木村拓哉が主演を務める日曜劇場「グランメゾン東京」第2話が、10月27日に放送された。

尾花夏樹(おばななつき)は「バナナ」、早見倫子(はやみりんこ)は「ミリン」、京野陸太郎(きょうのりくたろう)は「ノリ」、ちょっと変わったところでは、リンダ・真知子・リシャール(りんだまちこりしゃーる)は「チコリ」など、役名には苗字と名前の間に食べ物や調味料の名前が隠されている。


しかし、公式サイトの相関図には、1人だけ例外の人物がいる。それは、平古祥平(ひらこしょうへい、ちなみに「コショウ」)の彼女・蛯名美優(えびなみゆ)だ。苗字にエビこそ入っているものの、漢字で蛯だし、隠す気が一切ない。なぜ1人だけ? 親が都議会議員なだけに、「ナッツ混入事件」に関係するかもしれない……。

尾花の脅迫は信頼の証


「グランメゾン東京」のオープンに向けて倫子(鈴木京香)、京野(沢村一樹)が奔走する。しかし、倫子ではシェフとしてのネームバリューが足りず、事件を起こした尾花の名前は出せないため、銀行からの融資を受けることができない。京野は奥の手として、「gaku」の時に懇意にしていた信用金庫の融資担当・汐瀬(春風亭昇太)に相談するが、原価率を下げるよう計画書の改善を求められてしまう。


第1話(レビュー)でも「料理のためならなんでもする」という型破りなキャラクターを見せていた尾花だが、今回はその傍若無人ぶりが加速。倫子と京野がお金に困っているのに、高級食材ばかりで試作していた。倫子が開店資金のことで注意をしても、「だから金は京野がなんとかしくれるって言ってんじゃん!」と聞かない。

さらには、“レシピ動画の貴公子”相沢(及川光博)を引き抜くために「どうする? 貴公子が3年前に大事件を起こした店で働いてたって騒ぎだしたら?」と自分が起こした不祥事で脅す始末。目的のためには手段を選ばない。

この身勝手な言動は、どちらも信頼から来た行動だ。
自分は料理を作るのが仕事だからこそ、資金繰りには興味を示さない。相沢を脅したのも、「500円レシピ」執筆や、手軽に作れる料理動画をアップするよりも、レストランで最高の一皿を追求する方が相沢の性に合っていること、レストランでの仕事に飢えていることを、信頼しているからこその脅迫だ。

なんなら尾花は、「相沢を救うために誘ってやってんだ」ぐらいに思っているのだろう。ぶっきらぼうでデリカシーがちょっと足りないが、実は真面目で誰よりも他人のことを考えている……という人間性が滲み出た2つのシーンだ。
木村拓哉はバナナ「グランメゾン東京」役名の秘密、シェフの「変化」は吉と出るか凶と出るのか2話
イラスト/たけだあや

尾花は本当に変わったのか?


こと料理にかんしては、特にプライドが高く、人の意見を聞かない。今話はそんな尾花の変化が描かれた。
料理教室で相沢に勝負を挑むが、敗北し「日本人の舌」について考えさせられる。

倫子「この前菜は、人の意見を聞かない頑固な料理人が、自分の価値観をまげて、昔の仲間の助言を生かして作ったんです」

汐瀬を説得するために尾花が作り上げたのは、「ナスのプレッセ」だ。日本の食材で原価率を下げ、相沢との過去のやりとりからナスを使い、さらに相沢に意見を求めてまで作った一皿だ。原価が500円程度だったのも、相沢の著書「500円レシピ」を意識したに違いない。

第1話でも変化の兆しはあった。賄いで食べていた「クスクスアラメゾン」に倫子が口を出し、尾花は「ない!」と一蹴するも、その後、しっかりと倫子のアドバイスを受け入れた料理を作っている。


本当に尾花はプライドを捨てたのだろうか? あれだけ味にこだわっていた尾花が、仲間を引き入れるためや、金を借りるためなんかに考えを改めるのだろうか?

倫子は「自分の価値観をまげて」と言っていたが、少し違う気がする。今話はしきりに「トリュフなどの高級食材を好む」「フランス産にこだわる」尾花が強調されていたが、実はそうでもないはずだ。尾花は知らない葉っぱや花を見ると、とりあえず味見をする。「ナスのプレッセ」だって、ナスと一緒にたまたま生えていたカタバミを添えており、値段や産地にこだわっているようには見えない。

本当にこだわっているのは味だけ。たまたまフランス産の高級食材を使用していただけで、初めから尾花は高級志向なんかではなかったのではないだろうか? 尾花の変化は人の意見を取り入れるようになったことだけだ。
それだって、味をよくするための判断であって、志が変わったわけではない。むしろ、味を追求するためにつまらないプライドを捨てたとも言える。

今後も尾花の傍若無人な振る舞いに変化はないだろう。むしろ、わがままを言った直後に、相手の意見にころっと鞍替えするさらにやっかいなおじさんになったかもしれない。
(沢野奈津夫)

■『グランメゾン東京』
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太 (Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、冨永愛、中村アン、手塚とおる、及川光博、沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子、山室大輔、青山貴洋。
料理監修:岸田周三(カンテサンス)、トーマス・フレベル(INUA)、服部栄養専門学校
音楽:木村秀彬主題歌:山下達郎「RECIPE(レシピ)」