連続テレビ小説「なつぞら」
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第2週「なつよ、夢の扉を開け」 演出:木村隆文 第9回(4月10日・水)視聴記録


なつのお父さんはウッチャン 
天陽くんはお兄さんと帰ってしまい、なつは河原にひとり。亡き父からの大切な手紙と絵を眺めていると、
家族がお祭りに行く白昼夢がアニメーションになって浮かびあがる。ナレーションのウッチャンはなつのお父さんの声だった。
亡くなった人がナレーションになる朝ドラあるある(「べっぴんさん」の菅野美穂、「ごちそうさん」の吉行和子など)を逆手にとったサプライズだ。

なつ、思いきり吠える 
柴田一家が酪農の仕事を戸村父子にまかせ家族総出で探しに来たが、なつは「どうして私には家族がいないの」と激しく泣く。泰樹は「もっと怒れ、怒ればいい」と言い、その感情を受け止める。このときの草刈正雄の震えが見る者の心を打つ。
本当の家族のいない悲しみと本当の家族ではないけれど迎え入れてくれる家族がいる喜び。それは比べることではなくなつの心に同時に棲んでいる。
なつは柴田一家と一緒に雪月でアイスを食べる。照男がなつの焼いていた魚を持ち帰っているところが微笑ましい。持って帰ってどうしたんだろう。雪月で処分してもらったのだろうか。

奥村家のアニメ 
さて、9回では1回の東京大空襲の場面に続いてアニメパートが出てきた。
スタッフは以下。


監督・キャラクターデザイン・色彩設計 刈谷仁美
原画 志村恵美子 志村正義
仕上げ ライトフット 渡辺桂子 玉木千春 角智美 山崎大輔 渡邊絵梨 鷲見淳兵 宮川晴奈 柳澤千佳 河野守 井上喜代美
撮影監督 泉津井陽一

監督の刈谷仁美さんは、「なつぞら」の題字デザインやオープニングアニメの監督もしている気鋭の作家。毎週変わる台本のイラストも手がけている。
原画の志村恵美子さんは「ルパン三世くたばれノストラダムス」(95年)、「猫の恩返し」(02年)などに参加。正義さんとご夫婦でアニメーターをやっている。
制作会社ササユリ(アニメーション監修の舘野仁美さんが立ち上げた会社)の制作、広報担当の有村虎彦さんは志村夫妻の起用をこう語る。
「担当している志村ご夫妻は実際にお子様も多く、アニメーションに出てくるのと同じように幸せそうなご家族です。人が描く絵は本質的に本人の一部であり、人柄や人間性、人生が出ます。その方が知っている幸せの一部しか描けないのです。このアニメーションで表現される、心の底から幸せそうな家族の空気感は、このお二人でなければ描けなかったと思います。なつを救ってくれた幸せな空想の世界をお二人に依頼できた奇跡に感謝しております」

せっかくなので、これまでのアニメパートのスタッフもご紹介しておこう。

タイトルバック班
監督・全ての原画・キャラクターデザイン 刈谷仁美
美術監督 藤野真里
美術監修 秋山健太郎
色彩設計 今泉ひろみ(シンエイ動画)
撮影監督 泉津井陽一
プロデューサー 舘野仁美

第1回 東京大空襲班
監督 益山亮司
作画監督 柴田由香
原画 益山亮司 柴田由香
キャラクター原案 刈谷仁美
美術監督 藤野真里
美術監修 秋山健太郎
色彩設計 今泉ひろみ(シンエイ動画)
撮影監督 泉津井陽一
プロデューサー 舘野仁美

第1回 丘を駆けあがるなつと信哉 班
監督・原画・キャラクターデザイン 刈谷仁美
動画 山本 芽衣(オープロダクション)
美術監督 藤野真里
美術監修 秋山健太郎
色彩設計 今泉ひろみ(シンエイ動画)
撮影監督 泉津井陽一
プロデューサー 舘野仁美

タイトルバック、東京大空襲班共通
動画 
コミックス・ウェーブ・フィルム 手島晶子 大村まゆみ 松田裕美 アニータ・キム 永木歩実
篠原天球馬 内海佳奈恵 磯部その香 鍵山莉奈 
スタジオカラー 園田妃奈子 岩堀起久 藤原舞似子 山崎爽太 瀬尾健
ササユリ 下田健太郎
美術 スタジオパブロ 福田健二 松村良樹 水野隆文 河合 佑香
仕上げ ライトフット 渡辺桂子 玉木千春 角智美 山崎大輔 渡邊絵梨 鷲見淳兵 宮川晴奈 柳澤千佳 河野守 井上喜代美
制作業務・管理 有村虎彦 尾崎香織

短いパートではあるが、こんなにたくさんの人が関わって作っているのだ。
いろんな制作会社の名前があるが、シンエイ動画は「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」、スタジオカラーは「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」、コミックス・ウェーブ・フィルムは「君の名は。」などを手がける制作会社。
撮影監督の撮影監督の泉津井陽一さんはジブリ出身。スタジオパブロは「輪るピンクドラム」「フリクリオルタナ」「どろろ」などを手がける美術制作会社と、名だたる会社が「なつぞら」アニメパートに集結している。第一週の試写のとき、磯プロデューサーが「今年から来年にかけてアニメ業界は大作の準備で忙しく、スタッフ集めが大変だった」と言っていた。コミックス・ウェーブ・フィルムはそれこそ「天気の子」が7月公開を控えている。それがなぜこれだけのスタッフを集めることができたのか。
まず、「なつぞら」のアニメーション監修を担当する舘野仁美さんのジブリ時代の繋がり、舘野が経営するササユリカフェの客や店で主催する展示での繋がり。そのほか、いろいろな紹介から。つまり、スタジオジブリで動画チェックを長年つとめてきたベテラン舘野さんの広いネットワークが生かされたのだ。
刈谷さんや、益山亮司、柴田由香夫妻(こちらもご夫婦アニメーター)などは、ササユリカフェのお客さんだった。撮影監督の泉津井陽一さんも、スタジオジブリつながりであると同時に、ササユリカフェのお客さんだったこともあり、舘野さんが依頼した。
「なつぞら」はジブリだけじゃない「ドラえもん」「エヴァ」「君の名は。」圧巻アニメパートのスタッフ紹介
テラスのあるササユリカフェ。5月13日月曜まで『「劇場版若おかみは小学生」ができるまで展』を開催中

「なつぞら」はジブリだけじゃない「ドラえもん」「エヴァ」「君の名は。」圧巻アニメパートのスタッフ紹介
焼き立てバゲット&チーズ、蜂蜜
ササユリカフェのメニュー

背景美術の会社スタジオパブロはササユリカフェでの展示された(飲食のほか、アニメーション関連の展示を月替わりくらいで開催している)絵を見て、依頼。いまの時代、アナログで手描きの背景美術を描く会社様は非常に少なく、ほとんどの会社がCGで背景を描いているが、「なつぞら」のタイトルバックや東京大空襲シーンの背景は手描きで、デジタルでは不可能な味わいが出た。

色指定の今泉さんは、スタジオパブロの秋山社長からの紹介。現在シンエイ動画に所属しているので今泉さんんの指名でシンエイ動画が参加することに。
コミックス・ウェーブ・フィルムは、舘野さんと同僚だった元ジブリのベテラン動画の女性が多く所属しており、その方々にやってほしいと思い依頼。「自社の新作(「天気の子」)が忙しい中、タイトルバックの全てと、東京大空襲の途中までやって頂き、大変感謝しております。特にプロデューサーの伊藤絹恵さまを始め、ベテラン動画の方々の助けは大きく、そのお蔭で良い作品になったと思っております」と有村さん。
スタジオカラーは、ササユリカフェで展示を行うことが多く、動画が間に合わなくて困っていた時に、助けてもらったとのこと。東京大空襲シーンの一部を若手の動画中心が参加している。原画の益山亮司さんは「天元突破グレンラガン」(07年)、柴田由香さんは「まほろまてぃっく」(01年)、「アベノ橋☆魔法商店街」(02 年)など、スタジオカラーをつくった庵野秀明監督が以前所属していたガイナックスでも仕事をしていた。
「なつぞら」はジブリだけじゃない「ドラえもん」「エヴァ」「君の名は。」圧巻アニメパートのスタッフ紹介
ソーセージ盛り合わせ
ササユリカフェのメニュー

「現在アニメ業界は大変な人材不足であり、いつでもどの会社様もスタッフ集めは困難です。特に素晴らしいスタッフを集めるのは奇跡のようなものです。スタジオササユリはもし漫画に描き起こしたら『ご都合主義過ぎる』とダメ出しされるくらい奇跡の連続でした」と有村さんは協力してくれたスタッフに感謝を述べる。
舘野さんは長年ジブリで動画チェックを担当し宮崎駿さん、高畑勲さんたちの信頼を得てきたが、ジブリ解散にあたりササユリカフェをつくった。
そこにはアニメ関係者が多く訪れ、飲食し語り合い、ときに展示会を行うなどして交流を広げていく。まるでヨーロッパのサロンのようだと言うと、それこそがササユリカフェの目指すものだと有村さん。
「そういう場が昔そういった場所であった、〈コボタン〉という伝説のお店に例えてくださる方もおり、光栄です」

「なつぞら」はジブリアニメや世界名作劇場の世界のオマージュと思われているが、こうして見ると、日本の様々なアニメの遺伝子が混ざり合っているようだ。日本アニメの黎明期に参加することになるなつの物語にぴったりではないか。なつがアニメの世界に本格的に踏み込んでいくのはまだ先だが、その物語がとても楽しみだ。
「なつぞら」はジブリだけじゃない「ドラえもん」「エヴァ」「君の名は。」圧巻アニメパートのスタッフ紹介
ササユリカフェのテラスから見える夏空

第2週「なつよ、夢の扉を開け」(演出:木村隆文) あらすじ


東京の兄に会いたいと、家出したなつを富士子や剛男は、懸命に探す。一方、帯広にたどり着いたなつは警察に保護されたが、そこからも逃げだし、行き場を失っていた。ようやくなつを見つけた柴田家のみんなは、なつを抱きしめ、ずっとそばにいると誓う。柴田家の子として再び暮らし始めたなつは、泰樹の夢であるバターづくりを教えられる。そしてさらに将来につながる、大きな「夢」と出会うことになる。

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。
父の描いた家族の絵を大切にもっている。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っている。
柴田夕見子 幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。勉強が好き。牛乳嫌い。
同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。
柴田明美 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じているのは朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。

5回
山田天陽 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。絵が上手。馬が好き。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…郵便配達。


8回
山田陽平 市村涼風…天陽の兄。

9回
なつの父 内村光良…絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。


脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武
(木俣冬)
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