脚本:福田 靖
演出:渡邊良雄
音楽:川井憲次
キャスト:安藤サクラ、長谷川博己、内田有紀、松下奈緒、要潤、大谷亮平、
桐谷健太、片岡愛之助、橋本マナミ、松井玲奈、呉城久美、松坂慶子、橋爪功、瀬戸康史ほか
語り:芦田愛菜
主題歌:DREAMS COME TRUE「あなたとトゥラッタッタ♪」
制作統括:真鍋 斎

71話のあらすじ
たちばな栄養食品が苦渋の解散をした2日後、東京財務局が差し押さえにやって来た。
だが会社はすっかり整理され何もない。
詰め寄る財務局局員・増岡丈治(菅原大吉)に弁護士・東(菅田将暉)は毅然と立ち向かう。
その頃、刑務所で萬平は「戦いは終わっていない」と闘志を燃やしていた。
日曜劇場かと思った
あらすじを書いてみて、土曜ドラマか日曜劇場のレビューを書いている気持ちになった。
ラストの萬平さんなんて、つい先日、地上波で2回目の放送をしていた「シン・ゴジラ」かと思ってしまったもの。
こうなったわけは2点考えられる。
1に、性のボーダレス化。
2に、近年のエンタメの好まれる傾向。
である。
まず、1つ目を詳しく説明すると、
男子は青や黒を好み、女子はピンクを好む といような傾向は果たして正当なのだろうかという議論はいつだってある。
女子だって戦争映画が好きかもしれない。手榴弾や軍服、留置場で芽生える友情に萌えるかもしれない。
政治経済に関するドラマが好きかもしれない。
または、男子だって朝ドラが好きかもしれない。
そんな可能性を「まんぷく」は切り開いているのである。
筆者は小学校のとき公立にもかかわらず女子でひとり黒いランドセルを使用していて奇異な目で見られた経験があるので共感する。
2つ目は、おそらく、「まんぷく」の企画が動きだした頃(だいたい放送2年前には動きはじめていると訊く)は、日曜劇場が最高に盛り上がった「下町ロケット」(15年)を経て、長谷川博己の「小さな巨人」(17年)もそこそこ支持され、「陸王」(17年)、「99.9─刑事専門弁士─」(16、18年)などが好評という潮流があった時期であり、世の中のニーズに、刑事もの、医療もののほか、中小企業ががんばるもの、法廷ものなどがあると認識されていた。朝ドラにもひとつ、そういう要素を入れてみようと思ってもおかしくない。
もっとも96年「ひまわり」(脚本:井上由美子 主演:松下菜々子)は弁護士ものだったのだが。
脚本家の福田靖は月9「HERO」で法廷ものを、同じく月9「ガリレオ」で東野圭吾ミステリーと、市政の人々の生活の辛苦を通奏低音としたドラマを手がけている。だからこそ、今回の、懸命にがんばっているにもかかわらず権力に搾取されていく小市民の苦難と戦い、それを支える妻という構造を朝ドラに取り入れるという試みを行ってみたのではないか。
もともと朝ドラは専業主婦を対象に作られたものだったが、生活様式が変わり、いまでは老若男女が見ている。
様々な視聴者のニーズに応えるべく「半分、青い。」では恋愛要素を多めにした。今回は、さらに新しく、企業もの、弁護ものなどを採り入れてみましたってところだろう。
そのための福田靖の起用なのか、福田靖だったからこうなったのかはわからない。
ともあれ、朝ドラはこういうものだ!と決めつけずにいろいろ試すのは悪いことではない。なにしろ99作も作っているのだから、同じことの焼き直しを続けることにも限界がある。
ホッとするシーンもあり
でもさすがに男くさ過ぎると思ったのか、咲(内田有紀)が生きている頃の回想を、わざわざ撮り下ろしがきたー。
真一(大谷亮平)と出会って、恋して、うきうきしていた頃。
「咲だけやないみんな幸せそうだった」と鈴(松坂慶子)。
母と三人の娘の艶やかでほのぼのした暮らしぶり。
松坂慶子、内田有紀、松下奈緒、安藤サクラが並ぶと華やか、眼福、眼福。
「幸せと不幸せは代わりばんこに来るのねえ」と鈴がそれっぽい台詞を語ると、
「いまが不幸せと思っていない」「思わないことにしたの」と福子は言い、気丈な人物として描かれる。
鈴はいろいろかき回す役割ではあるものの、三田村の病を聞いて「あんなにお世話になったのになんのお返しもできないなんて……」とうなだれたり、前にも、ハナにお金を貸してもらったことをちゃんと感謝したりしていて、従来の礼儀を知っている人物としても描かれている。ある種の万能キャラだ。
さらには金八先生かと思った
東は大阪に来て、福子たちの家に泊まりながら、会社の権利を売り込み、結果、12万円で売ることに成功。
従業員のみんなはそれぞれ再就職先がみつかった。
急に福子が金八先生みたいにみんなの前で語り、封筒を渡す。中には退職金と福子がひとりひとりにしたためた手紙が入っている。手紙は、公式ツイッターで紹介されていた。この手紙を見ると、描ききれなかった
若者たちのキャラがわかる。
泣く若人たち。「リンゴの唄」を合唱しながら、またも回想。
それなりに長い時間撮影に参加した若者たちを少しでもたくさん見せてあげたいという親心であろう。
今回、主人公が新人でない分、脇を固める俳優たちにフレッシュな人達を大量に出して、見守る楽しみをそっちに回しているのかも。
この中から俳優として高く羽ばたく人がたくさんいますように。
13週も大変そう。どんだけ大変か「知る由もありませんでした」と芦田愛菜ちゃんのナレーションで締めた。
(イラストと文/木俣冬)
連続テレビ小説「まんぷく」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
朝夕、本放送も再放送も オールBK制作朝ドラ
「べっぴんさん」 BS プレミアムで月〜土、朝7時15分から再放送中。
市村正親が「ホワイトクリスマス」を歌う。
71話
「あさが来た」 月〜金 総合夕方4時20分〜2話ずつ再放送
土曜はお休み