『危険なビーナス』波恵の“いい人化”も伯朗の父子関係も使用人の君津も中村アンも、全部怪しい5話
イラスト/ゆいざえもん

とうとう“部外者”伯朗が“当事者”になる『危険なビーナス』5話

正直、話が進むにしたがってテンションが徐々に落ちてきていた『危険なビーナス』(TBS系)だが、11月8日放送の5話でなんとか持ち直したようだ。これまでは「あいつが怪しそうだ」と腹の探り合い、考察合戦に終始していたが、今回は支倉祥子(安蘭けい)がどストレートに康治(栗原英雄)殺しを目論んでおり、スリリングさは4話までの比ではない。

【前話レビュー】伯朗は母に教わった“人を信じる心”で墓穴を掘る? 信頼できない矢神家と楓

使用人の君津は矢神家に恨みがある?

「私たちはミッションをやり遂げるチームよ。ワンティーム!」(祥子)

夫・隆司(田口浩正)を脅して土下座させるわ、『半沢直樹』(TBS系)ばりの“祥子劇場”が展開された5話。
とにかく「チーム祥子」は常軌を逸している。遺産目当てに康治を殺すため、浮気していた隆司とその相手である看護師の永峰杏梨(福田麻貴)を家に置き続けたのだから。

そして、気になるのは祥子の浮気相手となる使用人の君津光(結木滉星)だ。身を委ねるには危険すぎる祥子と関係を持ち、躊躇なく隆司の酸素吸入器をオフにしていた。祥子に言われたからという理由だけで、そこまで冷徹になれるものか? 君津は君津で個人的な目的を持っている気がする。もしかして、矢神家に恨みがあるのだろうか?

波恵は禎子の遺品のアルバムに細工した?

疑心暗鬼が渦巻く矢神家だが、観ているこちら側も疑心暗鬼になっている。

“開かずの間”で、母・禎子(斉藤由貴)の遺品を見る手島伯朗(妻夫木聡)に寄り添った波恵(戸田恵子)
母が遺したアルバムを手にし、一度は閉じた伯朗に続きを見るよう波恵が促すと、最後のページに伯朗と禎子、康治が一緒にいる写真が貼ってあった。

「兄(康治)が貼ったんでしょう。あなたを含め、ずーっと4人家族と思っていたのですよ」(波恵)

いきなり“いい人化”する波恵が怪しい。最後のページにこんな風に写真1枚が貼ってあるのも取って付けたように感じる。そもそも、この遺品は波恵だけが出入りできる開かずの間で保管されていたものだ。波恵が何かしらの意図でアルバムをいじったとも考えられる。
波恵のアシストで祥子の計画を防ぐことにはなったが、伯朗の仲間になったと考えるのは早計だ。

というか、祥子の悪企みに勘付いていたならば、波恵が自分で阻止すればいいのでは? 手紙を出してまで伯朗の背を押すというまどろっこしいやり方で祥子の足を引っ張った長女。つくづく、矢神家の人間は信用できない。

いきなりいい話になる康治―伯朗の親子関係が信じられない

波恵に別の意図があろうとなかろうと、伯朗はたった1枚の写真をきっかけに窮地の康治を救い出した。

康治は、伯朗が獣医の道を選んだのは動物実験をしていた自分へのあてつけだと思っていた。

「僕は単純に動物が好きなんです。あなたのことは関係なく、ただ純粋に動物の医者になりたかったんです」(伯朗)

伯朗の心の成長がはっきりとわかる場面だ。
ようやく、伯朗が主人公らしくなってきた。しかし、気になるのだ。長い間、伯朗と禎子は矢神家で冷遇されており、食事のときはテーブルさえ別にされていた。そのとき、康治は庇ったりやめさせようとする素振りを見せなかったはずなのだ。なのに、いきなりいい話になったのは合点がいかない。矢神家の人間はつくづく信用ができない。


『危険なビーナス』波恵の“いい人化”も伯朗の父子関係も使用人の君津も中村アンも、全部怪しい5話
第6話は11月15日放送。画像は番組サイトより

ただの看護師役に中村アンを起用するだろうか?

康治の動物実験のくだりでもう1人、気になる人物がいる。ペットをアクセサリー代わりにする飼い主が動物病院に来院し、伯朗は無愛想に対応した。その態度をダメ出ししたのは動物看護師の蔭山元美(中村アン)だ。

蔭山 「やっぱり、昔の実験の思い出が影響してるんですか?」
伯朗 「話したっけ、君にそのこと……?」
蔭山 「昨年の忘年会で酔っ払った院長先生が教えてくれました」
伯朗 「あのお喋りジジイ……」

「昔の実験の思い出」とは、康治が行っていた動物実験を指す。康治と動物病院の院長に繋がりがある……と予測を立てることもできるが、蔭山が嘘をついていて、院長からではなく何かしらの線で伯朗の過去をすでに知っていた可能性も捨てきれない。穿った見方をすると、ただの看護師役に中村アンをわざわざ起用しないと思うのだ。楓(吉高由里子)と絡むシーンも多いだけに、彼女にも何かありそうだ。


みんな矢神家に恨みを持っている?

5話では矢神家の養子である佐代(麻生祐未)勇磨(ディーン・フジオカ)が実の親子で、佐代は前当主・康之介の愛人だったことが明かされた。たしかに以前、祥子は皮肉たっぷりに「佐代さんはお父様のことはお詳しいのね」と吐き捨てていたし、納得だ。

祥子は、佐代が祥子の母を毒殺したと疑っている。祥子 VS 佐代&勇磨の対立の理由だ。

「だから、私はあの2人には矢神の遺産をこれ以上絶対に渡さないって決めてるの。それだけじゃない。あの2人がこの家からかすめ取っていった資産も全て奪い返す。
どんな手を使ってでも!」(祥子)

でも、佐代と勇磨のほうが一枚上手だった。2人は康治の部屋に盗聴器を仕掛け、“康治殺害計画”を指示する祥子の音声を録音していたのだ。それだけじゃない。波恵も祥子を警戒し、康治の部屋を盗聴していた。

いろんな人間があっちこっちに盗聴器を仕掛けているし、祥子の計画は結局全員知っていたし、思惑が入り乱れまくっているこの家。人が狂うには理由がある。今や、矢神家全員が矢神家に恨みを抱えているようにも見えるのだ。

とうとう“部外者”伯朗が“当事者”になる

ラストではさらなる急展開が控えていた。祥子は伯朗に警告を発する。

「あなたもすぐこっち側に来る。私と同じように人を殺したいって思うかもしれない。あなたのお母さん、禎子さんも殺されたのよ」(祥子)

今まで部外者として矢神家に関わっていた伯朗。しかし、母の死という客観視不可の問題に直面するとそうはいかなくなるはずだ。次回から、伯朗はとうとう当事者になる。

そして、気になるのは禎子の死の秘密を知っていそうな楓だ。相関図を頼りにしないと誰が誰だかわからなかった矢神家だが、次第に各々の背景は明らかになっていった。単なる遺産の獲り合いではなく、憎しみや復讐が絡み合う戦いをこの家族はしていたのだ。

こうしてあらゆることが紐解かれていく中、明人(染谷将太)の行方と楓の謎はまだ全く明らかになっていない。
(寺西ジャジューカ)

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番組情報

TBS 日曜劇場『危険なビーナス』
毎週日曜よる9:00〜9:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikenna_venus/