
シソンヌ登場 『親バカ青春白書』2話
映画『今日から俺は!!』が大ヒット上映中の福田雄一を中心に制作されたオリジナルドラマ『親バカ青春白書』(日本テレビ系 毎週日曜よる10時30分〜)はムロツヨシと永野芽郁による父娘(おやこ)もの。『今日俺』から毎週ゲストが出ることになっていて、第2回は鈴木伸之とシソンヌじろうと長谷川忍が華を添えた。第2回のテーマは「娘の恋心に親はどう向き合う?」。
ひたすら畠山をじぃっと見続けるさくら。深田恭子と多部未華子と共演しているUQのCMで固まっているときの顔みたいである。お人形さんのような表情が似合うのが永野芽郁である。
畠山は彼女よりもガタローが好きと第1話で発言しており、さくらは彼が同性を好きなのだと思って諦め気味。だがじつはガタローに恋していたわけではなく、書いた小説のファンなのであった。ガタローの弟子入りを望む畠山は、大学の片隅の土地に畑をつくり、作物を育てることで男を見せようと奮闘するが、熱中症で倒れてしまい……。
あらすじをざっとさらうと、ごくごく普通の内容。『オヤハル』はそこに畠山の住む広くておしゃれなのに賃料がいやに安い部屋が“事故物件”であるというエピソードをプラスしている。
ニヤニヤ笑って見られる、要素盛りだくさんのビュッフェ方式ドラマ
畠山の部屋に怪奇現象が起きると聞いて興味を持つさくら、寛子(今田美桜)、根来(戸塚純貴)、美咲(小野花梨)。ガタローも一緒に問題の部屋へと向かう。ところが、その事故物件の話は全然本筋に関わってこないのである。娘に良い守護霊がついているという話をお母さん(新垣結衣)であろうと良い話につなげてはいるのだが。事故物件の話はさほど発展しないまま、畠山の部屋にガタローの小説(初版)が並んでいて、畠山の小説しかなくて、小説の内容を諳んじるほど好きであることをアピールする畠山。これはムロの代表作『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS / 脚本:大石静)のオマージュであろう。『大恋愛』ではヒロイン(戸田恵梨香)がムロ演じる作家のファンで、内容を諳んじることができるのだ。すなわち、『オヤハル』では中川大志は戸田恵梨香の役割をしているということだ(嘘)。
「ここにあるのは全部初版だよ」とさくらは感動する。ファンやマニアは初版を大事にするのだ。でも第1話でガタローはヒットは一作のみらしいので、ほとんどの作品が重版しないまま初版のみなのではないだろうかと想像するが、そういうことにもいっさい触れない『オヤハル』。事故物件も小説家の仕事の詳細も興味のない人には興味がないので、俎上にあげることはするが深堀りはしない。
畑作業で倒れた畠山は、自分が普通であることにコンプレックスがあったと言う。
ガタローはとにかく、娘に男を近寄らせたくない一心で思いつくまま言っているだけなんだと思うが、畠山は「(普通であろうとそうでなかろうと)自分を肯定できればいい」という教訓を勝手に読み取る。
事故物件の件も、霊媒師が本物で、お祓い以来消えてしまったとほのぼの終了。この、耳に馴染みのあるキャッチーめな言葉だけ出てきて、それに関する細かいことには触れない感じ。既視感あるなあと思ったら、朝ドラ「エール」だった。音楽家の話だが、音楽についての歴史や詳細は深堀りしないで、そこは視聴者の各々の知識の範囲でご自由にどうぞという感じ。
ナイーブな主人公、気の強い妻、モテる親友……みたいにわかりやすい属性のキャラや、音楽、戦争、友情、家族……いろんなことを好きなだけ楽しむビュッフェ方式なドラマである。気がつけば、劇伴を担当している音楽家が瀬川英二で同じであった。過剰に音楽で誘導することもなく、邪魔しない、心地よく楽しげな劇伴である。
最近、この手の、掘り下げたい人は勝手に自分で掘り下げる(脳内補完)、要素は盛りだくさんのビュッフェ方式ドラマが流行っているのだろうか。「私の家政夫ナギサさん」もそれに近い気がする。

作り手の狙いが過多でもなく、親しみやすいキャラがたくさんいてわちゃわちゃしている。
事故物件も全然怖くなく、なんだったのかわからないと思っていたら、最後にちょっとだけ触れられる。テンポもじつにゆっくりしていて、2倍速で見てもいいくらい。大学の先生役の野間口徹が公式サイトで「ご覧頂いた方々が、余計な事を考えず、ただただニヤニヤ笑って過ごす1時間を提供出来れば、これ幸いです。」とコメントしていて、まさしくそのとおりのドラマだと思う。
(木俣冬)
※次回3話のレビューを更新しましたら、ツイッターでお知らせします。お見逃しのないよう、ぜひフォローしてくださいね
番組情報
日本テレビ『親バカ青春白書』毎週日曜よる10:30〜
番組サイト:
https://www.ntv.co.jp/oyabaka/