連続テレビ小説「なつぞら」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~

第5週「なつよ、雪原に愛を叫べ」 33話(5月9日・木 放送 演出・渡辺哲也)視聴記録


バターせんべい美味しそう
にわかになつ(広瀬すず)が東京に興味を持ち始め、せっかく慣れ親しんだ十勝の風景や登場人物とそろそろお別れなのか……と不安な気持ちは、登場人物だけではなく視聴者も感じている。その気持をストレートに代弁してくれたのが「おはよう日本」の高瀬耕造アナ。「上京しないとお話が展開していかない…。
いやでもね上京しないで残ってほしいなとも思う時期。これも朝ドラあるあるですかね」こういうふうに言ってもらうと気持ちが収まるというもの。さすが、有働由美子が日テレにいってしまったあと、NHKで朝ドラ語らせたらナンバーワンの高瀬アナ。

東京(新宿)編がはじまる前に十勝愛を存分にということで、34話では十勝・帯広の歴史を感じるエピソードが描かれる。映画「ファンタジア」を見た後、雪月でお茶しているなつと天陽くん(吉沢亮)のところに、雪之助(安田顕)が、試作品のバターせんべいを持って来た。地元の原材料を使った地元の銘菓実現のために柴田牧場でバターを使ってほしいと願う雪之助。

さらにそこへ、とよ(高畑淳子)がバターせんべいの容器の試作品を見せる。それは北海道開拓団・晩成社で使用されていた赤い缶をイメージしたものだ。
なつは幼少期(第2週)、泰樹がしまってあったバターチャーンを取り出しバター作りを再開したときに晩成社の話を聞いている。
晩成社とは、明治時代、最初に十勝を開墾した依田勉三の作った組織である。雪月のモデルのひとつは帯広の人気お菓子メーカー・柳月である話は以前書いたが、とよの作った赤い缶には帯広のもうひとつの人気メーカー六花亭のマルセイバターサンドの雰囲気がある。
「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?
「マルセイバターサンド」
レーズンの入った濃厚なクリームがうまい 

六花亭はこのバターサンドやホワイトチョコレートなどが北海道土産の定番になっているメーカーで、六花亭の社史を絵本にした「お菓子の街をつくった男」(文溪堂)によると前身である帯広千秋庵が、帯広の開拓がはじまった70年め、帯広市という名前になって20年めの祝いのとき、依田勉三の言葉「開墾の はじめは豚と ひとつ鍋」(開墾しはじめは貧しく豚のエサの入った鍋で人間も食事をした)という言葉から「ひとつ鍋」というお菓子を作ったそうだ。
その後、続々とつくった新商品のなかに1958年に発売された「リッチランド」というチーズサブレがある。その形状が34話のバターせんべいに少し似ている。
「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?
「リッチランド」
サイロを模したお菓子  

六花亭の「六花」とは雪の結晶の意味であることから、「雪月」は、地元の原材料のみでお菓子を作っている柳月をメインに、原材料は北海道に限らないが帯広の歴史と共に歩んできた六花亭の要素も参考にされているようにも感じる。
正直言うと「なつぞら」に触れるまで北海道といったら六花亭と思っていたのだが、柳月を知ることができてよかった。柳月には「三方六」という薪の形を模したバームクーヘンがある。チョコとホワイトチョコで薪を模したオーソドックスなもの(65年バージョン)から、はちみつレモン、しょこら、抹茶等々たくさんの種類が続々と新作が生まれ続けている。

「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?
1965年〜2017年「三方六」の歴史
いろいろあって飽きさせない。提供:柳月

「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?

「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?

「なつぞら」33話。雪月のモデルは柳月? 六花亭? なつは照男? 天陽? どっちどっち?

これは開拓者たちが割った薪の木口のサイズが「三方六」(三面でそれぞれ6寸、18センチ)と呼ばれていたことからついた名前なのだと「三方六」のパッケージのなかに説明が描かれた紙が入っていて、開拓者の歴史を伝えていく重要なお菓子なのである。
なつや照男が小さい頃から薪割のお手伝いをし、なつがたまたま訪れたアニメーションスタジオで薪割りの絵を描くことになるという一連のつながりから、制作陣が取材をして知った、帯広の開拓者たちが寒い冬、薪を割って暖を取って生きてきたこと、こうして開拓した土地から乳製品、小麦、あずき、砂糖の原料テンサイなどお菓子の原料を豊富に収穫できるようになり菓子作りという産業が盛んになったという十勝の歴史をドラマの通奏低音にしていることがわかる。歴史とは「なつぞら」的にいうと「魂」だろうか。歴史ある魂をひとつひとつぐつぐつ煮込んで物語にしている誠意を感じる。

天陽と照男
なつが雪之助から預かってきたバターせんべいを食べる柴田家と戸村父子。雪之助と会ったことないという菊介(音尾琢真)だが、音尾さんと安田さん、さんざん会ってるだろうと思ったTEAM NACSファンも少なくないだろう。

あとからやって来た富士子(松嶋菜々子)にバターせんべいは残っていたかも気になる。
スキー大会に、手製のスキー板で参加する天陽と、泰樹に用意してもらった新品の板で参加する照男(清原翔)。なつが手製がかっこいいと言ったときの、照男と泰樹の微妙な表情。照男と天陽の恋愛映画のような会話。スイーツ(お菓子)×スイーツ(恋愛映画)。
ちょうど、清原翔が「あさイチ」にゲストで出て、華丸が、天陽と照男の名前に着目し「照男と天陽で太陽の奪い合い」とうまいこと言っていた。
照男も天陽もどっちも照らす側(脚本が大森寿美男だけに「てるてる(家族)」!)。ただなつが太陽かというといまのところ月のようなところもある。広瀬すずは派手な顔立ちながらどこか憂いがあるところが魅力のひとつであるのだ。太陽のポテンシャルを持ちながら少し翳りある少女なつを男ふたりが照らす状況はまぶし過ぎる。

余談だが「あさイチ」のゲストのひとりで、「ひよっこ」の中華料理店の奥さん役を演じてうた生田智子の「なつぞら」の感想の自然さに感心した。彼女の発言で話がスムースに流れた。
トーク番組にはこういう人が必要だと感じる。

第6週 「なつよ、雪原に愛を叫べ」(5月6日・月〜 演出・渡辺哲也)あらすじ


兄・咲太郎(岡田将生)を探すため、東京を訪れていたなつ(広瀬すず)と富士子(松嶋菜々子)。ふたりは偶然、天陽(吉沢亮)の兄・陽平(犬飼貴丈)と再会する。陽平は東京の美大に通いながら、漫画映画を作る会社で働いていた。なつは陽平に誘われて会社を見学、漫画映画の制作現場を目の当たりにし、心を奪われる。一方、十勝では、照男(清原翔)が大事な話があると天陽を呼び出していた。なつへの思いを確かめようとしていたのだ。そんな二人は青年団のスキー大会で対決することになり、それを見つめるなつは……。

第35回(5月11日・土 放送)あらすじ


スキー大会の翌日、天陽(吉沢亮)の家に行く約束をしていたなつ(広瀬すず)。出かけようとすると、泰樹(草刈正雄)が話があると引き留めた。そこで泰樹は、なつに結婚話を持ちかける。突然の話に驚くなつは、泰樹が薦める相手の名前を聞き、さらにショックを受ける。そこに照男(清原翔)が現れ、取り乱すなつを落ち着かせ、天陽の家に向かうよう促した。その場を走り去ったなつは、天陽の家に向かい雪原の中を歩き出すが…。

登場人物とキャスト 登場順


奥原なつ 広瀬すず 幼少期 粟野咲莉…主人公。戦争で父母を亡くし、兄と妹と別れ、剛男に連れられて北海道に引き取られてきた。生活を保障してもらう代わりに酪農の手伝いをする。父の描いた家族の絵を大切にもっている。生きるために感情を押し殺してきたが、柴田家、とりわけ泰樹と触れ合うことで、素直に感情を出せるようになっていく。これからは酪農の時代だと考え、十勝農業高校で学んでいる。演劇部に入る。
佐々岡信哉 工藤阿須加 幼少期 三谷麟太郎…空襲のとき、なつを助ける。
柴田剛男 藤木直人…柴田家の婿養子。なつの父の戦友で、戦災孤児となったなつを十勝に連れて来た。妻を「ふじこちゃん」と呼ぶときがある。1955年時点では音問別農協組合で働いている。
柴田富士子 松嶋菜々子…剛男の妻。開拓で苦労してきたので、ひとに優しい。
柴田照男 清原翔(13 回から) 幼少期 岡島遼太郎…柴田家長男。搾乳をさせてもらえない代わりに薪割りを頑張っていたが、なつが来たことを機にようやく搾乳させてもらえた。
柴田夕見子 福地桃子(13回から)幼少期 荒川梨杏…柴田家長女。牛乳嫌い。同い年のなつに嫉妬を覚えたが、剛男に説得されてなつを受け入れる。勉強ばかりして家の手伝いを全然しない。
柴田明美 平尾菜々花(13回から) 幼少期 吉田萌果…柴田家次女。
柴田泰樹 草刈正雄…柴田家当主。頑固者で幼いなつにも容赦なく厳しく接するが、意地悪ではなく、彼の人生哲学に基づいたもの。他人に頼らず己の力で人生を切り拓くことを心情としている。甘いものが好き。
奥原咲太郎 幼少期 渡邉蒼…なつの兄。タップダンスが得意で、米兵にかわいがられていた。孤児院にいる。
奥原千遥 幼少期 田中乃愛…なつの妹。親戚に引き取られている。

2回
焼け跡にいたおばあさん北林早苗…情にほだされなつたちに食べ物を分ける。演じている北林は朝ドラ第1作め「娘と私」の娘・麻里の少女時代役を演じた。
戸村悠吉小林隆…柴田牧場で働いている。貧しい開拓団の八男に生まれ、幼い頃に奉公に出され、泰樹に世話になった恩を感じて尽している。
戸村菊介音尾琢真…悠吉の息子。嫁募集中。

4回
小畑とよ 高畑淳子…帯広在住。泰樹の昔なじみ。口の減らない元気な人。
小畑雪之助 安田顕…とよの息子。菓子店・雪月の店主。菓子作りに情熱を注ぐ。
小畑妙子 仙道敦子…雪之助の妻。
小畑雪次郎 山田裕貴(13回から登場) 幼少期 吉成翔太郎…雪之助、妙子の長男。十勝農業高校に通っている。演劇部。

5回
山田天陽 吉沢亮 幼少期 荒井雄斗…音問別小学校でなつと同級生になる。東京からやって来た。馬が好き。農業をしながら絵を描いている。
大作 増田怜雄…音問別小学校の生徒。
実幸 鈴木翼…音問別小学校の生徒。
さち 伍藤はのん…音問別小学校の生徒。
山田正治 戸次重幸…天陽の父。東京から北海道にやって来たが土地が悪く、農業ができず、郵便局で働いている。泰樹の協力を得て、土地を蘇らせる。

8回
山田陽平 (31話から)犬飼貴丈 幼少期 市村涼風…天陽の兄。絵がうまい。東京で芸大に通いながらアニメの美術の仕事をしている。なつに絵画の道具を贈った。

9回
なつの父 内村光良…日本橋で料理人をしていた。絵が上手。家族のことを思いながら戦死した。

10回
花村和子 岩崎ひろみ…音問別小学校の教師。 
校長先生 大塚洋…音問別小学校の校長先生。
山田タミ 小林綾子…天陽の母。

13回
居村良子 富田望生…十勝農業高校の生徒。演劇部に入り衣裳を担当する。
村松 近江谷太朗…柴田牧場と長い付き合いのあるメーカーの人物。奥様封筒をもってくる。

倉田隆一 柄本佑…十勝農業高校の国語の先生。

14回
田辺政人 宇梶剛士…音問別農協組合組合長。農協で一手に酪農事業をとりまとめ十勝を酪農王国にしたいと考えている。 

19回
門倉努 板橋駿谷 …十勝農業高校の番長。クマとサケを争った逸話をもつ。演劇部に入り、村長役を略奪する。
高木勇二 重岡漠 …十勝農業高校演劇部。メガネ。門倉に役をとられてしまう。
石川和男 長友郁真…十勝農業高校演劇部。
橋上孝三 山下真人…十勝農業高校演劇部。

21回
太田繁吉 ノブ(千鳥)…十勝農業高校の教師。ヤギのチーズは牛より「クセがすごい」と言う。

27回
前島光子 比嘉愛未… 川村屋のマダム
野上健也 近藤芳正… 川村屋のギャルソン
茂木一貞 リリー・フランキー… 角筈屋社長
煙カスミ 戸田恵子… 歌手。ムーラン・ルージュにいた。
三橋佐知子 水谷果穂…川村屋の店員
土間レミ子 藤本沙紀…カスミのいるクラブの店員

28回
島貫健太  岩谷健司
ローズマリー  エリザベス・マリー…浅草の踊り子

30回
藤田正士 辻萬長  親分
松井新平 有薗芳記 …浅草の芸人
岸川亜矢美 山口智子 …元ムーランルージュの踊り子。咲太郎を助けた。

31回
下山克己 川島明 …新人アニメーター
仲努 井浦新 … 実力派アニメーター

脚本:大森寿美男
演出:木村隆文 田中正ほか
音楽:橋本由香利
キャスト:広瀬すず 松嶋菜々子 藤木直人 岡田将生 比嘉愛未 工藤阿須加 吉沢亮 安田顕 仙道敦子 音尾琢真 戸次重幸 山口智子 柄本佑 小林綾子 高畑淳子 草刈正雄ほか
語り:内村光良
主題歌:スピッツ「優しいあの子」
題字:刈谷仁美
タイトルバック:刈谷仁美  舘野仁美 藤野真里 秋山健太郎 今泉ひろみ 泉津井陽一
アニメーション時代考証:小田部羊一 
アニメーション監修:舘野仁美
アニメーション制作:ササユリ 東映アニメーション

制作統括:磯智明 福岡利武