
家族の確執をほどいて最高視聴率マークの「私の家政夫ナギサさん」5話
いきなり瀬川(眞栄田郷敦)がメイ(多部未華子)に「僕と付き合っていただけませんか、結婚を前提に」と言うドアップのシーンではじまったからびっくり。4話の肥後先生(宮尾俊太郎)の再現だった。メイの会社はとにかく仲良しで、メイのこの件をチームのみんなで共有する。
コロナ禍、人と直接に会えなくなって、人恋しくて、Zoom飲みにいそしんでしまった身としては、会社の人たちといきつけのお店で美味しいものを食べながらわいわいしている姿にもなんだか癒やされる。
『私の家政夫ナギサさん』(TBS系 毎週火曜よる10時〜)は誰かを立てたら誰かが立たなくなるのではなく、誰もかれもが肯定されているのでホッとする。お仕事ものであり、恋愛ものであり、ジェンダーについて考える社会的なところもあり、ジャンルミックスドラマの『ナギサさん』。第5回は“ザッツホームドラマ”であり、家族の確執をほどいて、視聴率14.4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)と最高値に。
ナギサさん(大森南朋)の家政婦派遣会社に勤務しているメイの妹・ユイ(趣里)が、母・美登里(草刈民代)と揉めて家出してから3年、なんとか仲直りさせたいメイ。ナギサと相談して、父親・茂(光石研)の還暦パーティーを行うことに。
ナギサはアシスタントとしてマスクとパーティーめがね姿のユイを伴い相原家のパーティーに参加。背格好に特徴のあるユイは明らかにバレバレだと思うのだが、最初のうち美登里は気づかないふり。だが、何かと試すようなことを投げかける。
ユイとナギサと茂は共謀して家族の思い出を盛り上げ、最後はユイが作った料理がキーになり、「家族」だから共有できる出来事が感動を誘った。
トントン拍子に和解は進み、ユイの夫と子供と同居することに。
ところで、趣里は小柄だが、バレエを本格的にやっていて、足を怪我して断念し俳優に転向したので、いまだに身体が天井から引っ張られたようにすっと伸びている。草刈民代はいまは引退してしまったが一流バレリーナであったから、いまだに贅肉のない、良い薄い筋肉で覆われたような身体で、やっぱり首から背中にかけて美しくまっすぐ。多部未華子は作品のためにバレエを習ったことがあるそうで、やっぱり長い首がすっと伸びている。こんなにも家族が似た感じの俳優で占められるのは稀有であろう。姿勢の良い、気持ちの良い、母娘なのである。
おじさん、おばさん世代を熱くする「北斗の拳」
メイの家族問題は解決、そして、仕事面でも新展開、馬場は育休に入り、副支店長・松平(平山祐介)は福岡に栄転。メイがいま関わっている横浜病院の案件は、上司にとって今までで一番の大仕事だから自分もやりたかったが、若い世代に任せるとメイに託す。馬場と松平がいきなり5話で退場してしまうようなのは、コロナ禍で密な撮影を避けるためか、撮影が伸びて平山と水澤のスケジュールがとれなくなってしまったのか、などと考えてしまった。
ホームドラマパートとお仕事パートはなんの関わりもないように見えて、「北斗の拳」でつながっている。「いっぺんの悔いのない人生を目指すんだよ」と「北斗の拳」の名セリフを引用する松平に、母親と同じだとメイは苦笑する。おじさん、おばさん世代のバイブルは熱い少年漫画なのだ。
要するに、おじさん、おばさん世代と若い世代の分断を漫画でつないでいるのである。
そして「ナギサさん」の原作漫画が連載されているコミックシーモアでは「北斗の拳」も読める。ダスキン家事代行サービス「メリーメイド」と合わせて、スポンサーに尽くしまくったドラマなんである。
俳優・大森南朋に開いた新たな扉
さて、ナギサさんはタイトルにもなっている重要な存在だが、今のところ、じつにそっと目立たずに裏方に徹している。メイは、家族が和解したお礼にナギサさんに和牛を贈るが、量が多いからメイの家で一緒に食べようと言われると、すき焼き肉なのに、焼き肉がいいと押し通す。そこはナギサさんにすき焼き食べてもらおうよ……。でもナギサさんは黙って焼き肉を焼く。ほぼメイのために。そしてまたメイの話を傾聴する。仕事だからとはいえ、よくできた人である。そんなナギサさんに驚きの過去が……。いまいち目立っていないナギサさんが後半戦、目立ってくるだろうか。
演じている大森南朋は、「ハゲタカ」をはじめとして渋い役のイメージがあるが、今回「おかあさん」になりたい家政夫。
(木俣冬)
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番組情報
TBS 火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』毎週火曜よる10:00〜10:54
番組サイト:
https://www.tbs.co.jp/WATANAGI_tbs/