『危険なビーナス』嘘が下手な伯朗が鉄壁の楓にカマをかける。その窮地を救ったのは勇磨の一芝居?
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

明人は後天的な天才か?『危険なビーナス』8話

『危険なビーナス』(TBS系)の第8話が放送された。

【前話レビュー】7話は佐代劇場! 伯朗母と親友だったと語るものの腑に落ちないポイントがある

手島伯朗(妻夫木聡)の家に押しかけてきた矢神牧雄(池内万作)は、矢神康治(栗原英雄)が伯朗の父・手島一清(R-指定)を研究対象にしていたことを伯朗に教える。一清の脳腫瘍を治すため脳に電気刺激を与えると、一清は幾何学的な模様の絵を描くようになった。
康治は「脳の損傷に電気刺激を与えると、芸術面で天才的な才能を発揮するサヴァン症候群が後天的に引き出されるのでは?」という仮説を立てるようになる。

ここで繋がるのは、矢神佐代(麻生祐未)が伯朗に打ち明けた話だ。矢神康之介(栗田芳宏)の四十九日の法要が終わった際、矢神家の遺産について佐代は矢神禎子(斉藤由貴)からこんなことを聞かされたという。

佐代「今回は明人君、何も遺産をもらわないことになりそうね」
禎子「もともと矢神家から何かを相続しようとは思っていなかったから。それに私、康治さんからもう貴重なものを受け取っているから」

そういえば、矢神明人(染谷将太)は天才的な頭脳の持ち主だ。果たして、彼は本当にただの天才なのだろうか? 意図的に作られた天才脳ならば、康之介が明人に遺産を全て相続させようと可愛がっていたことにも合点が行く。


ただ、佐代はこうも言っている。以下は上記のやり取りに続く会話。

禎子「私、康治さんからもう貴重なものを受け取っているから」
佐代「それって、幸せな家族ってこと?」
禎子「それもそうだけど、貴重すぎて手に余るほどのものをもう受け取っているから」

「幸せな家族」以外に貴重なものを受け取ったと禎子は言っている。ということは、禎子が康治から受け取ったものとは明人の存在ではなく、他にもあるのだろうか……?

父の死について調べるごとに義父からの愛を知る伯朗

牧雄が躍起になって探すのは、康治が残しているはずの脳の研究記録である。

「研究者は自分の研究の記録を捨てたりはしない。禎子さんに譲ったとしか考えられない」(牧雄)

一清の死去によって、康治は電気刺激を与える対象を猫などに変更した。動物実験に切り替えたのだ。
しかし、その実験もある日突然、康治の判断で凍結された。

伯朗と矢神楓(吉高由里子)は、父親が突然フラクタル図形を描き始めたと綴るブログの管理人・仁村香奈子(西尾まり)に話を聞きに行く。そこで2人は、康治が香奈子の父に会いに来ていたことを知らされた。しかも、康治は脳の研究をやめた理由をこの父娘に明かしていたのだ。

康治「人類の未来のためと思ってやってきましたけど、そのために動物の命を犠牲にしているようでは息子に顔向けできないと思いまして」
香奈子父「ああ、ご結婚されたお相手の……」
康治「ええ。私の息子です」

一清の死について調べるうちに、伯朗は康治の真意をどんどん知ることになる。
自分と一緒に写る写真をアルバムに貼り、自分がショックを受けた動物実験を中断した義父。「禎子を手に入れるため一清の死を早めたのか?」と伯朗は疑ったが、そんな康治への思いはことごとく引っくり返る。伯朗から「お義父さん」と呼ばれることは1度もなかったが、康治は伯朗のことを「息子」と呼び続けていた。

この父子はもっと話し合うべきだった。康治が生死の境にいる今、伯朗と康治の関係は変わっていくのだろうか?

伯朗に追及される楓をかばおうと勇磨は一芝居打った?

これまで矢神家のことを毛嫌いしていたはずの伯朗だが、その関係は明らかに良好になりつつある。事実、矢神家に悪人はそれほどいない(康治を殺そうとした祥子くらいだ)。

一方、兼岩憲三(小日向文世)はどんどん怪しい存在になっているし、“最強タッグ”を組んだはずの楓との仲も心配だ。


伯朗は牧雄が家に訪れたことを楓に報告したが、楓は矢神勇磨(ディーン・フジオカ)が自宅に訪れた事実を隠した。

「実は昨日、お義兄様と別れた後、勇磨さんから連絡があったんです。『見せたい絵があるから2人で会わないか』って。もちろん、断りました」(楓)

大嘘である。

『危険なビーナス』嘘が下手な伯朗が鉄壁の楓にカマをかける。その窮地を救ったのは勇磨の一芝居?
第9話は12月6日放送。画像は番組サイトより

そして、伯朗も楓に嘘をついた。彼は「禎子が康治から何か譲り受けていたか?」と佐代に尋ね、「貴重すぎて手に余るほどのものを受け取った」という禎子の言葉を引き出している。
しかし、楓には何も聞き出せなかったと報告したのだ。

「ふ〜ん。何か、それにしては話が長かったですね」
伯朗「そう?」
「お義兄様、何か隠し事していませんか?」
伯朗「何言ってんだよ。君こそ僕を裏切ったりしてないだろうな?」
「もちろん」(ニッコリ)

嘘をつくときにオドオドしてしまう伯朗と、嘘をつくことに全くためらいがない楓。2人の嘘のスキルは対照的だ。

そして、伯朗は謝罪する。
佐代に質問をするとき、交換条件として明人が失踪している事実を漏らしたと詫びたのだ。謝罪の印として、明人が戻ってきて3人で食事をする際は伯朗が料理を担当することになった。

伯朗 「何がいい? 明人と君が好きなものを作るよ。じゃあ、シーフードグラタンとかどう? 明人も好きだったし、大皿にすればシェアしやすいし」
「うちでもよく作っていました」
伯朗「具材はいつも、どんなのにしてた?」
「マカロニは少なめで、エビとかイカとかタコとか牡蠣とか具材を多めにするのがうちの定番です」
伯朗「へぇ……」

会話の流れに気をつけるとわかるが、明らかに伯朗はカマをかけている。そして、ついに楓の口が滑った。明人は幼少期から現在に至るまで、ずっと牡蠣が嫌いだったのだ。伯朗は楓のマンションを訪ね、彼女を問い詰めた。

伯朗「なんであんな嘘をついた? 君は一体、何者なんだ?」
「……」

ただ、腑に落ちないところもある。今まで鉄壁だった楓なのに急に脇が甘くなったと感じるのだ。彼女はわざとミスをした……と捉えるのは考えすぎだろうか。

伯朗の追及を受ける楓の窮地を救ったのは、なんと勇磨だ。なぜか楓の部屋の奥から現れ、「しつこい男は嫌われるぞ」「俺たちの時間を邪魔するな」と伯朗に言い放ったのだ。

7話のエンディングで楓の家に盗聴器を仕掛けた勇磨は「そういうことか!」と喜んだ。その喜びの理由がまだ明らかになっていない。ただ、勇磨は楓と何らかの取り引きをしたと予測できる。つまり、楓は勇磨に弱みを握られている。その根拠として挙げられるのは以下の2つのポイントだ。

(1)勇磨が楓の肩に手を回した瞬間、「おっと」と言わんばかりに楓がビクッとした。
(2)2人が部屋に戻ろうとするとき、勇磨は楓の肩からスッと手を離した。

つまり、勇磨は楓の正体を知っており、そしてこれ以上伯朗に正体を詮索されないよう、楓をかばうために一芝居打ったと考えられるのだ。

それにしても、楓にフラれた(と思い込んだ)伯朗が乗り換える気まんまんで蔭山元美(中村アン)を抱きしめたのはドツボである。彼女、セクハラが嫌で前に勤めていた病院を辞めたと言っていたのに……。

伯朗にとってはジェットコースターのような1日だった。義父からの愛を初めて知り、楓には裏切られ、フラれ、蔭山からは「今まで尊敬していたのに……」と責められてしまった。

次回予告を見ると、蔭山は伯朗にこう言っている。

「楓さんのこと、私も一緒に調べます」

真相に近付くにつれ、“最強タッグ”の信頼関係がほころびを見せ始めている。

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Writer

寺西ジャジューカ


1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレスと格闘技、ドラマ、イベント取材。『証言UWF』シリーズ『証言1・4』、『証言「橋本真也34歳小川直也に負けたら即引退!」の真実』『証言 長州力』(いずれも宝島社)等に執筆。

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番組情報

TBS 日曜劇場『危険なビーナス』
毎週日曜よる9:00〜9:54

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kikenna_venus/