「スカーレット」29話「草間流柔道さん」と再会、なんだか小さく感じてしまう喜美子
連続テレビ小説「スカーレット」29話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

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連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」29話「草間流柔道さん」と再会、なんだか小さく感じてしまう喜美子

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)


第5週「ときめきは甘く苦く」29回(11月1日・金 放送 演出・佐藤 譲)


喜美子(戸田恵梨香)は働いてお金を貯め、進学することにした。美術の学校に行こうと、その特別講師で世界的芸術家・ジョージ富士川(西川貴教)の個展を向学のため見に行き、本にサインをもらう。

「自由は不自由だぜ」がキメ台詞のジョージ、喜美子に「基本を学ぶことは大事なことやで。
土台がしっかりしてはじめて自由になれる」と声をかける。

そのとき、ふいに割り込んで来た中国人に、喜美子が「ちょっと割り込まんといてください」ときつく注意すると、その名前と大きな声に記憶を刺激されたらしく、草間(佐藤隆太)が声をかけてくる。

「草間流柔道さん」との再会


久々の再会の喜びを、喫茶さえずりで分かち合う喜美子と草間。
雄太郎(木本武宏)とさだ(羽野晶紀)は「草間流柔道さん」と呼んで、親しげにふるまう。喜美子がなにかといえば「草間流柔道では」と言っていたことがここで生きた。

初対面の人間に「草間流柔道」などと呼ぶ飾らない人たちを見て、喜美子が楽しく暮らしていることを感じる草間。
「頑張ったんだね」と言われて、うれしい喜美子。

喜美子の成長は、生き別れになった草間の奥さんの写真をいま一度見て「きれいな人や」と言うところ。子供のときは「まあまあや」と飾らない表現をした彼女に「お世辞を覚えたんだね」と草間は笑う。

言葉の使い方を覚えたとはいえ、まだまだ。草間の状況を慮らず「どんな感じ?」と聞いてしまったところは成長の途上ということであろう。「いつか笑い話にできるかと思って」とさみしげな顔をする草間の顔を正視できない感じに。
草間の妻は、べつの人と再婚し、さえずりの近くの商店街で夢だった店をやっていたのだ。

喜美子と草間が語らう喫茶さえずりのカウンターにはクリスマスツリーが飾ってあって、その小さな点滅がもの悲しく映った。

ご飯を食べに外に出ると、喜美子は草間が小さくなったように見える。喜美子の背が伸びたからだけではなく、
あの頃の草間に感じたたのもしさがなくなっていた。かつて、彼を見上げたとき、向こうに星が光って見えたことを思い出す喜美子。
さだが草間に「思ってたよりしゅっとしてる」と言ったのも、ストレートに褒めたわけではなく、実のところ、さだなりの気遣いだったのかもしれない。きっと草間には人生の疲れが滲んでいるのだろう。それに比べて西川貴教の堂々とキラキラした感じといったらない。

草間との場面で情緒的な劇伴をかけるところは民放のドラマ(TBSとか)ぽくなってきた。ふつうのちゃんとしたドラマのつくりだが視聴率は今週19%台が続く。心の機微を画で見せるのではなく、言葉で説明したり、飛び道具で心を瞬間つなぎとめたりしたほうが大衆受けするのだろうか。でも毎度それだけじゃあねえ…ということで違うことに挑んでいるところは応援したい。

平さんが引き抜かれていた


その頃、ちや子(水野美紀)にもショックな出来事が。尊敬する平田(辻本茂雄)が引き抜かれていなくなっていたのだ。

28回でわざわざ荒木荘にたずねて来て、不景気だから身の振り方を考えないと言っていたのは、このことだったのだ。下着コントはメインではなかったのだ。
何も知らずに、平田についていくつもりで会社を辞めないと豪語したちや子だったが、肝心の平田が辞めてしまったとは……。同僚たちは、男は家庭があるからと平田の行動を肯定するようなこと言い、平田はちや子に「結婚したほうがいい」とまで言っていたと伝える。
尊敬していた人物の突然の退社のみならず、男と女を分けて考えられていた事実を突きつけられ、ちや子、ダブルパンチである。
時を同じくして、尊敬していた人物の意外な弱さを見てしまった喜美子とちや子、ふたりはこれからどうするのだろうか。

さて。妻がほかのひとと再婚していた朝ドラといえば、いまや科捜研の女・沢口靖子の「澪つくし」(85年)。夫が海で遭難して亡くなったと思ったヒロインが再婚するも記憶を亡くした夫と再会してしまうというメロドラマは多くの視聴者を釘付けにした。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)

登場人物のまとめとあらすじ (週の終わりに更新していきます)


●川原家
川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 絵がうまく金賞をとるほどの腕前。勉強もできる。
とくに数学。学校の先生には進学を進められるが中学卒業後、就職する。

川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。運送業を営んでいる。家に泥棒が入り、
喜美子の給料を前借りに行く。

川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ→安原琉那 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。

川原百合子…福田麻由子 幼少期 稲垣来泉 

●熊谷家
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。兄が学徒動員で戦死しているため、家業を継がないといけない。婦人警官になりたかったが諦めた。高校生になっても友達がいないが、楽しげな様子を書いた手紙を大量に喜美子に送っている。喜美子とは幼いときキスした仲。

熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母

●大野家
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。高校で友達は照子だけだったが、ラブレターをもらう。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。

大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。

●滋賀で出会った人たち
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退し草津へ引っ越す。喜美子に作品を「ゴミ」扱いされる。

草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいた。帰国の際、離れ離れになってしまった妻の行方を探している。喜美子に柔道を教える。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。

本木…武蔵 大阪から来た借金取り。

…中川元喜  常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。
博之…請園裕太 常治に雇われていたが、突然いなくなる。川原家のお金を盗んだ疑惑。

●大阪 荒木荘
荒木さだ…羽野晶紀 荒木荘の大家。下着デザイナーでもある。マツの遠縁。
大久保のぶ子…三林京子 荒木荘の女中を長らく務めていた。喜美子を雇うことに反対するが、辛抱して彼女を一人前に鍛え上げたすえ、引退し娘の住む地へ引っ越す。女中の月給が安いのでストッキングの繕い物の内職をさせる。

酒田圭介…溝端淳平 荒木荘の下宿人で、医学生。妹を原因不明の病で亡くしている。
庵堂ちや子…水野美紀 荒木荘の下宿人。新聞記者で不規則な生活をしていて、部屋も散らかっている。
田中雄太郎…木本武宏 荒木荘の下宿人。市役所をやめて俳優を目指すが、デビュー作「大阪ここにあり」以降、出演作がない。
静 マスター…オール阪神 喫茶店のマスター。静を休業し、歌える喫茶「さえずり」を新装開店した。

平田昭三…辻本茂雄 デイリー大阪編集長 バツイチ 喜美子の働きを気に入って、引き抜こうとする。
石ノ原…松木賢三 デイリー大阪記者
タク坊…マエチャン デイリー大阪記者
二ノ宮京子…木全晶子 荒木商事社員 下着ファッションショーに参加
千賀子…小原華 下着ファッションショーに参加
麻子…井上安世 下着ファッションショーに参加
珠子…津川マミ 下着ファッションショーに参加 
アケミ…あだち理絵子 道頓堀のキャバレーのホステス お化粧のアドバイザーとしてさだに呼ばれる。

あらすじ


第一週 昭和22年 喜美子9歳  家族で大阪から信楽に引っ越してくる。信楽焼と出会う。
第二週 昭和28年 喜美子15歳 中学を卒業し、大阪に就職する。
第三週 昭和28年 喜美子15歳 大阪の荒木荘で女中見習い。初任給1000円を仕送りする。
第四週 昭和30年 喜美子18歳 女中として一人前になり荒木荘を切り盛りする。

脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
制作統括:内田ゆき
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