三浦春馬さん遺作ドラマ『カネ恋』 最後に明らかになった玲子(松岡茉優)のヤバみ・意外な展開にびっくり
イラスト/ゆいざえもん

なるほどーそうくるか!『おカネの切れ目が恋のはじまり』1話

『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系 毎週火曜よる10時〜)の第1話は想像していたものとちょっと違う意外性のあるドラマだった。

倹約家の主人公・九鬼玲子(松岡茉優)と浪費家の猿渡慶太(三浦春馬)。経理部に異動してきた猿渡を玲子が鍛える。
正反対の二人のおカネと恋の物語――こんなふうに思っていたのだが……いや、おおむねこんなふうだったのだが……最後、びっくりさせられた。なるほどーそうくるか!

まずは1話の概要から。

主人公・九鬼玲子は極楽寺駅にある民宿・みずよう館という民宿が実家で、その離れにある庵が彼女の部屋。「方丈記」が愛読書で、「清貧」を愛している。会社では「世捨て人」と呼ばれている。

土曜日の朝、鎌倉に出て、130円のくるみクッキーを1枚だけ買い、そのひとつを丁寧に味わう玲子。

「ああ……良き」

こうして倹約生活を送ってきた玲子は、その日、「1年ごしの恋の相手とやっと結ばれる」という表現で、1680円の猿柄の豆皿を購入しようと心踊らせていた。

ところが、突如、店に現れたちゃらっとした猿渡が、バーベキュー用の皿として、ほかの皿と一緒にまとめて購入していってしまう。

にっくき猿渡慶太。彼はおもちゃ会社モンキーパスの社長・猿渡富彦(草刈正雄)の息子だった。おカネの使い方が荒すぎて、営業から経理に異動させられ、玲子が新人教育を任される。

富彦にカードを止められ、マンションも売却され、無一文で住む家のなくなった慶太は、玲子の家の民宿に転がり込む(ただし母親・菜々子<キムラ緑子>が大金をフォロー)。


家でも会社でも一緒になる玲子と慶太。あまりに違う金銭感覚に玲子は呆れるばかり。

「消費するから日本の経済がまわってる」と履き違えている慶太。これまで会社に経費請求したことがなく、全部自腹。でもそれは家族カードというお坊ちゃん感覚。

対して玲子は「清く正しく心静かに生きていきたい」「物って繕うほどに愛着がわくと思うんです」と、割れた器も金継ぎして大切にする倹約家。

玲子は、公認会計士でコメンテーターなどもやっている人気者・早乙女健(三浦翔平)に15年越しで憧れている。彼は「美しく生きるためには美しくお金を使いたいですよね」とテレビで持論を語っていて、どうやら玲子は彼に影響されているらしい。

そして、もうひとりの重要人物。営業部のエース板垣 純(北村匠海)。仕事のデキる彼だが、最近様子がおかしい。

折しも、会社の限定グッズなどがフリマアプリに続々出品されていた。
これはある意味、横領である。

玲子は“ほころび”が気になるという表現で、フリマアプリ出品犯人探しをはじめる。その流れで、板垣の家が貧しく、奨学金の返済を200万以上も抱えており、経費を切り詰めるなど苦労していることがわかる。

「お金の悩みのいちばんの切なさってなんだと思いますか? ヒトに相談できないことです。恥ずかしくて 後ろめたくて 頼れなくて。だからひとりで抱え込んで、もっと苦しくなる」(玲子)

「人生ってなんなんですかね」とやけになる板垣を、「ガッキーさんの領収書好きなんです」「清くて美して癒やされるから」と玲子は励ます。そして、「お金を嫌いにならないでください」とも。

清く正しく美しく生きる玲子だが…そこはやはり松岡茉優

ひたすら潔癖な玲子は、板垣の“ほころび”を繕い、慶太の“ほころび”も絶対に繕ってみせます! と、スーツのボタンまで縫う。玲子がこうやって経理と人々の心の“ほころび”を繕って浄化する話は、ミスチルの主題歌「turn over?」も爽やかで、きれいにまとまってるなと思ったら、このあとにまさかの展開が待っていた。

1話の最後の最後にきて、ようやく、玲子を松岡茉優が演じている意味がわかるのである。だって、松岡茉優だもの。清く正しく美しくと、ただただちゃんとしている役のわけがなかったのだ。

映画『勝手にふるえてろ』で演じた妄想少女が松岡のブレイクポイントだが、好きなハロプロ愛について語るときのキレッキレな感じなども含め、松岡茉優はどこか行き過ぎた人物が似合う。
涼しげな顔と声ながら、心の中は熱く滾(たぎ)っている。わさびチョコを食べたときのような違和感。予想外のものが内側から出てくるから、対処のしようがなく、怖い。そこが気になる。クセになる。そんなヤバみが松岡茉優にはある。それが、「カネ恋」にも付加されていた。どうやら正統派のお金とラブコメではなさそうだ。

三浦春馬さん遺作ドラマ『カネ恋』 最後に明らかになった玲子(松岡茉優)のヤバみ・意外な展開にびっくり
第2話は9月22日放送。画像は番組サイトより

そんな松岡茉優とコンビを組むのが三浦春馬。清く正しくと言いながら、どこかズレている玲子のヘンさと比べると、慶太のほうは天真爛漫で純粋で、松岡の陰に対して、三浦のどこまでも明るい振る舞いがドラマの救いになっている。

度を越した浪費家、つまり感覚がぶっ飛んでいる。本当はおもちゃを作りたくてたくさんデザインしている。
まりあ(現役宝塚歌劇団の娘役・星蘭ひとみ)が好きで甘えまくるが、結婚するにはお金の使い方が荒すぎるとフラれてしまうという、絵に描いたような自堕落で甘い人物を、どこまでも感じよく演じる裁量はさすがである。

あの無垢過ぎるキラースマイルは唯一無二だし、「会いたかったから会えたんだもん。すごく嬉しかったんだもん」なんてセリフと目線、なかなか成立させられるものではない。

共感度という点では、板垣の置かれた状況のほうがわかりみはある。飲まないし食べないのに割り勘の飲み会への疑問は本当にそう思う。ただ、お弁当を買ってからほかのお弁当も食べたくなってつい買いすぎてしまう慶太の心境もわかる。なにかと心くすぐるドラマである。

古都・鎌倉の風景、庵の四畳半のミニマムなインテリア、しゃべるロボット等かわいいおもちゃ……とアイテムもしっかり揃って、もはや、「TBS 火曜10時」ドラマには安心のパッケージ感。視聴率は11.6%だった。
(木俣冬)

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番組情報

TBS 火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
毎週火曜よる10:00〜10:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
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