『おかえりモネ』第20週「気象予報士に何ができる?」

第100回〈10月1日(金)放送 作:安達奈緒子、演出:一木正恵〉

『おかえりモネ』第100回 難題解決の展開が鮮やかだった一方、亮に「きれいごと」と斬ってほしかった点
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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2019年11月17日(日)、秋祭りが行われることを子どもたちがコミュニティFMで伝え、街のみんなは楽しみにしていた。ところがその日はあいにく悪天候になりそう。百音(清原果耶)は心配するも、あくまでも予測に過ぎないため、容易に延期はできない。
どうしたらお祭りを延期できるか、百音は知恵を絞る。地元の大行事・アワビの開口日と重なることを理由にして鮮やかに解決する展開ですっきり。百音が地元に迎えられる第一歩だった。

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第100回掲載中)

気仙沼の朝焼け、エメラルドグリーンの海、アワビの収穫シーンなどいい画もあっていい気分になったが……一箇所引っかかる点もあった。それについては後述する。

お祭りは延期に……

気仙沼の子どもたち、ヒナ(太田結乃)、コウタ(前村隆之介)、麻衣(竹野谷咲)たちが「市民の時間」として祭り情報を伝えるとき、ひとりずつハキハキと原稿を読む中で、必ず一箇所、引っかかる箇所にぶつかってかわいく悩むという、脚本、演出、演技すべてがあざとさの見本のような場面であった。

11月17日の秋祭りが予定されている日、百音が天気のデータを見ると強風が吹きそう。
心配になった百音は延期を提案するが、高橋(山口紗弥加)たちは言葉半分にしか聞いてくれない。

実際目にしたり体験したりしないと人は行動しないことを百音は東京で経験して来た。この街の住民たちも同じ。実際、延期にして風が吹かなかったらそれはそれで手間が余計にかかる。たくさんの人達が関わって作業をしていることを延期にして意味がなかったら責任をとりたくない。こういう時、誰だってだいたい責任とりたくない、悪者になりたくないという気持ちになるものである。
いいことの手柄は欲しいし、悪いことの責任はとりたくない。誰だってそうである。その時、百音に救いの光が……。

『おかえりモネ』第100回 難題解決の展開が鮮やかだった一方、亮に「きれいごと」と斬ってほしかった点
写真提供/NHK

17日はアワビの開口日に当たりそうだと気づいた百音。アワビの開口は朝で、強風は午後の予定なので漁には差し障りはないようだ。アワビの開口となると祭りどころではない。
高橋たちは急に祭りを延期にしようと言い出す。

とはいえ、アワビも開口しなくて風も吹かなかったら……百音は落ち着かない。気をもむ時間をはさみ、結果は百音の予報が当たってみんなに感謝される素敵な展開となった。

百音を相手にしていないようだった滋郎さん(菅原大吉)もぶっきらぼうな態度ながら百音に感謝する。こういう複数の出来事をうまくまとめて万事解決する展開の手際はいつもながら鮮やかである。百音は事前に祭りの会場も下見に行って、強風が来たら危険であることを実感もしていた。
こういうことこそ地域密着のいいところであろう。高橋たちを説得するときの百音の真剣なまなざしもよかった。

外から来た人の疎外感

高橋にも「がんばってね」と認められた百音。その一方で、ボランティアの大学生・水野一花(茅島みずき)は東京に帰る。震災からずっと気仙沼にボランティアに来ていて、みんなはすごく優しくて、街のことは大好き、だが外から来た者に何ができるか考えてしまったと肩を落とす水野。百音は外から来た者や離れた者が「一生懸命考えるからよくなることもあるんじゃないか」とまるで自分に言い聞かせるように言う。



一応、外部の者といったん離れた地元の者とをまとめた形ながら、結果的に外から来た者は最後まで内部に入れず、やっぱり地元の人間が強いというふうに落とし込まれているようにも見えて、いささか寂しい気持ちもした。
水野が百音と入れ替わりに去って行くみたいに見えてしまうから余計に。

百音がいきなり水野の8年間と自分の気持ちをいっしょくたにまとめて、手短にいい科白ふうに語ってしまうところこそ、亮に「きれいごと」とぶった斬ってほしいくらいであった。物語の根幹でもありそうな部分をなぜこんなにも足早に描いてしまったのだろう。水野は完全に地元に根ざす決意はできなかったということであろうか。

水野のような人物が主人公になる物語もあるだろう。それだけ大きなテーマを孕んだ設定の人物であるから、彼女のことを新人俳優の顔見せみたいな感じではなく、もう少し時間をかけて描いてほしかった。


『おかえりモネ』第100回 難題解決の展開が鮮やかだった一方、亮に「きれいごと」と斬ってほしかった点
写真提供/NHK

この回に感じたもやもやは宇田川さんの抽象画で美しくくるまれる。海のようにも見えるが、はっきりモチーフがわからないいろんな色が重なり合った絵。混沌としているが美しい。矛盾だらけの人生だけど決して暗闇に飲み込まれず、ただただ美しい光を探して生きていきたい。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪







番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami