『危険なビーナス』9話 伯朗から情報を引き出す兼岩夫妻、腑に落ちない蔭山 「楓さん」と呼んだ明人
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

オープニング映像に犯人のヒントが!? 『危険なビーナス』9話

12月6日放送『危険なビーナス』(TBS系)第9話を観て真っ先に思ったのは、蔭山元美(中村アン)が魅力的すぎるということ。ルックス良し、聡明な頭脳。こんな女性が身近にいたら、筆者なら一発で好きになってしまうだろう。


【前話レビュー】嘘が下手な伯朗が鉄壁の楓にカマをかける。その窮地を救ったのは勇磨の一芝居?

義兄・伯朗に惹かれる楓の素性を怪しむ蔭山

矢神家の相続争いをテーマにスタートした今作だったが、もうストーリーの軸はそれだけではない。とっちらかったテーマの中で今、特に興味深いのは手島伯朗(妻夫木聡)を巡る矢神楓(吉高由里子)と蔭山の牽制のし合いである。

また、伯朗がダメ男なのだ。現時点で伯朗が引っかかっていること、疑問を蔭山はリストアップした。その中でどれが最も悩ましいか問われた伯朗は「楓の裏切り」を挙げてしまう。おいおい……。
母・矢神禎子(斉藤由貴)が殺された原因や、弟・矢神明人(染谷将太)失踪の理由よりそれを選ぶのかよ!

翌日、伯朗は抱きしめてしまったお詫びと日頃の感謝の印として蔭山に手作りシフォンケーキをプレゼントした。

蔭山 「初めてですよ、男の人に手作りスイーツもらうなんて」
伯朗 「あぁ〜、気持ち悪いか」
蔭山 「いえ、チョコペンでメッセージが書いてあったら引いちゃいますけど……」

箱を開けると、シフォンケーキにはチョコペンで「いつもありがとう」とメッセージが書かれていた。でも、蔭山は引かない。むしろ、こっそり笑顔になって喜んでいる。

このタイミングで楓と矢神勇磨(ディーン・フジオカ)が動物病院を訪れた。楓に裏切られたと憤る伯朗は「何しに来た?」と冷たい態度だ。
その後、楓の視界に伯朗のシフォンケーキが入る。

 「シフォンケーキですか。もしかしてこれ、お義兄様の手作り?」
蔭山 「ええ」
 「へえ〜。お義兄様、こんなの作れるんだ」

伯朗が焼いたシフォンケーキを見て楓は明らかに傷ついた。聡明な蔭山は引っかかる。楓は明人の妻のはずだ。
なのに、どうして伯朗に惹かれているのか。やはり、彼女は明人の妻でも伯朗の義妹でもない。

「楓さんのこと、私も一緒に調べます」(蔭山)

多くの人間から「明人の妻ではない」と疑われる楓だが、「どこの馬の骨ともわからない遺産目当ての女」と楓を蔑視する矢神家と、蔭山が楓を怪しむ理由は全く異なる。さらに言えば、蔭山は明らかに伯朗に好意を抱いている。頭が切れるはずなのに、彼女だけカオスな状態で楓の素性を疑っているのが切ない。

兼岩家で話した内容をそのまま言う楓の母

“最強タッグ”を名乗るほどだった伯朗と楓だが、9話では伯朗と蔭山がバディだ。

兼岩家を訪れた伯朗は楓への疑念を告白する。
そして、楓の実家がどこにあるか探ってほしいと順子(坂井真紀)に依頼した。

「たしか、前に葛飾で焼き鳥屋をやってたって。お姉さんはフランス人と結婚して、向こうでワイナリーをやってるって言ってた。それが本当かどうか確かめたい」(伯朗)

後日、伯朗は蔭山と共に葛飾の焼き鳥屋を訪れた。楓の両親が営んでいると順子から教わった店だ。蔭山は楓の母と思わしき女性(山下容莉枝)に声を掛けた。
人の良い伯朗と違い、蔭山は嘘も上手い。

蔭山 「私もJALのCAで(楓とは)何度も同じフライトに。楓さん、ご結婚されたんですね」
女性 「ええ。アメリカのシアトルっていうところで。って言われても、どの辺だかさっぱりなんですけどね。突然電話がかかってきて、結婚したって事後報告」
蔭山 「たしか、お相手の方はシアトルで会社をやられてるとか」
女性 「そうみたいなんですけど、まだお会いしてないんですよ。
こっちはご両親にも挨拶しないといけないと思ってるのに、あの子に連絡しても今は忙しいって」
伯朗 「突然結婚したなんて聞いて驚いたんじゃないですか?」
女性 「うちは、あの子の姉も突然でしたから。しかも、相手はフランス人で向こうでワイナリーやるなんて言って。それに比べればお好きにどうぞみたいな」

怪しい。伯朗が兼岩家で話した内容をこの女性はそのまま話している。つまり、兼岩夫妻がリークして口裏を合わせたということ。この女性もこの焼き鳥屋も、きっと仕込みだ。ニコニコしながら兼岩夫妻は伯朗が楓について知る情報、さらに矢神家の内情をどこまで掴んだのかを的確に引き出していた。

伯朗 「結婚も仕事もお姉さんのことも全部、彼女が話していた通りだった。お母さんも嘘をついてるようには見えなかったし。やっぱり、楓さんは本当に明人の嫁なのかもしれないな」
蔭山 「私は逆に怪しく感じました。楓さんと口裏を合わせたように、必要な情報だけ出してきたからです。何だかおかしいですよ、絶対」
伯朗 「考えすぎじゃないかな」
蔭山 「やっぱり、副院長はどうしても楓さんのことを信じたいんですね。もう、とことん信じ抜いてみたらどうです? 怪しくても、周りに何と言われても、楓さんのことを信じて信じて信じ続ける。そのほうが副院長には似合ってると思いますよ」

伯朗と別れた後に蔭山が病院へ戻ると、楓が訪ねてきた。

「楓さん。副院長は今でもあなたのことを信じてます。あなたのことが気になって、放っておけなくて、どうにかして自分の手で助けたいって思ってます。あなたが何者かは知りません。だけど、これ以上副院長のこと傷つけないでください。お願いします」(蔭山)

蔭山は楓のことを怪しんでいる。でも、伯朗を想って自らは身を引き、楓への気持ちが成就することも願っている。切なすぎるキーマンだ。

『危険なビーナス』9話 伯朗から情報を引き出す兼岩夫妻、腑に落ちない蔭山 「楓さん」と呼んだ明人
最終回は12月13日放送。画像は番組サイトより

妻の楓を「楓さん」と呼んだ明人

楓の正体を疑う支倉百合華(堀田真由)も焼き鳥屋の前で身を潜めていた。店を出た楓の母の後を尾ける百合華だったが、何者かに捕まりさらわれてしまう。連れて行かれたのは明人が監禁される部屋だ。

「君も拉致されちゃったんだ? 近付きすぎたようだね、楓さんに」(明人)

気なる言い方だ。「君“も”近付きすぎたようだね」の「も」とはどういうこと? 百合華だけでなく明人も楓の正体を詮索し、近付きすぎてさらわれたと受け取れるのだ。

さらに、自分の妻を「楓さん」と呼んでいるのも引っかかる。矢神家の親族会で勇磨が公開した動画では、明人は「僕の妻を紹介します、楓です」と言っていたはずなのに。そもそも、あの動画が本物なのかも怪しい。この程度のフェイク動画、今なら簡単に作れるはずである。

もう1つの注目ポイントはメールアドレス。囚われの明人が見せられたメール「あなたの母親が譲り受けた貴重なものは、どこにあります? 教えてくれなければ、あなたを殺します」の発信主のアドレスは「zsrjlp@jmail.cam」だった。そして、伯朗に届いたメール「あなたのお母さんが譲り受けた貴重なものを見つけてください。明人さんと交換します。警察に連絡したら明人さんを殺します」のアドレスも「zsrjlp@jmail.cam」である。そして、楓の携帯に届いたメール「支倉百合華を拘束した」のアドレスは「jhskro.m@jmail.cam」だ。「zsrjlp@jmail.cam」と「jhskro.m@jmail.cam」の発信主は監禁の共犯者同士だろう。

次回(最終話)予告で伯朗はこう言っている。

「やっぱり、あなただったんですね」

メールの発信主、つまり監禁の主犯との会話だと予想できる。「あなた」ということは、伯朗は自分より年長者と対話している。だから、相手は楓でも勇磨でもない。あと、このセリフを口にしたときの伯朗の背景にはふすまがあった。ズバリ、小泉家にいたように見えたのだ。

伯朗と明人以外でこの家に自由に出入りできるのは兼岩夫妻だ。今一度、ドラマのオープニングを確認してほしい。登場人物の顔が次々と映る中、兼岩憲三(小日向文世)と順子だけがニヤリと口角を上げている。

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Writer

寺西ジャジューカ


1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。『証言UWF』シリーズ『証言1・4』、『証言「橋本真也34歳小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言 長州力』(いずれも宝島社)等に執筆。

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番組情報

TBS 日曜劇場『危険なビーナス』
毎週日曜よる9:00〜9:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikenna_venus/