舞台に打ちのめされた木津つばさが今自信をもって臨む舞台「さらざんまい」

人気ダンスボーカルグループXOX(キスハグキス)の最年少メンバーで、2.5次元舞台を中心に俳優としても活躍する木津つばさ。ミュージカル「アルスラーン戦記」主演の記憶も新しい彼が、『さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~』で主人公・矢逆一稀を演じる。ひょんなことからカッパに変えられてしまった中学生3人組が、自分を見つめ、仲間との絆を深めながら奮闘する物語。元となるアニメ「さらざんまい」は、その独特の世界観にはまる人が続出した話題作。期待と注目を集める舞台への意気込みや、普段の快活な姿からは想像がつかない意外な素顔も見せながら、赤裸々に語ってくれた。

取材・文/橘川有子 撮影/コザイリサ
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)


誰が主人公でもおかしくないくらいキャラクターがしっかりした作品


舞台に打ちのめされた木津つばさが今自信をもって臨む舞台「さらざんまい」

――まずは、舞台『さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~』の主演が決まったときのお気持ちを教えていただけますか。

木津:アニメ「さらざんまい」はリアルタイムで拝見していて、その反響の大きさも知っていました。なので、自分が主演する云々よりも、話題の、しかも世界観がしっかりとある作品を2.5次元舞台にするんだという驚きが最初でしたね。

――舞台は浅草ですが、奇想天外な設定もある作品です。演じる上で不安は感じませんでしたか?

木津:台本を読ませていただいて感じたのは、アニメよりもさらにわかりやすく、伝わりやすいなということ。なので、演じる不安はなかったです。今回のお話をいただいて、改めてアニメを見返し、「この作品は、僕自身と重なる部分が多々あるな」と感じました。僕はお芝居をする際に、これまでの人生の中で足りないものを紡いで演技へとどう結び付けるかを意識しながらステージに立っています。ですが、この舞台は自分の中にあるものを結び付けていけるんじゃないかと感じました。

――たしかに、仲間との絆や家族への想いなど、普遍的なものも描かれていますね。

木津:はい。「何かを失わなければ、何かを得られない」ということは、どこの世界でも変わらないのかなと。また、この作品に限らずですが、「どちらが正義なのか」というのは考えさせられ、感じる部分でもありますね。

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――主要キャラクターである、矢逆一稀、久慈悠(とおい)、陣内燕太(えんた)の3人組にとっての「正義」とは?

木津:抱えていることがそれぞれ違うので、3人それぞれの正義があると思います。一稀だったら弟への想いがあるし、その弟自身も中身がぎゅっと詰まっていたりする。燕太は、友達以上に一稀を思う特別な感情があるのに、それを抑えなきゃいけない。でも衝動に負けそうになったり、ときに皿を奪い合ったりもする(笑)。そういった様々な角度から描かれる物語ではありますが、僕個人としては結局のところ悠のための物語なんじゃないかなと思ったりします。

――主人公・一稀の物語ではなく?

木津:それぞれの物語がしっかり描かれていますが、やっぱり最後は悠にみんなの感情が向かっていく。たまたまストーリーの流れがそう見せているだけかもしれないけど、アニメでも最終的に悠を助けに行くし。最後には……、まだここでは言えないけど(笑)、ぐっとするシーンがあって。それを持っていくのが悠なんですよね。舞台を観るお客さんは、主人公に想いを重ねる人も多いと思うんですが、今回は中学生3人がみんな主人公なのかなと思うし、新星玲央や阿久津真武のサイドから観る人にとっては、もしかすると僕ら3人は「悪」かもしれない。誰が主人公でもおかしくないくらいキャラクターがしっかりした作品なので、やりがいを感じますし、面白みを感じますね。

――これまでに共演した俳優さんとの再会も多いとか。今回の稽古などで印象が変わった方はいますか?

木津:(高本)学は、ホントに変わらないなって(笑)。4年ぶりくらいの共演なんですよ。劇団番町ボーイズ☆で一緒に過ごしてきたし、すごく仲良くしていたのでよく知ってるけど、お互いにいろんな経験をしてきた中での共演だから思うことも多くて。僕が思うのは、真武という役柄が、学にすごく合ってるなって。だから、作り込みすぎない感じがいいなと思うし、学はすごく熱心でまじめだかそう演じられているのかもしれない。卒業していって、まさかここで一緒の舞台に立てるとは思いもしませんでした。

舞台に打ちのめされた木津つばさが今自信をもって臨む舞台「さらざんまい」

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――共演するうれしさは、表情からも伝わってきます。

木津:そりゃあもう。そもそも舞台で共演できる確率なんて、ホントに無いに等しい。今は役者さんの母数が多すぎて、なかなか実現できないんです。一緒の劇団にいたころは、お芝居のことを何一つ分からなくて、話すことといえば、「ごはん何食べる?」とか、訳もわからず「稽古、大変だな」とかってこと(苦笑)。4年前は「こうなりたい」って具体的な夢もなにも描けてなかったけど、今は具体的にどうしていきたいかも話してくれます。そんな時間が貴重だなとしみじみ思いますね。

中学時代は普通に“陰キャ”でした(笑)


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――座長を務めることで演じ方や在り方など、意識の変化はありますか?

木津:僕、座長……なんですかね。いろんなタイプの座長がいると思いますが、「俺についてこい」と引っ張るのではなく、いろんな感情はあると思うけど、みんなでいいものを創り上げて、最後には楽しい気持ちで終われるようにしたいと思っています。だから、みんなで気兼ねなく意見を言い合える空気を作りたいし、みなさん忙しいので全員揃うことはなかなか難しいですが、親交を深めていきたい。実際に、稽古中は「つながり」や「つながる」がみんなの口癖みたいになってるんですよ。アニメの世界観を受け継いでいるなと感じるし、作品の大きさを感じますね。

(取材時はまだ)通し稽古をやってないので、それが終わって幕が上がるときには、みんなの想いが120%の力になって出せる舞台になると思っているんですよ。稽古を見て感じたことなんですが、本番ではもっとすごいものになるなって確信していて。違うと言えば、今回は中学生3人組では一番年上なので、そういう意味ではしっかりしなきゃという気持ちになるし、(設楽)銀河にはついつい愛ある小言を言いたくなりますね(笑)。

――グループ最年少として周囲にかまわれてきた木津さんが、お兄さんになったと?

木津:そうなんですよ、あんなに(年下として)かわいがられてきた、あの木津つばさが!

――自分で、それを言いますか?(笑)

木津:あはは、すみません(笑)。これまではすごい経歴を持つ、目上の、大人な方たちと共演をさせていただいてきました。今回のように、10代の役者さんと共演して、3人組で一番年上なんて今までにない経験なので、そういう意味でも気が引き締まります。

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――XOXでは最年少、舞台の中学生トリオでは最年長。感情がいろいろと忙しそうですね。

木津:そうかもしれません(笑)。今回の舞台をはじめ、主演を務めさせていただく機会も増えて、自然と大人になっていく感覚はあります。今回は、銀河と(野口)準から敬語を使われるんですが、それが気持ち悪くて。「きしょ!」「やめろよ」って叱ってます(笑)。お兄ちゃんとして頑張りたいと思うし、その想いに応えたいという強い気持ちにさせてくれますね。こうした外部での経験は本当に貴重だなと思いますし、それをグループに持って帰るとだいたい……「老けたね」って言われます(笑)。

――成長したね、ではなく?

木津:そうなんですよ(笑)。「老けたね」って口々に言われます。グループは広島出身の僕にとって東京の実家みたいなもの。仕事上の関係ですしライバルなんですが、長い時間苦楽を共にする仲間であり家族でもありますね。メンバーが舞台を観に来てくれることも多くて、観た後に「お芝居、好きなんだな」って言ってもらえると嬉しいですね。

――家族のような間柄だからこそ、いつもと違う顔を見られるのが恥ずかしいと思うことはないですか?

木津:正直、恥ずかしいです(笑)。僕、これまでずっと強がって生きてきたんですよ。自分はやれる、自分ならできるって。けど、それを一瞬で壊されたのが舞台でした。過去の経験から「強くなきゃいけない」と思って、強がってきました。でも、舞台をやったことでその仮面を全部壊された。それからは、自分の弱さを前面に舞台に出すことも多くなったので、それを見られるのは恥ずかしいですね。普段はこんな感じで、元気で意気揚々としてるんじゃないかなって見られがちけど、中学時代は普通に“陰キャ”でしたし(笑)。

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――おお、それは意外な告白ですね。

木津:あはは。本ばっか読んでました。

――その話も気になりますね。

木津:サッカーなどの運動もしてましたが、そんな子でした。本当の自分を偽らなきゃならないときも、あったりなかったり……。それを一気に覆されたのが舞台で。ボロボロになったところから一から再構築して、今に至る感じです。まだ作っている過程ではあります。

ミュージカル「薄桜鬼」に出させていただいたとき、打ちのめされたんですよ。自分が何もできないという事実を突きつけられました。やる前は、なんとかできるだろうと高をくくっていたけど、何もできなかった。「お前、いったい何ができるんだ」と言われたときに、ポキンっと折れましたね。打ち上げで、舞台で一緒だった人を前に、「マジで頑張るんで!」とボロボロ泣きながら宣言しました。

――自分をさらけ出し、苦しい思いも経験することで説得力のある演技になっていくのでしょうね。

木津:本当にそうだと思います。全人生を賭けている人の芝居はつい見入ってしまう。僕も全人生を賭けてこの舞台に取り組みます!

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――かなり燃えてますね(笑)。それだけ魅力のある舞台だと。

木津:はい。生まれて今日まで歩んできた全てが出てしまうのが舞台だと僕は思っています。だから、めちゃめちゃ過酷な人生を歩んできた人だって、逆にすごく幸せな人生を生きてきた人で、苦しいとかツライと感じたことがない人だって、それぞれが歩んできた人生を舞台に十分生かせる。いろんな感情は、舞台を経験していくにつれ、きっと身についていくことだと思うから。

僕自身、普段は「怒る」感情が湧いてこないんですよ。でも、ステージに立つとキャラクターを通じて一気に負の感情が湧いてくる。役になり切って泣いたりしていると、頭の中は自分だから「なんで今、泣いてるんだろう?」って不思議な感覚になることもありますね。

――これまで抱えてきた様々な感情を、舞台上だから解き放てると?

木津:内なる部分は舞台からはなかなか伝わらないと思うけど、そこも観てもらえたらいいなと思っているんです。これは僕の勝手な想いだし、私情なんですけどね。

僕にとっては、舞台が終わってもその役は、僕の中で生き続ける


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――作中にたびたび「絶対に取り戻したいもの」というワードが出てきます。木津さんにとって、絶対に取り戻したいものとは?

木津:昔盗まれた自転車(笑)。買ったばかりで持ってかれちゃったので、それは本当にすぐにでも取り戻したいです(笑)。

――戻ってきてほしいですね。ちなみに、木津さんが今作で特にいいなと思うセリフは?

木津:「まぁるい円でつながってる」っていうセリフはめちゃめちゃいいなと思っています。「さらざんまい」の世界観を象徴するような言葉だし、カンパニーが手を取り合って繋がることで、お客さんにも伝わるんじゃないかなと思うんです。だから、僕はできるだけ一緒に居たい。稽古の後にご飯に行ったり、僕の家で読み合わせしたりもしますね。ただ、気の毒だなと思うのは帝子ちゃん。紅一点なので、どうしても一人ぼっちになりがちで。でも、昨日はみんなでご飯に行ったし、できる限り埋めるようにしてます。

――吾妻サラ役の帝子さんは、アニメでも同じ役を演じられた声優さんですね?

木津:はい。舞台は今回が初めてで、すごく頑張っているのが伝わります。僕らからすれば、声優さんがアニメで素晴らしい演技をしてくれるから、アニメがたくさんの人に愛され、舞台化になっているわけで。「お世話になっております!」って感じなんですよ。帝子ちゃんが、舞台で演じることで新しい吾妻サラを見つけられたらいいなと思います、それを僕らもファンの方も待っていると思うので。ここで言えるのは、「吾妻サラは、飛び道具です!」ということ(笑)。ぜひ、楽しみにしていただきたいです。

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――はい、楽しみにしています。

木津:すごく“気になる”作品なんです。これまで機会がなくてアニメや小説に触れなかった人が、舞台を見たら「アニメ、見なあかん」って思うだろうなって。実は、僕自身が台本をいただいて稽古を1回した直後に、「アニメ見なきゃ」って思った初めての作品です。リアルタイムで放送されていた時も見てはいたけど、もっとじっくり見直したいと思いました。僕の今の気分は、舞台を観に来てくださったお客さんと一緒に、そのまま浅草にみんなで行きましょうって感じです(笑)。

――浅草の見方も変わりそうですね。

木津:僕はすでに見方が変わりました(笑)。今ではスカイツリーを見るだけで「さらざんまい」の世界に引き込まれてしまいます。それだけ強い印象を残してくれる作品です。とくに、中学3人組を演じる僕らは、めちゃくちゃ熱をもってやらせていただく。もしかしたら、血管キレて血が飛び出すくらいの(笑)勢いと熱、愛を込めて舞台に立つのでぜひ、それを見ていただけたら。舞台「さらに『さらざんまい』」は今話題の2.5次元の作品です。原作をリスペクトしつつ、人間が演じるからこそ生み出せる新しさを見ていただきたいです。こんな矢逆一稀がいたんだと思っていただけるよう、自分として懸命に生きたいです。

僕にとっては、舞台が終わってもその役は、僕の中で生き続けるんです。だから、いろんなキャラクターがふっと降りてくることもある。一稀のような中学生なら、ホントならゲーセンに行ったり、ファストフードを友達と食べに行ったりしたいはず。どんなときも、演じた役のその後を生きるような感覚なんですよ。

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――役への愛が深いですね。では最後に、木津つばさとして今後挑戦してみたい活動を教えてください。

木津:舞台をはじめ、最近は映像のお仕事もやらせていただくようになりましたし、他のお仕事にも挑戦させていただけるチャンスもあるのかなと思うんです。だからこそ、いろんな角度から自分を見つめなおす機会になっている。より、木津つばさを見てあげる。それが今後取り組みたい「仕事」ですね。

――つまりは、どのような活動なのでしょう?

木津:完全に自宅でできることです(笑)。自分で自分を見つめなおして、木津つばさはこうなんだと思ったときに出逢えたお仕事がベストなんだろうなと思うんです。今後も引き続き役者をやりたい。ハマるならどっぷり沼にはまりたいですね。“さらに”“さらに”熱をもってやり続けたいです。

プレゼント応募要項




公演概要


『さらに「さらざんまい」~愛と欲望のステージ~』

舞台に打ちのめされた木津つばさが今自信をもって臨む舞台「さらざんまい」
(C)イクニラッパー/シリコマンダーズ

(C)舞台「さらざんまい」製作委員会

<東京公演>
2019年11月28日(木)~12月1日(日)シアター1010
<大阪公演>
2019年12月7日(土)~8日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール

【キャスト】
矢逆一稀:木津つばさ
久慈悠:設楽銀河
陣内燕太:野口準

新星玲央:中村太郎
阿久津真武:高本学

矢逆春河:深澤大河
久慈誓:横井翔二郎
吾妻サラ:帝子
ケッピ:一内侑

原作:イクニラッパー/シリコマンダーズ
スーパーバイザー:幾原邦彦
脚本・演出:伊勢直弘

制作:Office ENDLESS
プロデューサー:大井守/下浦貴敬

舞台に打ちのめされた木津つばさが今自信をもって臨む舞台「さらざんまい」
(C)イクニラッパー/シリコマンダーズ

(C)舞台「さらざんまい」製作委員会

<ストーリー>
舞台は浅草。
中学2年生の矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人はある日、謎のカッパ型生命体“ケッピ”に出会い、無理やり尻子玉を奪われカッパに変身させられてしまう。

『元の姿に戻りたければ“ある方法”でつながり、ゾンビの尻子玉を持ってこい』

ケッピにそう告げられる3人。
少年たちはつながりあい、ゾンビの尻子玉を奪うことができるのか?!

同じ頃、新星玲央と阿久津真武が勤務する交番でも何かが起ころうとしていた――。


公式サイト:https://butai-sarazanmai.com/
(C)イクニラッパー/シリコマンダーズ
(C)舞台「さらざんまい」製作委員会

Profile
木津つばさ
キヅツバサ

1998年1月7日生まれ、広島県出身。ダンスボーカルグループXOXおよび劇団番町ボーイズ☆のメンバー。個人では、舞台「刀剣乱舞」での博多藤四郎役のほか、ミュージカル「薄桜鬼」藤堂平助役、今年9月に上演されたミュージカル「アルスラーン戦記」では主演を務めた。 TVKで放送中の情報バラエティ「猫のひたいほどワイド」で木曜レギュラー(リポーター)も担当するなど、多岐に渡り活動している。


関連サイト
@kizu_tsubasa
@tsubasa__kizu