そんな歴史あるこの作品をちゃんと観てみたいと思い立った。沢口靖子のものまねで知られる芸人・メルヘン須長が某番組で披露したネタ「ストリートファイターのキャラになった沢口靖子」を見たことがきっかけである。波動拳を出すポーズで「科捜研! 科捜研!」と連呼する芸に心を鷲掴みされ、本家も観なければと心動かされたのだ。不純な動機で申し訳ない。

第9話あらすじ
榊マリコ(沢口靖子)の元に、京都観光促進センターの園崎乙弥(松田悟志)から相談が舞い込んだ。園崎らは、京都の名所を訪れた観光客たちに京都らしさを感じさせる“音”を専用アプリで体験してもらうプロジェクト「京都観光サウンドAR」を進めていたが、共同で開発に当たっていた音響の研究家・尾藤奏吾(村上新悟)が失踪。さらに、センターのサイトへ「プロジェクトを中止しないと恐ろしいことが起きる」という謎の脅迫メールが届いたというのだ。
その矢先、爆弾が爆発する瞬間を収めた動画が科捜研に送り付けられる。動画には「市内の観光名所に爆弾を隠した」というメッセージが入っており、爆弾の場所は園崎たちが名所に設置した“ARサウンドスポット”で確認しろ、とも記されていた。
マリコたちは犯人から次々と送り付けられてくるメールに従い、あちこちの観光名所を巡ってARサウンドを分析。その結果を頼りに懸命に爆弾を捜索するが、タイムリミットはどんどん迫ってくる。そんな中、尾藤に経費の不正流用疑惑があることが判明した。
実は、脅迫メールの主は尾藤の助手であり恋人の木内鳴実(柊子)だった。
聴取で木内は、「尾藤先生を見つけてほしいという私の願いに耳を傾けてくれてありがとう」とマリコにお礼を言った。
実は笑わせる気まんまんの制作陣
今回観て気付いたことがある。真面目と見せかけたこの作品、実はかなり面白ドラマの要素を孕んでいるということだ。
約1ヵ月ぶりの放送となった第9話。放送前の予告にて告知されていた「マリコ、池の水を全部抜く!?」の一文には特大のインパクトがあった。絶対、制作陣には笑わせたい意図がある。
広沢池に着くや、マリコは刑事部長・藤倉甚一(金田明夫)に申し出た。
「池をさらわせてください。水中に(爆弾を)隠してある可能性は十分考えられます」
藤倉がまだ返事していないのに、池に直行するマリコ。
視聴者からすると煽られた期待がスカされた格好。この瞬間、SNS上に「悲報・マリコ、池の水を抜かない」なるワードが飛び交ったのには笑った。池に入る際の格好も『緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦』(テレビ東京系)レギュラー陣のコスチュームと酷似しているし。
池の水を抜かなかったマリコは、何をする? 数人で横一列に並び、棒で池の底をツンツンして進むのだ。紅一点のマリコだけピンク色の服を着ている画はシュールでおかしい。でも棒で突いた途端、爆発したらどうするつもりなのだろう?
もちろん、シリアスな視点で観てもこのドラマは面白い。ノイズで文字を作り、それが爆破予告の場所を示す謎掛けは変化球だったと思う。「科学は凄い!」と、素直に感心した。
伏線がわかりやすい
伏線がわかりやすいのもこのドラマの特徴だ。まず、園崎の携帯の着信音(「クシコス・ポスト」という曲)を聴いた瞬間は、笑うしかなかった。
木内が着けるネックレスも同様だ。「やたらと光るなあ……」と気にしていたら、音の波形で作る尾藤の指輪(エンコードリング)とお揃いのデザインだった。
そもそも、尾藤役を演じる村上新悟は“イケボ俳優”として有名である。「6月9日 嵯峨嵐山 竹林 初夏の夜の静寂」と言っているだけなのに、詩を朗読したのかと思うほど崇高な雰囲気を漂わせる美声。
木内が爆破予告を行ったのは、捜索を警察に訴えても動いてくれなかったのが理由だった。尾藤の遺体が見つかった後、木内はマリコにお礼を言った。
「私の声に耳を傾けてくれて、ありがとうございました」
最初から最後まで、「声」と「音」を縦軸に貫くミステリーが第9話だった。
次回の第10話も楽しみだ。またしても次回予告が秀逸である。
「容疑者は全員スシ職人!?」
「マリコのスシ修行が犯人を暴く!?」
やっぱり笑わそうとしているとしか思えない。次回も観るしかない。
(寺西ジャジューカ)
木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Blue Rain」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中