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天才が日本にいられない時代に「左ききのエレン」が描く天才像、池田エライザ天才だわー泣いた3話

ひとを軽々しく天才と呼ぶもんじゃない。
血のにじむ努力して、苦労して、挑んでいるのかもしれない。
それを知らないで、結果だけを見て「天才だ」と呼ぶのは失礼だろう。
っていうエクスキューズをしてから書きます。
池田エライザさん、天才だわー泣いた〜。
「トリガール」でさわやかな女子大生、「賭ケグルイ」で三つ編みツインテの女王様を演じ(他にもたくさんある)、初監督作品『夏、至るころ』が2020年夏公開予定。雑誌『ケトル』でエッセイの連載もはじまった。
で、『左ききのエレン』の山岸エレン。
ドラマイズム「左ききのエレン」(TBS毎週火曜日深夜1時28分 MBS毎週日曜日深夜0時50分)、今夜「第4話 サラリーマンやれよ」放送。
天才の役がめちゃくちゃハマる。

『池田エライザ ファースト写真集』集英社

私は努力を信じない


ドラマは、超天才のエレンと、才能はないが夢はある光一の対比で進んでいく。(原作
天才が日本にいられない時代に「左ききのエレン」が描く天才像、池田エライザ天才だわー泣いた3話
かっぴー原作の2巻

エレン、光一が描いた絵をいきなり蹴とばす。
「むかつくんだよ。てめえ。才能ないくせに、ガキかよ! いくつになっても夢はがんばれば叶うと思ってるのか」
めっちゃ酷い言いようである。
「そんなのやってみないとわかんないだろ」
と反論する光一。よく泣かなかった、えらい。
「努力してむくわれる世界ならパパは死ななかった。無駄なんだよ、才能がないやつが何やったって。私は努力を信じない」
父の死のせいで、エレンは前にも後ろにも進めなくなっている。
絵の才能がないことに絶望して自殺したとエレンは感じている。
だから、エレンは自分が絵を描くことを封じた。

この点があるから、どうにか、エレンを「ただ酷いヤツ」と思わずに観ることができる。

にしても、これが「2019年の日本」だと、彼女はそのままで居れなかったかもしれない。
日本は、天才がいづらい国になってしまった。

すがすがしいほど天才


日曜劇場「グランメゾン東京」の木村拓哉演じる尾花夏樹は、「今の日本」を生きようとする天才シェフという設定だ。
尾花夏樹は、それまでのやり方を変える。
高級食材を使って作るという信念を曲げ、働く仲間は料理に全てを捧げなければいけないという信念を曲げる。
人の話を聞き、凡人と合わせるところは合わせ、いわば、社会性を身に着けていく。
意地悪な言い方をすれば、凡人たちが天才を引きずり落とす社会を描いているようにも見える。

いっぽう「左ききのエレン」に登場する天才は、すがすがしいほど天才で、社会性なんぞクソくらえのままずっと生きている。

時代設定は、少し昔。
世界的な広告の賞である「カンヌ国際広告祭」は、2011年に「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」に変わった。
光一が広告代理店に入社するのは、まだこの賞から「広告」のワードが消える前の2004年。
ギガカラチップスのCMに関わるのは2008年。
才能や天才という言葉にギリギリすがれる時代だった。
だから、光一は、何者かになれると信じて、がんばることができる。

だが、本当の天才は、おそらくもはや日本に居られない状況になっていた。
だから、エレンは、日本にないのだろう。ニューヨークにいる。

ものすごい天才や、極端な造形のキャラクターをガンガン出していく群像劇にもかかわらず、「左ききのエレン」のリアリティが失われないのは、こういった実感にもとづく工夫が随所にあるからだ。
天才が日本にいられない時代に「左ききのエレン」が描く天才像、池田エライザ天才だわー泣いた3話

『@elaiza_ikd LEVEL19→20』小学館

笑顔になるエレン


そして、孤高の天才という「誰がどーやって演じるの!?」っていう難役を、池田エライザは見事に演じている。
ああ。
ニューヨークで、絵を描くために、何かを引き出そうとするエレンの動き。
美しいコンテンポラリーダンスのような手の動き。
もう少しでつかめそうだったのにつかめず、悔しくて、頭に手をやり、くるりと体をまわす。
マネージャーの加藤さゆりがもどってくる。
「ただいまー」
頭をかかえ、動くエレン。
「だいじょうぶ?」
の声も耳に入らない。
歩いて、歩いて、白いキャンバスに向かって手を延ばして、形をつかもうとするが、つかめなくて、あげていた手をおろして、ちからが抜けていく。
天才の創作現場を覗き見たような背徳感、画の美しさ。
父親の死について考え方を変えた後の、歩いているときの表情。
歩いているところから、ゆっくりと走り出し、フードがぬげ、夜の道を走るのを、真横からカメラで切り取ったシーン。
一筆目をキャンバスにいれるエレンの顔。「ちがうんだよ、光一。この先があるんだよ。この先が」のモノローグが重なり、(楽しいとか、おかしいとかじゃない、愉悦の先にある何かをつかんみかけようとする)笑顔になるエレン。
池田エライザは山岸エレンだ。
(テキスト:米光一成

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左ききのエレン

広告代理店を舞台にした心をえぐるクリエイター群像劇。原作はcakesクリエイターコンテストで特選を受賞した同名漫画。主演は地上波初主演の神尾楓珠と池田エライザのダブル主演。MBS/TBSドラマイズム枠にて、2019年10月より全10話放送。

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