
ジャニーズ事務所を退所し、完全独立の道を選んだ中居正広
「ありがとうございました。それじゃあ、また。じゃあね」3月31日、ジャニーズ事務所の退所日に事務所公式サイト「Johnny's net」に最初で最後のコメント動画をアップした。
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3月末で30年以上に渡って所属したジャニーズ事務所を退所。個人事務所「のんびりなかい」を設立し、完全独立の道を選んだ。のちに振り返ったときに、人生のターニングポイントの一つとして挙げるであろう記憶に残る47歳だったのではないか。
「集大成じゃないけど、ここはしっかり」 退所会見の裏側
2月21日、報道陣を迎えるようにして行った記者会見。経緯を説明するに留まらず、自作の「フラッシュの点滅にご注意ください」プラカードを用意して、一人芝居あり、笑いありの、まるでトークライブを見ているような会見を一人で乗り越えた。この後に外出自粛要請が出たことを思えば、ピンポイントと呼べる絶妙なタイミングだった。亡きジャニー喜多川氏や父親に「力を貸してくれ」と祈ったというが、願いが届いて最高の晴れ舞台を用意してくれたのではないかと思えてくる。
8月14日放送の「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)では、ゲストの菅田将暉から退所会見について聞かれ、ごく自然な流れで舞台裏について明かした。
会場の壁の色にもこだわったという退所会見。コンサートを作るのに近い感覚だったと中居。
「ジャニーさんからショーアップに対するものはすごく刷り込まれているから、あの会見も一人だし。エンターテインメント、もちろんユーモアをもって緩急つけた会見にしなきゃいけない。来た人に喜んでもらって帰ってもらいたいなっていうのは第一にある」
「集大成じゃないけど、ここはしっかりしないといけないなとは思っていた」。
SMAP時代から続く演出が光った会見。「理想に近かったかといえば、理想には近かったかもしれない」というからなによりだ。
中居と腕時計
夏と冬でつける腕時計を変えているという中居。会見の前日、腕時計のベルト調整をしに家電量販店に行ったと後日ラジオ番組で明かした。その時計は、中居が2001年の父親の誕生日にプレゼントしたもので、お祝いの言葉と名前の刻印入り。「ちょっとパパさん力貸してくんねーかな」と、腕時計とジャニーさんの遺骨が入った小瓶をお守りに会見に臨んだ。退所にあたってはKis-My-Ft2から、メンバー7人がお金を出しあって購入した高級腕時計が贈られた。中居は「音楽の日2020」にデビューさせ、横一列に並ぶキスマイのメンバーに腕をまくって時計をみせた。
後日のラジオでは、「これ、7人からもらったんだっていうのはちょっと自慢になるよね」と、“ちょっとどころ”ではない様子。腕時計と一緒に大きなシャンパンも贈られたが宮田に預けているという。大きなボトルを「嫌がらせ」といじったが、一緒に飲む日を楽しみにしているのではないか。キスマイ10周年のお祝いのタイミングだろうか。SMAP時代、ツアーの最終日にシャンパンで乾杯していたことを思い出した。
必ずといっていいほど腕時計をしている中居だが、あともう一つ。生放送の時間ギリギリまでトークを続け、余りもせず途切れることもなく時間ぴったりに番組を締めくくる“精巧な時計”も持っている。
「スーパースター」中居と後輩たち
中居の退所にあたって「スーパースターなの」とラジオで語った堂本光一。堂本剛も「お元気そうで」と、退所の前後から今なお、後輩たちが中居とのエピソードを明かしている。退所後の大仕事といえば、7月17日放送の音楽特番「音楽の日2020」(TBS系)。今年も安住紳一郎アナと一緒に、約9時間半にも及ぶ生放送番組の司会を務めた。
番組恒例ともいえる後輩グループとの絡みも、今年はソーシャルディスタンスを保たなければならず、少々寂しくなるのではと予想していたが、それも杞憂に終わった。
Kis-My-Ft2の宮田俊哉が好きなアーティストのステージに応援にかけつけたことを筆頭に、KinKi Kidsとのやりとりもたっぷり。ジャニーさんが被っていたのと同じ帽子を被って登場した堂本光一に「帽子を取れ」とジェスチャー。こういう絡み方があったか!
「僕も久しぶりに歌ってみようかなと思っちゃったんですよ、どうですか大野さん?」という中居のフリに、「お前は歌うな!」と嵐の大野智が応戦。「うたばん」時代から続く下剋上コントを嵐総出で繰り広げた。また、今年デビューしたばかりのSixTONES ジェシーからのじゃんけんギャグを誘ってひと悶着。新しい絡みも生まれた。
NEWS 増田貴久はメンバー脱退後に出演した「音楽の日2020」のことをラジオで振り返り、「こんな優しくてカッコ良くて、包んでくれる先輩いるんだな」。V6の井ノ原快彦も「しゃべくり007」(日本テレビ系)で、「NHK紅白歌合戦」の司会に抜擢されたときに、中居からかけられた言葉を明かした。
本番中に気を付けた方がいいこと、歌のあとにすかさず言葉を挟むのではなく、余韻を残した方がいいという技術的なアドバイス、終盤には激励の言葉をかけてもらったことなどを語った。後輩に限らず、番組共演者からも助け舟を出してもらったというエピソードが聞こえてきた。
中居に関するエピソードや話題は、もう数え切れないほど出てくる。後輩や共演者が、言葉にして伝えてくれるほど良好な関係を築いてきたこと、それほど愛される人柄であること、表舞台からは見えないが、長年見てきた姿と変わらない様子が伝わってきて胸に迫るものがある。
ジーンと浸る間もなく、メディアを通してわちゃわちゃしているのがV6の三宅健。中居が自宅で10年ほど前にもらった除湿機を発見し、初めて使ったらあまりの快適さにハマり、3台目の購入を迷っているとラジオで語っていた。これをネットニュースで知った三宅が、ラジオ番組で「なにを今さら」とマウントを開始。除湿器に関しては自分の方が先輩だとして、6台稼働していることをアピール。この一件が中居に伝わり、「V6だから?」と応戦。頭にきたと「一気に5台買って7個にしようかな」、「三宅より全然買えるし! 全然買える!」と中居。“奇跡のおじさん”たちの除湿器騒動はまだまだ続きそうだ。

中居と中居面
今年2月。事務所の退所の発表後に、ラジオでは久しぶりにリスナーと電話をするコーナーが行われた。中居ファン=中居面(ナカイヅラ/俺のこと本当にわかってる? ファン面してない? という意味)とちょっとユニークなトークを交わした。モノマネを披露して賞金2万円をゲットしたファンが、「中居くんのために使う」と言えば、「応援してくれる人に寄り添おうと思ってない」と中居。ちょっと冷たく聞こえるやりとりもどこ吹く風。
変わらず仕事を続ける姿。初めての社長業に戸惑う様子。コロナ渦の影響で、独立してから仕事してないと言いつつも、自粛期間中は収束したら何をしたいか考えてみようと提案、絵本の読み聞かせをしようと企画したが著作権の問題で簡単ではなかったこと、一番美味しいしょうが焼きを見つけたという小さな発見……。なんでもないことから、大切なことまで、中居の言葉はいつも前を向かせてくれる。
医療従事者に向けて、中居から焼き肉弁当の差し入れがあったとSNSを通じて知った。ファンとしては誇らしい気持ちになったのと同時に、SMAP時代から続くチャリティ活動、誰かのために何かをしたい、楽しませたいと奮闘し続ける姿を改めて尊敬する。
努力、努力……の末に得た力をどう使うのか、「こんなとき中居くんだったらどうするかな?」と、頼れる存在の一人として思いを巡らす人もいるのではないだろうか。
ファンクラブの発足、そろそろ歌とダンス、演技を……などなど、要望は尽きないが、高校生のときに「司会者になる!」と決意してから、変わらず活躍する姿はカッコいい。
最後になりましたが、48歳のお誕生日おめでとうございます。
(柚月裕実)
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