『おかえりモネ』第21週「胸に秘めた思い」

第101回〈10月4日(月)放送 作:安達奈緒子、演出:田中諭、舩田遼介〉

『おかえりモネ』第101回 再び訪れた自然災害に人生を見直す気仙沼の人たち――それぞれの秘めた思いは
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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2019年11月、百音(清原果耶)が地元・亀島に戻りコミュニティFM「はまらいん気仙沼」で天気予報をはじめた。百音のラジオが時計代わりになって、6時だから帰ると永浦家に集った主婦たちが言っていることはまるで朝ドラのよう。

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ある時、ラジオブースのある公共施設で未知(蒔田彩珠)が研究発表を行った。
すごい発見をして大学の研究室に誘われるほどに成長している未知。

百音の帰還を契機に、永浦家にはそれぞれの転機が訪れようとしている。百音の、というか正確には台風による突風の被害だろうか。震災から8年、再び訪れた自然災害に改めてどう生きるかこれからのことを考える人たち。

少しでも自然災害を防ごうと戻ってきた百音。地元に残るか東京の大学に行くか迷う未知。
仙台支社の支店長として単身赴任するか迷う耕治(内野聖陽)。民宿を再開したい亜哉子(鈴木京香)。牡蠣の養殖の仕事を縮小しようと考えている龍己(藤竜也)。「みんな少しずつ前に進みたい。でもそれはとっても勇気がいることなのよね」と雅代(竹下景子)が端的にナレーションする。

何もなく安定していたらそれはそれで楽だが、時が経過すると人間も変わっていく。
年をとって、仕事をもっと極める時期に来るか、引退する時期か、人それぞれ。

百音と未知はこれからまだまだ仕事を充実させる期、耕治は人生すごろくのあがりにさしかかり、龍己はすごろくのさらに先の人生のおしまいを視野に入れ、龍己の手伝いをしていた亜哉子は亡き雅代のやっていた民宿業にシフトを考えている。引いた視線で見ると人生の縮図になっている。


『おかえりモネ』第101回 再び訪れた自然災害に人生を見直す気仙沼の人たち――それぞれの秘めた思いは
写真提供/NHK

そんな時、百音の元に中学生・石井あかり(伊東蒼)が訪れる。彼女はラジオや気象予報士の仕事に興味があるようで……。

次世代の子どもの登場で、時代の変化を描くのは「朝ドラあるある」のひとつ。
石井あかりは公開中の映画『空白』で主人公(古田新太)の娘を演じている。主人公を突き動かす強烈な役割を果たす、とても印象的な存在感で注目の16歳である。『あさが来た』で13歳の清原果耶が鮮烈に登場した時のような期待感に満ちた登場であった。

菅波のことを気にする人たち

第101回で面白かったのは永浦家の食卓の会話。家族が各々、いろんな思いを抱えながら食事する中、話題は耕治の仙台行きについて。耕治はなんだか積極的になれないものだから話題を百音にそらす。

銀行のお客さんにテレビで活躍していた百音がなぜ帰ってきたのか聞かれたからと「なんかあったんじゃないのか? 東京の彼氏と」と思い切って切り出す耕治(このときの顔!)。
そんなデリケートな話をこんなふうにするか?と首をかしげざるを得ないが、一点の曇りのない人物とされる耕治だから許されるのだろう。



百音が菅波とうまくいかずに戻ってきたのではないかと家族は心配していた。東京に出て医者と付き合って別れたとしたら娘が傷物に……と想像するだけで気が休まらないことだろう。幸いそんなことない百音は「いずれちゃんとします」と言い、「ちゃんとしますって堂々と言われるのもねえ。なかなか困っちゃうわね、お父さん」と亜哉子と耕治はすこし困った顔になる。良いことであれ悪いことであれ、娘の恋愛事情がとにかく心配なのである。


『おかえりモネ』第101回 再び訪れた自然災害に人生を見直す気仙沼の人たち――それぞれの秘めた思いは
写真提供/NHK

百音の場合、震災以後、ふさいだ末、島を出たいと深刻な顔で訴えて、もう帰ってこないかもという覚悟で家族は彼女を送り出した。そんな彼女が東京に出て元気になったように思えて喜んでいたらふいに戻ってくるものだからまたまた心配になってしまうのも無理はない。

百音は控えめで物静かなのでそんなふうに見えないが、実は突発的な行動で家族を振り回しているとも言えるのである。娘を気にかける父母は百音が恋に敗れて失意で帰ってきたわけではないと知って安堵し、「これおいしいよ」「ありがとう」とまた話題をそらすのであった。

ところで、気仙沼に戻ってからの百音はネックレスをしている。これって菅波からのプレゼントなのでは?と思って観ている。
指輪は照れくさいからネックレス。控えめなふたりらしいではないか。菅波もさすがに理科の教科書や縄跳び以外のものもくれるように成長しているのではないだろうか。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪








番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami