
竜星涼、サイコパスな青年になりきる
そこへ来て、先週1月26日放送の第2回では、文吾とは別に真犯人ではないかと思わせる人物が現れた。村の新聞配達員の長谷川翼(竜星涼)である。長谷川は前回、心が千夏の死を回避すべく除草剤を三島医院の倉庫から持ち出すのを目撃して以来、心のことを疑っていた。これに対し、地元の小学校(無差別殺人事件が発生する学校)に臨時教員として採用された心もまた、児童たちに妙に親しげに接する長谷川を疑う。
心の見ていないところでも、婚約者の佐々木紀子(芦名星)に勤務するメッキ工場から何やら薬品を持ってこさせたりと、サイコパスな雰囲気を漂わせる長谷川を演じるのは竜星涼だ。竜星といえば、竹内涼真も出演していたNHKの朝ドラ「ひよっこ」で人情に篤い警官を好演したほか、同じくNHKのドラマ「昭和元禄落語心中」での落語家役も印象深いが、今回はそれらとはまったく異なる役どころだ。正直、最初出てきたとき彼とは気がつかなかったほどだった。
心と文吾のあいだに再びわだかまりが
由紀の遺したノートには、村に住む田中義男(仲本工事)という元県会議員が、平成元年1月15日に自宅の火事で死亡すると記されていた。心はそれを防ぐため、文吾と連れ立って田中の自宅を訪ねると、長谷川と遭遇する。長谷川は、寝たきりで目も見えない田中に代わり、彼が口述する詩をノートに書きとめるために来ていたのだ。心は、長谷川のメモしたノートの片隅に不気味な絵が描かれているのを見つける。それは二人の少女らしき人物像で、片方は黒く塗りつぶされ、さらに竹とんぼのような謎の物体も一緒に描き込まれていた。
ちなみに田中老人を演じるのが、ドリフターズの仲本工事というのも意外なキャスティングだ。まさかこんなシリアスな役を演じるとは。ちなみに田中の息子(仙台在住ながらたびたび帰郷しては父を介護している)を演じる霜降り明星のせいやは、ドリフを含め昭和のコメディアンをリスペクトしているだけに、今回の共演はうれしかったのではないだろうか(ついでにいえば、本作で小学校教師の木村さつきを演じる麻生祐未が、仲本らドリフのメンバーと同じイザワオフィス所属だったこともふと思い出した)。
この田中を救うため、心は文吾と連れ立って、事件が起こるはずの1月15日未明よりその自宅の警備にあたる。このとき、心が席を外したすきに、例の由紀のノートを文吾が見つけてしまう。心はそれに気づくやすぐにノートを文吾から取り上げて、そのときは事なきをえるのだが……。そこへ文吾の妻(心の母)の和子(榮倉奈々)から、長女(心の姉)の鈴(白鳥玉季)が同級生の三島明音(三島医院の長女)とともに行方不明になったとの連絡が入る。
明音が失踪するのはノートでは明日のはずだが、それに鈴も一緒とは……ノートの記述との食い違いに心は動揺しながらも、雪のなか外に出て、二人を探し始めた。そこで長谷川とばったり遭遇するのだが、彼はうろたえながら自分は明音が小さなころから面倒を見ていたと心に打ち明けると、そのまま立ち去る。
それと入れ替わりに文吾が心を追って来た。このとき心が「何で鈴まで……」とふいに口にしたのを、文吾は聞き逃さなかった。鈴がこうなることも知っていたのかと心を問い詰め、さらに例のノートを見せろと迫り寄る。
この直後、鈴だけが発見され、駆けつけた金丸刑事に事情聴取される。心はあらためて金丸の追及を受けるが、先のことがあったばかりだけに文吾はかばってくれない。次女に続き、長女が事件に巻き込まれた三島夫妻もあからさまに心を疑う。そのころ、明音はどこかの小屋に閉じこめられていた。壁の隙間から、誰かがのぞいていることに気づき、彼女は泣き叫ぶ。
「父親はいない」との母の言葉の真意を知る
捜索を続けるうちに朝を迎えた1月16日。別々に帰宅して顔を合わせた心と文吾のあいだには何ともいえない空気が流れる。心はいたたまれず、着替えもそこそこに再び家を出た。ここで和子が動く。一人で途方に暮れていた心を、村の片隅にあるほこらへ連れていくと、早く明音が見つかるように祈ろうと勧めたのだ。
和子は何か心配事があるといつもここへ来て手を合わせるという。そうすると、自然と家族の顔が浮かび、「自分は一人じゃないんだ、何があっても乗り越えてやるんだ」と思えるのだという。そう言う和子に、心は、文吾が事件で捕まってからの和子は自分たちきょうだいに「あなたたちに父親はいない」と言い聞かせていたのを思い出す。彼はこのことを、友人の母親の話に変えて和子に打ち明けた。まさかそれが自分のこととは夢にも思わない彼女は、心の告白に「もし、私がそのお母さんの立場になったら、同じことを言うかもしれないなあ」「そのほうが子供たちを守ることになるなら。んで、きっと心(こころ)のなかでお父さんに言うと思う。『これでいいのよね』って」と返すのだった。
「だから、嫌な目にあってる子供たちが少しでも救われるなら、『お父さんなんていないと思いなさい』って言うかも」
「でもお父さんならきっとわかってくれると思うし。何よりお父さん自身が子供たちに元気で生きていてほしいって願ってることを、私はよーく知っているから」
若き日の和子の言葉から、心は母の本心を知り、「母さんは父さんの存在を消したわけじゃなかった。いや、むしろ心のなかではずっと父さんのことを信じていたんだ」と気づく。そこへ文吾が鈴と長男の慎吾(番家天嵩)を連れてやって来た。文吾は、救出後の鈴に心が優しく接していたことを知り、彼に殴ったことを詫びる。
何者かによるワープロの一文が今回も登場
また一夜が明けて1月17日、心はふと思い立って長谷川の家に赴く。家の表札に長谷川の名前と並んで「佐々木紀子」という名が小さく(てか小さすぎるよ!)書かれているのを見つけ、心はノートにその名があったのを思い出した。確認したところ、佐々木紀子という女性が平成元年2月にシアン中毒で死亡したとの新聞記事とともに、シアン化カリウムは青酸カリで、メッキ工場で使用するとの書き込みがあった。心はここから、メッキ工場に勤める佐々木が長谷川に青酸カリを渡したのだと推理すると、さらにそこへ通りかかった明音の同級生の男の子二人に、例の落書きに描き込まれた竹とんぼのようなものに見覚えはないかと訊き出す。彼らによれば、それは風速計ではないかという。
これを聞いて、さっそく山中にある風速計のついた小屋を見つけ出した心と文吾。果たしてそこにはぐったりとなった明音がいた。しかし死んではいなかった。心は安堵したのも束の間、そこに現れた金子に、なぜ明音の居場所がわかったのか問い詰められたあげく言いがかりをつけられ、公務執行妨害で逮捕されてしまう。ちょうどそのタイミングで、長谷川が死んだとの警察無線が流れる。真犯人探しは、またしても振り出しに逆戻りだ。
ラストでは前回と同じくワープロの画面が映り、「翼が死んだ。/バカなヤツだが盛り上げてはくれた。/本番まで、あと2ヶ月。/待ちきれない」との文が打ちこまれる。前回も書いたが、本当にこれは誰が打っているのか。あと、明音の失踪騒ぎですっかり置き去りになってしまったが、田中家の火事は結局どうなったのだろうか(予定された日はすぎたから起きなかったと理解していいのだろうか?)。
