処女でAVデビューした戸田真琴、初エッセイは「優しいだけの本は作ることができなかった」

処女でAVデビューした戸田真琴、初エッセイは「優しいだけの本は作ることができなかった」

出演AVで処女喪失。19歳で鮮烈なデビューを飾り、いまやすっかり大人気AV女優となった戸田真琴。近年は文筆業でも活躍し、2019年には映画監督デビューを果たすなど、業界でも唯一無二のポジションを築いている。

2019年12月には、竹書房より待望の処女エッセイ『あなたの孤独は美しい』が出版された。新興宗教の信者だった母親のこと、「男の人は危険」と刷り込みのように躾けられたこと、AVデビューを決めた理由のこと……。エッセイで語られる話題の中には、センセーショナルな内容のものも少なくない。しかし、『あなたの孤独は美しい』は、よくある暴露本やお涙頂戴的なタレントエッセイでは決して終わらない。「ぼっち全肯定」という言葉が大きく帯にあしらわれた同書籍には、一見大人しげに見える彼女の実は“ヒョウ柄”な内面が、繊細な言葉でさらけ出されている。

取材・文/原田イチボ(HEW) 撮影/新井章大

好きという感覚で文章を書いたことはない


――映画『シン・ゴジラ』のレビューがバズるなど、エッセイの面白さにも定評がある戸田さんの初の著書です。反響はどんなものですか?

賛否両論ですね。100%の肯定を求めていた人からは、「想像していた感じと違った」という感想も届いていますが、逆に「勇気をもらった」という声もあります。「あなたはそのままでいいんだよ」というメッセージを発信する本って、なんだか世の中にいろいろあるじゃないですか。もともと、そういう“ぼっち本ブーム”に乗せた企画のはずだったんですが、いつのまにかズレたというか(笑)。どうしても自分としては、優しいだけの本は作ることができなかったんです。

だって、無責任に承認したところで結局相手のためにならないケースってたくさんありますよね。私は人生の中で、「本当の優しさってなんだろう?」とずっと考えています。それでも全然優しい人になれていないのが現状なのですが、“優しさ”について考え続けることが大事なんだろうなって。だから、無責任な優しさは与えられませんでした。「あなたはあなたとして在った上で、見方を少し変えてみるのはどうかな?」と提案するような内容になっています。
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――家族や友人関係などヘビーな話題もたくさん出てきますが、文章に戸田さんの気遣いが感じられます。うかつに強い言葉を使わない、というか。

ファンの方から「文章を書くのが好きなんだね」とか「言葉が好きなんだね」と言われることも多いんですが、好きという感覚で文章を書いたことはありません。言葉というものは誤解を生むし、他人を傷つけることもあるし、すごく恐ろしいものです。

――それだけ恐ろしいものだと思っているなら、なぜ文章を書くんでしょうか?

私自身が発信したいというより、AV業界は流れが早い場所だから、ちょっと変わったことをしないと生き残れないんですよ。何かわかりやすいキャラ付けをするやり方もありますが、個人的には、私の内面を知って愛着を持ってもらえる形のほうが嬉しいなぁと思いまして……。それでブログとかで文章を発表し始めたら、いろんな方が注目してくださいました。
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――たしかに、戸田さんのファンは内面も含めて応援している方が多い印象です。

そうなんですよ。AV女優のファンの方って、巨乳とかショートカットとかのカテゴリの中で、あの子も、あの子も、あの子も……と、いろんな女の子を応援している方が多いと思うんです。でも私のファンの方々は、私がいろいろな活動をしているぶん、「たまたま写真展に行って好きになりました」とか「コラムから好きになりました」とか、“好きになり方”がいろいろあって面白いんですよね。ある意味、ひとりの人間を多面的に見ることができる人たちと言えるのかも。

だからこそ私も皆さんを信頼して、ある程度の本音などを書くことができました。実際、親がどうだとか悪いレッテルを貼るのに利用できる要素もいっぱい書いているんですよ。でも、人間を簡単にカテゴライズすることなく、思いやり前提で「どういう人なんだろう?」とじっくり向き合うことができる人はたくさんいるはずだと信じています。
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AV業界に入って、“正しさのパターン”が増えた


――著書の中で、AV出演を決めた理由のひとつとして、「藁をも掴む思いで、自分を変える方法を探していた」とつづっています。AV女優になって変化したことは何でしょうか?

「いろいろ見聞きした上で判断しよう」という姿勢は身につけられたんじゃないかな。でも「自分の人生において何が一番大切なのか?」のような根本的な考え方は、あまり変わっていない気がします。種類が増えた、という表現が近いですね。もともと自分が考えて出した結論のほかに「でも、こういう正しさもある」「こういう正しさもある」という見方の種類が増えました。いろいろな答えのパターンがあって、それぞれの答えが正しい中で、自分はどの正しさが好きかを探っていく。業界入りして、いろんなパターンを知ることができたとは感じています。

まだ自意識が出来上がったばかりの頃って、自分と違った答えのパターンを受け入れることができず、「それは間違っている!」と感じたりしますよね。私は未だに自分の母親が悪い人だとは思っていません。お母さんは、私を悪く言いたかったわけでもなく、私の人生を阻害したかったわけでもなく、どちらかというと好きだったと思うんですよ。それでもお母さんのいろいろな言葉が私の枷になって、今も意識して取り外さないといけないときがある。お母さんは、自分以外の正しさを受け入れられないまま大人になってしまった人なのかもしれません。
処女でAVデビューした戸田真琴、初エッセイは「優しいだけの本は作ることができなかった」

――2019年は、映画監督にも初挑戦しました。「新しい世界に飛び込むと、答えのパターンが増える」ということでしたら、この挑戦でも新たに見えたものがありましたか?

映画を撮っているときは、久しぶりに“ただの人間”として人間に接した気がします。AV業界の中での私はどうしたって“女”なんですが、映画を撮っている私は、女でも男でもなく、ただピュアに撮りたいものを撮るだけの人でした。幸運だったのは、初監督でAV女優で……という人間に対して、上から目線で接してくる人が1人もいなかったことですね。今までで一番居心地が良かったです。映画を撮ることは、今後も続けていきたいですね。
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私の魂がベージュのコートを着ることはない


――AV女優、映画監督、エッセイストと、自分を発信するチャンネルを複数持っていますよね。それぞれ、どんな自分を見せるための表現として捉えていますか?

AV女優として最初の頃は、「知らない世界を知る」とか、「ここまでやったら怖いものはもうない」という快感がありました。最近は、自分じゃない人を演じるのがすごく面白いですね。ものすごく真面目なことを書いても、AV撮影の現場に行ったら、人の男を寝取りまくる女とかを演じるんですよ(笑)。自分とかけ離れたキャラクターを演じる面白さ、そして、その中でふと本心に戻る瞬間があることの面白さを感じています。

文筆業に関しては、私は文章というものを言い訳の道具として利用しているんですよ。自分という人間の伝えきれない部分を補完するための手段というか……。私って、人畜無害で何も知らない人間のように思われやすいんです。子供のときもクラスで一番良い点を取ったら、「バカそうなのに良い点取るんだね」って言われたりとか。
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――失礼!

そうですよね(笑)。作品でガリ勉っぽい役を演じたときも「バカそうな女にこんな役をやらせても」とネットに書き込まれたりしました。私のルックスとか態度、振る舞い、サイズ感とかで出しきれない情報を補完していくための手段としては、文章が合っている。文章を書いていなければ、今ほど信頼できるファンや関係者の皆さんに出会えていなかったかもしれません。

――でも、たしかに出演AVのイメージが強かったので、「意外と私服がいかついな」と思ってしまいました……。

とくに今日いかつくなっちゃいました(笑)。私は私服がいかついんです! 派手な服を着ているとナンパされないんです。ヒョウ柄を身につけると人生が安全になる。だから、ヒョウ柄には感謝しています。私の中で私はこの格好なんですが、他人の中では、私が着ている服はこれじゃないみたいですね。この前、撮影でベージュのコートを着ることになったんですよ。プライベートでベージュのコートは絶対着ないんですけど、監督さんには「めちゃくちゃ似合うね」って言われちゃってショックで、私の魂がベージュのコートを着ることはないのになって……やめよう、この話は(笑)。
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――急に勢いが増しましたね(笑)。映画を撮ることは、自分にとってどんな意味を持つ表現ですか?

そもそも映像というものが好きなんですよね。上手く言えませんが、「仕事として」とか「“戸田真琴”として」とかを超えて“自分”というものが存在する。この世に生まれた流れの上にある重要な課題という感覚、相手に理解されるかどうかを考えないで作るべきものという感覚です。
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ちょっと変な友達の昔話を聞く感じで読んでほしい


――「こんな人に『あなたの孤独は美しい』を読んでもらいたい」というイメージはありますか?

自分の優しさが優しさのまま届かなかった経験のある人に読んでほしいです。自分は善い人間であろうとしているけど、世の中にはそう思われず、価値観の齟齬に悩んでいる人。そういう人の気持ちが楽になって、自分自身を肯定できるようになるきっかけになれば嬉しいです。あとは、親の期待に沿って良い子でいようとしすぎちゃう人かな。血がつながっているからといって大事にし合えるわけじゃない。他人のために自分の人生を縛ってしまうことがないように、と願っています。
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――親に対しても「そういう人なんだ」とあくまでフラットな立場を保ち続けるのがすごいですよね。

仕方ないと感じる部分って、探せば結局見つかるんですよ。「この人が100%悪い」ってことはめったに無くて、「誰も悪くなかった」という答えが世の中にはたくさんある。その答えをいったん見つけた上で、「でも私はこれが良いと思う」と選んでいけることが、本当の自立なんじゃないかな。孤独とは大切なものなんじゃないか、と考えたことがある人に『あなたの孤独は美しい』を読んでもらいたいですね。
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――とはいえ、エッセイを読んだ結果、「戸田真琴は神!」のように思われるのも戸田さんにとっては違うんでしょうね。

それは嫌ですね……。そんな人はめったにいませんが、尊敬されすぎるのがすごく苦手なんです。私にとって、自分より上位の人間として他人を崇拝することは、人間扱いしていないのと同じです。ただ、同じになりたい。同じ場所にいて、同じレベルのものだと認識されたい。神のように私の言葉を聞かれるのは、すごく苦しいです。だから、ちょっと変な友達の昔話を聞く感じで読んでもらいたいですね。まぁ変なやつだけど友達だし、みたいな(笑)。「まこりん、いろいろあったんだな。わかるよ」くらいで読んでください。わからなくても、「お前なぁ~」みたいな感じで読んでもらいたいです。
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Profile
戸田真琴

2016年、処女のままSODクリエイトよりAVデビュー。2019年に「スカパー!アダルト放送大賞」で女優賞を獲得するなど、AV女優として第一線で活躍するほか、趣味の映画鑑賞をベースに各媒体に寄せるコラムも話題に。初監督映画『永遠が通り過ぎていく』は、映画と音楽のイベント「MOOSIC LAB 2019」の特別招待作品に選出された。愛称は、まこりん。

関連サイト@toda_makoto戸田真琴(note)

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