『おちょやん』第1週「うちは、かわいそやない」

第4回〈12月3日 (木) 放送 作:八津弘幸、演出:梛川善郎〉

『おちょやん』第4回 千代の継母追い出し作戦「追い出される前に追い出したらあ」
イラスト/おうか
※本文にネタバレを含みます

ヨシヲが行方不明

千代(毎田暖乃)が父・テルヲ(トータス松本)と鶏の流星丸を売りに行っている間に弟・ヨシヲ(荒田陽向)がひとり山に入り、あいにくの雨で足を滑らせ歩けなくなってしまった。

【前話レビュー】人間の本質を見つめる物語と名優たちの人間力でドラマを見せる心意気

家に帰ってこないヨシヲを村総出で捜索。「ヨシヲ」「ヨシヲ」「ヨシヲ」と第4話でその名が呼ばれた数30回以上(語りなども含み)。
これで、千代の弟・ヨシヲの名前をしっかり覚えることができた。

ヨシヲを探して千代まで迷子になってしまうも、それが功を奏してヨシヲを発見。亡くなった母・サエ(三戸なつめ)と弟を守ると約束しているから、怪我して歩けないヨシヲを背負って帰る。小さい子が小さい子を背負って歯を食いしばって一歩一歩前進する姿は涙を誘う。

帰り道、美味しいニオイに誘われて、不思議な食べ物をたらふく頬張っていると、それはブタの餌(食パンの耳)で、ブタの餌を食べたらブタになってしまう……と慄(おのの)く千代。幼さと背伸びが同居する子供の世界を描く第4話。ともあれヨシヲが無事でよかった。

千代 VS 栗子

ヨシヲが行方不明になったわけは、3話栗子(宮澤エマ)が冷たくしたからかと思ったら、帰ってくるまで近隣の小林さんの家に行っておけと言ったのに、ひとりで勝手に出ていったのだと人のせいにする栗子。

嘘を言ってるのか、そのやりとりがカットされてるのか、よくわからないのだが(たぶん省略されている)、いずれにしても栗子は性悪で、子どもたちを奉公に出せばいいと言い出す。

ひどい話であるが、千代は負けない。「追い出される前にこっちが追い出したらあ」と不敵。そこはさすが『半沢直樹』の第一シリーズの脚本を書いた八津弘幸。

『おちょやん』第4回 千代の継母追い出し作戦「追い出される前に追い出したらあ」
写真提供/NHK

千代の考えた作戦はうまくいくかと思いきや、あえなく失敗に終わる。
「出ていくのはあんたのほうや」と栗子は高笑い。

『白雪姫』『シンデレラ』『ヘンゼルとグレーテル』など童話に登場する継母そのものの栗子でも、生みの母を知らずに育ったヨシヲにとっては母であって、お腹をさすっていたことを心配して薬草を渡す。

言葉数の少ないヨシヲ。栗子追い出し作戦のとき、焼き鳥を焼いているときも、ぼーっと見ている。お腹がすいてばっかりいるから食べたかったのではないか。燃やしちゃってもったいない。

栗子役の宮澤エマは期待の俳優

「継母」「毒親」「悪妻」のイメージを全面的に引き受けている栗子役の宮澤エマは、先日、三谷幸喜脚本の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』に北条時政の娘・阿波局役で出演することが発表になったところ。

三谷作品には、映画『記憶にございません』、舞台『日本の歴史』に出演して、溌剌とした演技で注目されている。先日まで、大竹しのぶ主演の『女の一生』でも、貿易で財を成した家の次女で、音楽を学ぶふみを艶やかに快活に演じていた。とても華があって目を引く存在。舞台――主にミュージカルで活躍していたが、今後は映像でも活躍の場が増えていきそうだ。

びっくりなのは、第78代内閣総理大臣だった宮澤喜一の孫娘であること。家柄は演技とは関係ないとはいえ、ある種の親しみを感じさせる強みにはなる。


『おちょやん』第4回 千代の継母追い出し作戦「追い出される前に追い出したらあ」
写真提供/NHK

馴染みのない言葉

「だんない」は「心配ない」のこと。方言はいいとして、「女郎まがいのスベタ」。ここではあえて説明はしないが、なかなかすごい言葉を出して来た。

BK(大阪局)朝ドラおなじみの俳優たち

ブタを飼育している彦爺を演じている曾我廼家文童は『べっぴんさん』では執事・忠さんをはじめ、数多くの朝ドラに出演、愛嬌と人情味あふれる演技でドラマを彩っている。『よーいドン』(82年度後期)ではヒロインの夫役も演じた。千代がこれから足を踏み入れる演劇の世界のモデルとなる松竹新喜劇出身の俳優。

駐在役の海原かなたは漫才の相方・海原はるかと並んで大阪朝ドラの常連。先日、海原はるか・かなた共にはコロナ感染したと報道されていた。お大事にしてほしい。

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

■杉咲花(竹井千代役)プロフィール・出演作品・ニュース
■成田 凌(天海一平役)プロフィール・出演作品・ニュース
■トータス松本(竹井テルヲ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■宮澤エマ(竹井栗子役)プロフィール・出演作品・ニュース
■三戸なつめ(竹井サエ役)プロフィール・出演作品・ニュース
■烏川耕一(小林辰夫役)プロフィール・出演作品・ニュース
■海原かなた(駐在役)プロフィール・出演作品・ニュース
■渡辺知晃(駐在役)プロフィール・出演作品・ニュース
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番組情報

連続テレビ小説『おちょやん

【放送予定】
2020年11月30日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り

<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)

<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送

<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

:八津弘幸
演出:梛川善郎
音楽:サキタハヂメ
主演: 杉咲花
語り・黒衣: 桂 吉弥

主題歌:秦 基博「泣き笑いのエピソード」
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