LUNA SEA特集 #1|RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者

結成30周年! LUNA SEA特集 #1|RYUICHI<河村隆一>

LUNA SEARYUICHIとして見せる獰猛なロック・ヴォーカリストの顔と、ソロ・アーティスト河村隆一として見せる甘やかなバラード歌手の顔。かつては磁石のS極とN極かのように乖離していたその二つの側面は、やがて互いに距離を縮め、時には重なり合い、2020年代の今、より豊かな歌唱へと昇華されている。

LUNA SEAの結成30周年を記念して2019年12月にリリースされた10枚目のオリジナル・アルバム『CROSS』において、共同プロデュースを手掛けた世界的プロデューサー スティーヴ・リリーホワイトは、RYUICHIの魅力をフランク・シナトラに譬えた(※奇しくも河村隆一として「My Way」をカバーしており、こちらも至高である)。
RYUICHI/河村隆一の歌声は今、芳醇な実りの時を迎えている。

LUNA SEA特集 #1|RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者
画像出典:Amazon.co.jp(LUNA SEA『CROSS』

LUNA SEA活動休止中にソロでもヒット連発

LUNA SEAは地元・神奈川県にて1989年に結成。5人のうち最後に加入したメンバーがRYUICHIである。1992年に2ndアルバム『IMAGE』でメジャーデビュー。激しさと端正な構築美とを兼ね備えたユニークな音楽性とカリスマ性でバンドはたちまち人気を得るが、97年に活動休止。

RYUICHIはその期間に河村隆一としてポップスに挑むとヒットを連打する。2ndシングル『Glass』はミリオンを記録し、2ndアルバム『Love』は歴代男性ソロ・アーティストの売り上げ1位を誇り、現在もその座を保持している。

2000年のLUNA SEA“終幕”後もソロとして華々しく活躍し、バラエティーやドラマにも出演。LUNA SEAとしてのパブリック・イメージとは真逆の顔を見せ、世を驚かせた。

LUNA SEA特集 #1|RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者
画像出典:Amazon.co.jp(河村隆一『Love』

INORANとバンドを結成

2005年にはLUNA SEAのメンバーであるINORANと共にロックバンド Tourbillonも結成。LUNA SEAが2010年に“REBOOT”を果たし本格再始動してからも、ソロ、Tourbillonに並行して取り組んできた。

音楽ジャンルや歌唱スタイルはプロジェクトによってまちまちだが、一貫しているのは歌を究めるそのストイックな姿勢である。華やかなスターオーラを身にまといながらも、活動の焦点は歌そのものにピッタリと定まっていて、全くブレることがない。

ジム通いや食事制限はもちろん、ライブ会場の楽屋にまでトレーニング機器を持ち込んで体を鍛え抜き、年間80本にも及ぶライブを敢行。
汲めども尽きることのない泉のような、凛として艶やかな、一音聴けばすぐに当人と判かる特別な歌声を全国各地で響かせてきた。


ソロでは教会を舞台とするライブなど様々な企画を立ち上げて来たが、中でも特筆すべきは通称“マラソンライブ”シリーズだろう。ソロデビュー10周年の節目には『河村隆一 at 日本武道館“70の物語”』と銘打ち、それまでにリリースしたオリジナル・アルバム全収録曲を4時間半にわたって歌い上げた。

2011年5月には『“限界のその先へ”100の物語 〜終章(エピローグ)〜』と題したライブを日本武道館で行い、「8時間以内に100曲歌うソロ・アーティスト」のギネス世界記録を樹立(※終演までに104曲を歌唱)。20周年の2018年には同企画を8時間にわたって実施、去る2021年5月1日にも『e+Streaming+ Ryuichi Kawamura Live2021「HOME」#14〜未完成な自分を信じて〜』と冠した最新のマラソンライブを行ったばかり。

ファンが喉や身体を心配するほど目標を高く設定し、限界を突破し続けることで自分自身を高めていく。その姿に不思議と苦しさや悲壮感は無く、幸福そうで、河村隆一とは歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者に違いない、と思うのだった。

配信ライブシリーズを始動

ライブを自分の“居場所”と呼び、近年ではレコーディングでもライブをイメージして歌っているのだとインタビューで語っている。あたかも目の前にオーディエンスがいるかのような緊張感を持って、一期一会の生の歌を積み重ねて来た。

コロナ禍の影響でその大切な“居場所”を奪われたのは彼も例外ではなく、LUNA SEAの『CROSS』 ツアーが2020年2月で中断して以降、長らくステージに立てない苦境が続いていた。それでも歩みを止めず、自身のスタジオから配信ライブを届けるため#HOMEシリーズを立ち上げ、上述の♯14まで回を重ねている。

LUNA SEAメンバーの配信ライブは各自全く色が異なるのでぜひ観比べてみていただきたいのだが、隆一はまっすぐにカメラを見据え、画面越しのファンに熱視線を送るようなスタイルが特徴的である。

2021年2月には5夜連続6公演の配信ライブを実施、初日の無料放送は医療従事者をはじめとするフロントラインワーカーへと捧げた。
2020年11月には約8カ月ぶりの有観客ライブを中野サンプラザで開催。また、2021年3月に行ったLUNA SEAさいたまスーパーアリーナ2DAYS振替公演に続き、4月11日にはZepp Hanedaで有観客ソロ・ライブを実施。

いずれも客席からの声援禁止の制約下ではあったが、ファンの想いを全身で受け止めフィードバックする熱量の高いステージを繰り広げた。歌に人生を捧げた男の、切実な魂の叫び。そんな迫真の表現に胸を打たれずにはいられなかった。



LUNA SEA特集 #1|RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者

紳士で穏やかな人柄

例えば最新作の『CROSS』収録曲だと「静寂」、前作『LUV』であれば「闇火」などのライブパフォーマンスではRYUICHIの鬼気迫る歌唱に圧倒される。畏怖の念すら抱かせる驚異の表現者なのだが、MCではファニーな一面も覗かせ、和やかで牧歌的なムードすら漂う、そのギャップも味わい深い。

インタビュー取材で対面する際もステージ裏でも常に紳士的で穏やかな顔しか見たことがない。どちらが本当でどちらが偽りというのではなく、いずれもRYUICHI/河村隆一の真実であり、その両極を激しく行き来するダイナミズムこそが歌の吸引力を生んでいるようにも思う。

LUNA SEA特集 #1|RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者
画像出典:Amazon.co.jp(LUNA SEA『LUV』

癌、そしてポリープ切除という2度の手術を乗り越え2019年12月に開催された『LUNATIC X’MAS 2019』2DAYSの初日に、「やっぱり音楽が好きなので、もうちょっと生きたいなと思って」とRYUICHIはコメント。笑みを浮かべながらサラリとこぼしたその言葉が、今もふと脳裏にこだますることがある。

世界がコロナ禍で変貌するよりも少し早く、ステージに立って歌えることがいかに尊い奇跡なのかを、彼は痛切に感じていたに違いない。一本一本のライブ、その一瞬一瞬に「たとえこれを最後に燃え尽きても構わない」というぐらいの覚悟で臨み、日々自らをストイックに高め続けているRYUICHI/河村隆一の深化はどこまで進むのか? 末恐ろしいほどである。
まずは5月28・29・30日に東京ガーデンシアターで開催される『LUNA SEA 30th Anniversary -CROSS THE UNIVERSE- GRAND FINAL』、続いて6月から再開されるツアー『CROSS THE UNIVERSE』にて、ぜひたしかめてほしい。
(大前多恵)

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●LUNA SEA特集


【#1】RYUICHI 歌に身を捧げることを無上の喜びとする求道者
【#2】SUGIZO 弱者のために声を上げ続け、音楽を捧げる、稀代のロックスター
【#3】INORAN “風”のように“凝り固まる”こととは程遠い可変性が魅力
【#4】真矢 熱く人間的なドラミングで魅せる一方、静寂の存在を浮き彫りにする名手

【#5】J 炎の如く情熱を燃やし続けるロッカー、絶対的存在感の雄々しきベーシスト

※次回LUNA SEA特集を更新しましたら、Twitterでお知らせします

ライヴ情報

【LUNA SEA 30th Anniversary Tour 20202021 -CROSS THE UNIVERSE-】

■会場:福岡サンパレス
2021年6月12日(土)※2020年3月21日(土)より振替
2021年6月13日(日)※2020年3月21日(日)より振替
問い合わせ:キョードー西日本(TEL.0570-09-2424)

■松山市民会館 大ホール
2021年6月26日(土)※2020年4月11日(土)より振替
2021年6月27日(日)※2020年4月12日(日)より振替
問い合わせ:DUKE松山(TEL.089-947-3535)

■札幌文化芸術劇場 hitaru
2021年7月3日(土)※2020年5月9日(土)より振替
2021年7月4日(日)※2020年5月10日(日)より振替
問い合わせ:WESS(TEL.011-614-9999)

■名古屋国際会議場センチュリーホール
2021年7月17日(土)※2020年5月14日(木)より再延期・振替
2021年7月18日(日)※2020年5月15日(金)より再延期・振替
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション(TEL.052-320-9100)

■南相馬市民文化会館ゆめはっと大ホール
2021年7月31日(土)※2020年3月14日(土)より再延期・振替
2021年8月1日(日)※2020年3月15日(日)より再延期・振替
問い合わせ:ニュース・プロモーション(TEL.022-266-7555)

■宇都宮市文化会館大ホール
2021年9月1日(水)※2020年2月27日(木)より再延期・振替
2021年9月2日(木)※2020年2月28日(金)より再延期・振替
問い合わせ:クリエイティブマンプロダクション(TEL.03-3499-6669)

■仙台サンプラザホール
2021年10月2日(土)※2020年4月25日(土)より再延期・振替
2021年10月3日(日)※2020年4月26日(日)より再延期・振替
問い合わせ:キョードー東北(TEL.022-217-7788)

■上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
2021年10月23日(土)※2020年3月28日(土)より再延期・振替
2021年10月24日(日)※2020年3月29日(日)より再延期・振替
問い合わせ:HIGHERSELF(TEL.082-545-0082)

■大阪国際会議場メインホール
2021年11月29日(月)※2020年4月4日(土)より再延期・振替
2021年11月30日(火)※2020年4月5日(日)より再延期・振替
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL.0570-200-888)

■本多の森ホール(旧石川厚生年金会館)
2021年12月4日(土)※2020年3月7日(土)より再延期・振替
2021年12月5日(日)※2020年3月8日(日)より再延期・振替
問い合わせ:FOB金沢(TEL.076-232-2424)

■神戸国際会館こくさいホール
2021年12月20日(月)※2020年5月2日(土)より再延期・振替
2021年12月21日(火)※2020年5月3日(日)より再延期・振替
問い合わせ:キョードーインフォメーション(TEL.0570-200-888)

関連リンク

■LUNA SEA オフィシャルサイト
■RYUICHI KAWAMURA オフィシャルサイト


Writer

大前多恵


ライター・編集者/NHKディレクターを経てロッキング・オン入社、2006年独立後はフリーランスに。音楽家や俳優など、表現者へのインタビュー取材を中心に活動中。ライブレポート、作品レビュー、書籍編集、語り起こし本の執筆、物語の創作なども。

関連サイト
トロイメライの庭
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