←『奥様は、取り扱い注意』1〜10話 全レビューを読む
綾瀬はるか・西島秀俊「奥様は、取り扱い注意」第9話 綾瀬、理想の夫婦になるために西島との対決を決意
イラスト/Morimori no moRi

新型コロナ感染拡大の影響で、各テレビ局はドラマの撮影や番組の収録が行えず、過去の番組の再放送や再編集版、傑作選などが多く放送されている。

2017年10月〜12月に日本テレビでオンエアされた「奥様は、取り扱い注意」が再放送中だ。
エキレビ!で本放送時に掲載した、寺西ジャジューカ氏によるレビューを再掲する(日付などは当時のまま掲載)。

西島秀俊との対決を決意した綾瀬はるか。理想の夫婦になるために


大原優里(広末涼子)のモノローグから始まった、11月29日放送『奥様は、取り扱い注意』第9話。夫・啓輔(石黒賢)の顔を見ながら「なぜ、この人と結婚してしまったんだろう」と心の中でつぶやく、能面のような表情の優里。明朝の起こしてほしい時間を夫から告げられた彼女は「この人にとって私はもう女でも人間でもなく、ただの目覚まし時計なのかもしれない」と、低温度なまま啓輔の寝顔を見つめている。

家庭にいる時の優里は、いつもこうだ。表情が絶望にあふれている。一方、自宅で夫・勇輝(西島秀俊)と会話する際の伊早山菜美(綾瀬はるか)のキラキラした表情はどうか。優里とは、あまりに対照的。何しろ、菜美にとって勇輝は初めて一目惚れした男性なのだから。

“本当の夫婦”になろうと、ようやく渉と向き合った京子


菜美と優里、そして佐藤京子(本田翼)の主婦友3人組はいつも仲良し。日中、ランチをして集まる時などは本当に楽しそうだ。しかし、実はそれぞれの家庭が火種を抱えており、そのどれもが暴発寸前である。


どの家庭が最も危ういだろう? 考えてみたのだが、どこも優劣つけがたい。では、まずは最年少の京子から触れていこう。佐藤家には、亭主・渉(中尾明慶)の浮気疑惑がある。京子は渉の会社帰りを待ち伏せ、尾行を決行した。すると渉は見知らぬ女性と落ち合い、腕を組んでそのままラブホテルへ入って行ってしまった。疑惑が確信に変わった瞬間だ。

こんな夫の裏切りについて、京子は「私にも原因があるんです」と告白する。彼女は、どんな思い当たる節があるというのか?

・旧姓が「浮気(ふけ)」の京子は、高校時代に告白してきた渉と結婚して「佐藤」という普通の名字を手に入れようと考えた。
・子どもの頃は母親が小さなアパートの部屋へ男を頻繁に連れ込んでおり、早く家を出たかった。渉の家庭は広くて大きな家を持っていた。
・京子は渉が全くタイプではなかった。
「私、結局、佐藤くんを利用したんです。
彼は優しいからそんなことわかってても、私の思い通りにしてくれたんです」(京子)

しかし浮気が判明した後、取り繕うための笑顔を渉が見せた瞬間、京子は「この笑顔を誰にも渡したくない」と決意。そして、ついに夫と真正面から向き合うこととなる。

「私は、あなたのことも、お義母さんのことも、この家のことも大好きなの。早く家に帰ってきて」(京子)

義母(渉にとっては実母)の良枝(銀粉蝶)からも「家を出ていきなさい。この子(京子)の思いに応える覚悟ができたら戻ってらっしゃい」と迫られた渉は、家を出ていった。

京子はようやく、渉と本当の意味で夫婦になろうと決意した。今まで京子から夫婦愛を感じていなかった夫は浮気に走ってしまった。ここから、渉の方も伴侶としての彼女と向き合うことになるだろうか? 今回の一件は、2人が本当の意味で夫婦になるための成長痛だ。

夫の変化を見て罪の意識を感じ、“本当の夫婦”になろうと思い改まった優里。しかし……


大原家で不貞を働いているのは、夫の方ではなく妻の優里だ。前述の通り、啓輔に対する優里の感情は冷え切っている。合コンで知り合った年下のイケメン・安西(小関裕太)と密会するひとときに安らぎを求めているのが現状だ。


優里の中にも葛藤はある。「僕たちが初めて出会ったイタリアンレストラン(合コン会場だった場所)でランチを食べませんか?」と安西から誘われ、約束の日時にレストランへ訪れた優里。安西は個室を予約していた。

安西と顔を合わせるや、嬉しさから顔をほころばせる優里。しかし、意を決して発したのは「今日はもう会えないって伝えに来たの」という言葉であった。なのに、安西は行く。「好きです」と迫りにいき、ついにはテーブル上へ優里を押し倒してしまった。安西を嫌いになったわけではない優里は、結局、安西と事に至ってしまった。

その後、悔恨の表情で店を去っていった優里。ちなみに、このレストランの店名は「TRAPPOLA」。日本語に訳すと「罠」の意味がある。

裏切り行為を犯した優里であったが、その直後に啓輔が今までと異なる様子を見せた。
もちろん、不貞について夫にはバレていない。しかし「最近、私が何を考えてるかわかる? あなたは努力してくれてるの?」と優里に迫られ、内面に変化が起こったよう。突然、彼はクリスマスシーズンの家族旅行を提案してきたのだ。長男の啓悟(川口和空)は、もちろん大喜び! 照れと反省が入り混じった表情で「努力してほしいんだろ……?」と語りかけてきた啓輔を見る優里の表情がなんとも言えない。罪の意識を猛烈に感じていることは明らかだ。

啓輔が向き合ってくれようとしているならば、もう優里に迷いはない。改めて安西を呼び出し、再び優里は別れを告げようとする。……が、安西とともに待ち合わせ場所へ現れたのは、組織ぐるみで主婦売春を斡旋する横溝(玉山鉄二)であった。

横溝「昨日、あんたがさっきまでここにいた男(安西)と楽しんだ一部始終を録画させてもらったよ」
優里「何が目的? お金?」
横溝「まあ、そういうことになるかな」
優里「私はただの主婦よ。お金なんか自由になるわけがないでしょ」
横溝「知ってるよ。あんたには売るものがある。俺たちはそれで商売させてもらう。
シンプルな話さ。旦那を裏切って散々楽しんだんだ。快楽にはきちんと代価を支払え!」

なんと優里、主婦売春組織の毒牙にかかってしまった。ようやく、夫と真剣に向き合おうと思った矢先に。

“理想の夫婦”になるべく、勇輝との対決を決意した菜美


この横溝、第8話にて不意に菜美とすれちがっている。優里と京子と歩く菜美を見かけるや、振り返りまでして彼女を視線で追う横溝。菜美は菜美で、車内の横溝を立ち止まって凝視し続ける。この2人は、旧知の間柄?

帰宅した菜美は、勇輝からドイツへの海外赴任の話を打ち明けられる。勇輝は菜美にも一緒に来てほしいと願っている。ひとまず返事を保留した菜美は、特殊工作員時代の同僚・小雪(西尾まり)に勇輝の身辺調査を依頼した。

「なんで今ごろ! 結婚する時に調べなかったの!?」と責める小雪に対し、「彼は信じられるような気がした」「初めての一目惚れだった」と明かす菜美。この“一目惚れ”という部分に、小雪は引っかかる。
菜美は、お金や名誉や安定した生活に惹かれる女ではない。それを知り尽くすからこそ、小雪は危機感を抱いた。

「あんたが欲しがってるものは昔からずっと変わってないはず。あんたはそれを、その人が与えてくれると思ったから惚れたのよ」(小雪)

勇輝と知り合ったのは、受付嬢時代の同僚から誘われて菜美が参加した合コン会場だった。第1話で彼女は、会場内を見回しながら心の中でこんなことをつぶやいている。「温かな家庭を築きたいと思える男は、どこにも見当たらなかった。みんな、私が5秒もかからずに倒せそうな男たちばかりだった」。そんな時に勇輝の姿が視界に入り、菜美の心は高ぶった。生まれて初めて一目惚れに落ちた瞬間だ。

ということは、勇輝は菜美にとって「5秒もかからずに倒せそうな男」ではないことになる。特殊工作員から見ても魅力ある、骨のある男。要するに、勇輝は只者ではないということだ。

後日、小雪から菜美へ「あんたの旦那は間違いなくカタギの人間で、会社も健全だったよ」と報告が入った。しかし、電話する小雪の背後には険しい顔つきの勇輝の姿が。電話を切り、「これでいいんでしょ?」と勇輝に確認する小雪。この時、菜美にはウソの結果報告が行われていたのだ。もちろん、それに気付かぬ菜美ではない。

綾瀬はるか・西島秀俊「奥様は、取り扱い注意」第9話 綾瀬、理想の夫婦になるために西島との対決を決意
奥様は、取り扱い注意/バップ
→Amazonでチェックする

菜美は、自宅で開いたランチ会で「“理想の夫婦”ってどういうことを言うんですかね?」と、優里と京子の2人に質問した。

「夫婦って不思議だと思わない? 目に見えない約束で結びついてるだけの他人なのに、死ぬまで一緒に過ごす前提でいるわけでしょ。いがみ合ったり怒鳴り合ったり、たまには騙し合ったりするけど、結局はそれを許して離れずにいられる存在って、よく考えてみたら異常だよね」(優里)
「それ以上に一番身近で笑い合ったり慰め合ったり見つめ合ったりしてるから、離れられなくなっちゃうんですよ。“理想の夫婦”って、どんなことが起きても離れられなくなっちゃった2人のことを言うんじゃないですかね?」(京子)

“理想の夫婦”の定義を確認した菜美は、決意する。

「迷いは消えた。私は“理想の夫婦”を目指すことにした」(菜美)

今まで騙し合ってきた菜美と勇輝。そして今度は怒鳴り合ったり、もしかしたらそれ以上の事態に発展するかもしれない。しかし、“理想の夫婦”ならばどんなことが起こっても、きっと離れることはないはずだ。

「愛する人との対決の時が、近付いてきていた」(菜美)

次回、このドラマは最終回を迎える。予告映像で流れた菜美と勇輝のやり取りからはキナ臭さしか感じない。
菜美「全部、演技だったのね?」
勇輝 「これまでの自分の人生を思い返してみろ」

2人は、本当に“理想の夫婦”になることができるのだろうか?
(寺西ジャジューカ)
編集部おすすめ