世界経済フォーラムが発表するジェンダーギャップ指数が今年も発表され、日本は110位(スコアは「0.662」)となりました。前回の114位よりは順位が上がったものの、G7の中でも最も低いばかりでなく、調査国中で下位3割のグループに入るほど惨憺たる状況が今年も続いています。
Twitterでは、今年も「#男女格差110位ショック」というハッシュタグが出来ていますが、ほとんど改善されない状況に慣れ過ぎて、ショックすら感じなくなってしまった人も多いかもしれません。
では、日本のジェンダー平等(男女平等)はいつになったら実現するのでしょうか? 順位ではなくスコアに注目し、スコアの伸びがここ12年間の速度と変わらないと仮定して、簡単なシミュレーションをしてみたいと思います。
ジェンダーギャップ指数はあくまで数値の取りやすい項目しか調査対象になっていないため、これだけでは本当にジェンダー平等が達成されているか正確に表現できるわけではありませんが、それぞれの項目が重要であることには疑いないので、意義のある目安になるはずです。
日本がアイスランドの状態になれるのは何年後?
まず、日本が今年も1位を獲得したアイスランドと同レベルのスコアを達成するのはいつ頃になりそうか、2006年調査(スコア0.6447)と今回の調査の差から、日本の1年あたりのスコアの伸びを求めて計算してみました。その結果、以下のようになりました。
日本がアイスランドの2018年スコアを達成に要する年数=138.35年
日本がアイスランドの2018年スコアを達成出来る年=2156年
残念ながら、今生きている人はその景色を見るのはほぼ絶望的なようです。日本はスコアを伸ばしているものの、その伸びは僅か「0.001417」で、ナメクジもビックリするほどの遅さ。それゆえ、一向に順位は上がらないどころか、上位グループとはますます離されているのが現状です。
~計算方法について(※面倒な方は飛ばしていただいて構いません)~
日本の2006年スコアは「0.6447」で、2018年スコアは「0.662」なので、その差は「0.0173」です。これを調査期間の12年で割ると、日本の1年あたりのスコアの伸びは「0.001417」となります。
一方、アイスランドの2018年スコアは「0.858」であり、日本とアイスランドの2018年のスコア差は「0.196」あることになります。このスコア差を先ほどの日本の1年あたりのスコアの伸び「0.001417」で割ると、138.35です。つまり、日本が今のアイスランドと同レベルのジェンダー平等を達成するために要する年数は138.35年で、2156年というわけです。
日本が男女平等を達成できるのは何年後?
次に、日本がジェンダー平等(スコアが1.0の状態)を達成できるのはいつ頃になるかについて計算してみます。その結果、以下のようになりました。
日本がジェンダー平等(スコア1.0)を達成に要する年数=238.53年
日本がジェンダー平等(スコア1.0)を達成できる年=2256年
これはもっと絶望的な数字です。未来を舞台にした漫画等ではこのような年代を見ることはあるかもしれませんが、今のままの改革スピードでは、それくらい時間を経なければ日本は女性差別すらも無くすことが出来ない可能性があるのです。
~計算方法について(※面倒な方は飛ばしていただいて構いません)~
ジェンダーギャップ指数の調査項目においてジェンダー平等が達成された状態(スコア1.0)と、日本の2018年スコア「0.662」との差は、「0.338」です。これを先ほど求めた日本の1年あたりのスコアの伸び「0.001417」で割ると、「238.53」になります。つまり、日本がスコア1.0のジェンダー平等を達成するために要する年数は238.53年で、2256年というわけです。
日本はアイスランドよりどれくらい遅れている?
最後に、日本が首位のアイスランドよりどれほど遅れているかを考えてみましょう。アイスランドでもまだ完全なジェンダー平等は達成していませんが、おそらく日本よりは短いスパンで達成することが予想されます。238年後の達成が予想される日本と差ははたしてどの程度でしょうか? 計算した結果、以下のようになりました。
アイスランドがジェンダー平等(スコア1.0)を達成できる年=2040年
日本とアイスランドのジェンダー平等の実現に要する年数の差=216年
アイスランドのジェンダー平等達成予想年は2040年なので、このまま進めば今生きている人の半分以上が体験できるかもしれません。でも、アイスランドが“ゴール”した後、日本が“ゴール”にやって来るのはさらに216年も先なので、いかに日本が遅れているかが如実に分かります。もう「先進国」を名乗るのも恥ずかしいくらいです。
なぜ、こんなにも差が開くのかと言えば、当然日本の進むスピードがあまりに遅すぎるからです。
~計算方法について(※面倒な方は飛ばしていただいて構いません)~
アイスランドの2018年スコアは「0.858」、2006年スコアは「0.7813」なので、差は「0.0767」です。これを調査期間の12年で割ると、アイスランドの1年あたりのスコアの伸びは「0.00639」になります。
次に、ジェンダーギャップ指数の調査項目においてジェンダー平等が達成された状態(スコア1.0)と、アイスランドの2018年スコア「0.858」との差は、「0.142」です。これを先ほど求めたアイスランドの1年あたりのスコアの伸び「0.00639」で割ると、「22.22」になります。つまり、アイスランドがスコア1.0のジェンダー平等を達成するために要する年数は22.22年で、2040年というわけです。2256年の日本とは216年の差があります。
日本の中にもアイスランドのような空間を作ろう!
今回は日本のジェンダー平等が実現できるのはいつ頃かについて、3つのシミュレーションをしてきましたが、惨憺たる結果に絶望感を抱いた人も多いかもしれません。ですが、人生は一度きりですから、真っ当な人間であれば男性も女性も性差別が無い環境で暮らしたいはずです。そこで私が主催するNPO「パリテコミュニティーズ」では、様々なジェンダー平等を目指すプロジェクトを展開しようと思っています。
まず、前回も触れましたが、現在「 #女性差別大賞2018 」という投票キャンペーンを開催しています。2018年には様々な女性差別関連のニュースがありましたが、その中から最も女性差別的だと思った「組織」と「広告」を投票で決めようという企画です。1分ほどで投票は終わりますので、是非こちらから1票を投じていただきたく思います(締め切りは12月20日(木)まで)。また、投票が終わりましたら、Twitter等のSNSでハッシュタグ「#女性差別大賞2018」をつけてキャンペーンを盛り上げていただけると嬉しいです。
この他にも様々なプロジェクトを始めて行きたいと考えています。確かに既得権益層の頑固さを見ると、絶望させられることも多いですが、IT技術の発展によって社会の流動化が今以上に進むため、考えの近しい人たちが集まって既得権益層の影響が少ないフラットなコミュニティー(職場、家族、地域、その他の集まり等)を自分たちで形成することが次第に可能になるはずです。
「日本をジェンダー平等の社会にしよう!」は確かにハードルが高過ぎるのかもしれないですが、「日本の中にもアイスランドのような空間を作ろう!」はたどり着けそうな未来のように感じます。これを読んでいただいている方で「そんな空間あったら良いな!」と思う方がいらっしゃれば、関連イベントに足を運ぶ等をして近しいビジョンや課題意識を持った人と横の繋がりを作ったり、私の団体に限らず様々な社会活動に参加したり、ネットだけではなくリアルでも動くことで、前を向いている人たちのいる環境に身を投じてほしいなと思います。
(勝部元気)