『危険なビーナス』7話は佐代劇場! 伯朗母と親友だったと語るものの腑に落ちないポイントがある
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

『危険なビーナス』7話 もう、楓の正体をぼやかせる必要はない

11月22日放送『危険なビーナス』(TBS系)7話は、手島伯朗(妻夫木聡)矢神楓(吉高由里子)が探る小泉家に何者かが入ってくるという、不穏なオープニングだった。

【前話レビュー】禎子殺害の犯人候補、明人監禁の大本命はあの人しかいない6話

やって来たのは、見ず知らずの男。伯朗と楓を見て驚いた男が逃走すると、咄嗟に楓は追いかけ、男を取り押さえた。
掴んだ男の左腕を背中に回し、首はがっちりと固めて身動きができない状態にしている。見事な拘束術だ。

楓の正体は初回から疑われ続けてきた。矢神明人(染谷将太)の妻を名乗る彼女を支倉百合華(堀田真由)は最初から疑問視している。楓はJALの元CAを自称するが、矢神勇磨(ディーン・フジオカ)はJALにいる知人に聞いて、彼女がJALにいなかった事実を調べ上げている。動物看護師の蔭山元美(中村アン)は「楓さんは要注意」と伯朗に注意を促した。
さらに今回、矢神佐代(麻生祐未)も伯朗に「楓さんには気をつけたほうがいい」と助言している。動物病院院長・池田幸義(辻萬長)は楓を一目見ただけで「人は嘘を付く生き物」と口にした。

2話で勇磨の車にGPSを貼り付けたとき、「日本の警察の捜査では違法ですけど、お義兄様は一般人ですよね?」と楓は伯朗にGPSを手渡した。まるで、自分は警察の人間と言っているようなものである。

今回、勇磨は楓のマンションに盗聴器を仕掛けた(この人は本当に盗聴器が好きだな……)。遠隔で楓の部屋の音声を聴いた勇磨は、「このゲーム、俺の勝ちだ」と勝ち誇った。
2つのパターンが考えられるのだ。

(1)楓は明人の妻ではなく、警察関係者であると勇磨は知った。次回予告で勇磨は楓の肩に手を回している。正体をばらさない代わりに自分に協力するよう脅し、勇磨が楓を頷かせたのではないか?

今回、楓は一般人とは思えぬ拘束術を披露した。もう、警察関係者であることを劇中で隠し続ける意味はないタイミングと言える。

(2)「あの女はただ者じゃありません」と、佐代は楓に注意を払っていた。
楓はただ者ではないのだ。つまり、勇磨が仕掛けた盗聴器に気付きながら、わざとそのままにしている可能性がある。この状況で嘘の情報を流し、逆に勇磨をハメようとしているのかもしれない。

ところで、今回のエンディングで楓のマンションを訪ねたのは誰なのだろうか? 明人と匂わせておいて、コートを貸した蔭山が取りに来ただけとも考えられる(というか、蔭山は貸したコートに盗聴器を仕掛けていないよな……?)。

そもそもこのドラマは、序盤にストーリーが動くことはほとんどない。劇的な展開が起こるのはいつも終盤。
次回のオープニングでいきなり明人登場というクライマックスが待ち受けているとは思えないのだ。

それにしても、楓の目的がわからないままである。7話で気になったのは、母・禎子(斉藤由貴)のアルバムを確かめようと直帰する伯朗のタクシーに「お供します」と無理やり同乗した場面。伯朗に単独行動させず、見張っているようにさえ思えたのだ。当初は怪しさ満点だった矢神家の面々の素性が明らかになってきた今、楓だけは怪しい存在のままだ。

禎子と康治を引き合わせたのは佐代にとって悪手

7話で俄然存在感が増したのは佐代だ。禎子が遺したアルバムに高校生だった頃の禎子と佐代のツーショット写真があったのだ。
禎子と佐代は親友同士だった。その後、同窓会で再会した2人。その頃、佐代は矢神康之介(栗田芳宏)の愛人で、禎子は脳腫瘍である夫・手島一清(R-指定)の看病に疲れていた。佐代は脳の研究をしていた矢神康治(栗原英雄)と禎子を引き合わせた。

親友同士だった禎子と佐代だが、2人はずっと仲がいいままだったのか? 息子・勇磨が伯朗をいじめても佐代は咎めなかったし、伯朗は禎子と佐代が会話する場面を見たことがないと言っている。

禎子と康治を引き合わせたことで明人が生まれた。
よく考えると、佐代にとっては悪手だ。だって、勇磨が受け継ぐはずの遺産が全て明人のものになってしまうのだから。禎子と佐代が親友のままでいられたか、やはり疑問である。

『危険なビーナス』7話は佐代劇場! 伯朗母と親友だったと語るものの腑に落ちないポイントがある
第8話は11月29日放送。画像は番組サイトより

数学者の憲三が俄然怪しくなる

康治の部屋で伯朗は幾何学模様の絵を発見した。一方、勇磨も康治の研究室で幾何学模様の絵を見つけていた。これは「フラクタル図形」というもので、一見するとレース編みのように見えるが、拡大しても網目の中にさらに細かい同様の網目が見える構造。全体の形と細部の形が同じものをフラクタル図形と呼ぶ。

生前の一清はフラクタル図形の絵を描いていた。一清は康治の治療を受けており、また康治と矢神牧雄(池内万作)は共に脳の研究をしていた。牧雄も康治の研究室を漁り、フラクタル図形を探していた。牧雄の言う“30億の遺産より価値あるもの”とは、きっと一清の脳腫瘍に関係があるはずだ。

フラクタル図形とは、学問としては数学に分類されるものである。そういえば、兼岩憲三(小日向文世)は数学者だった。7話で憲三は登場していないが、ここに来て矢神家の相続争いと憲三の関係性が俄然強まった。“30億の遺産より価値あるもの”を、実は憲三も欲していたのではないか?

突如、エンディングで牧雄が伯朗の部屋を訪ねた。
「君が知らないことを話してやる」(牧雄)

きっと8話で、いろいろなことを知っていそうな牧雄が存分に気になることを説明してくれるはずだ。こんなに次回が楽しみなのは初めて。やっと、ようやく、ここからが本番である。

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Writer

寺西ジャジューカ


1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。『証言UWF』シリーズ『証言1・4』、『証言「橋本真也34歳小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言 長州力』(いずれも宝島社)等に執筆。

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番組情報

TBS 日曜劇場『危険なビーナス』
毎週日曜よる9:00〜9:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikenna_venus/