画像に細工をしていたことが判明。翔子は妻の光代が杉田に嫌悪感を示しているのに気づき、杉田に「蟹江は同僚の吉沢(小柳美季)とも浮気している」とカマをかけたことで(蟹江が吉沢と一緒にホテルから出る写真を見せるが、本物なのか合成なのかよくわからない)、法廷に検察側の証人として出てきた蟹江を妻と愛人が問い詰める展開に。結局、蟹江の証言は嘘だったことが明らかになり、浅野の無罪は証明された。
先にも述べたが、第3話はひたすら大鷹役・勝村政信のフィーチャー回だった。いつもは傲岸不遜なのに法廷で矢面に立たされるとうろたえるばかりの勝村政信。まわりの人が誰も傷つかないように弁護をしたい優しい勝村政信。家のローンを返すためにビル掃除のアルバイトをしてコケる勝村政信。別れた娘との写真を見てしょぼくれる勝村政信……。勝村政信ファンは大満足だったに違いない。
ただし、その分、主人公の翔子の活躍が減ってしまった感がある。
高視聴率だが突き抜けられない理由は?
第3話まで見てきて、『リーガルV』というドラマの特徴が見えてきた。とにかく逆張りは正義。世間の大半が先入観で叩き、検事や判事もクロだと決めつけているものを法廷で助ける、というコンセプトのようだ。
第1話では痴漢の容疑をかけられた男が実は無罪で、痴漢被害者の女性は金を積まれて冤罪を仕掛けた悪人だった。第2話ではパワハラで訴えられた女性が実は無罪で、訴えた側は上司に命じられた小悪党だった。そして第3話では「女の敵」と叩かれる男が実は無罪で、「聖人君子」と呼ばれる教育者が浮気三昧の嘘つきだった。
いずれも世間の先入観をひっくり返している。ただ、なんだか見ていてスッキリしない。
まず、主人公の小鳥遊翔子の行動原理が金と名誉(と鉄道)オンリーなのか、逆張りが好きなのかがよくわからない。
もう一つはドラマ全体に貫かれているおっさん目線。なんだか女性がないがしろにされている気がしてならない。今回も「女性の敵」の浅野の無罪が証明されたのはいいが、浅野の妻が殺害された理由は一切描かれなかった(一応言っておくと、犯人は真壁だった)。人の命が失われているのに扱いが軽すぎない? 浮気三昧だった蟹江は法廷で自分の嘘を認めたが、なんだか潔く描かれていた。彼は真実を話して教え子を救ったのだから、奥さんとヨリを戻したのだろう。若い女教師の杉田のほうが愚かに見えた。
高視聴率を稼いでいるが、さらに突き抜けることができないのはこのあたりに理由があるんじゃないかと推測する。
本日放送の第4話では、資産家の若き妻・島崎遥香が遺産相続をめぐって京極法律事務所に弁護を依頼する。今夜9時から。
(大山くまお)
『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』
木曜21:00~21:54 テレビ朝日系
キャスト:米倉涼子、向井理、林遣都、菜々緒、荒川良々、内藤理沙、宮本茉由、安達祐実、三浦翔平、勝村政信、小日向文世、高橋英樹
脚本:橋本裕志
演出:田村直己(テレビ朝日)、松田秀知
音楽:菅野祐悟
プロデューサー:大江達樹(テレビ朝日)、峰島あゆみ(テレビ朝日)、霜田一寿(ザ・ワークス)、池田禎子(ザ・ワークス)、大垣一穂(ザ・ワークス)
制作著作:テレビ朝日